
立ち上がり動作について④ ~評価・治療していく為に必要なPOINT 後編~
本日も臨床BATONへお越しいただき、ありがとうございます。
最近子供とカエル・ザリガニ・トンボなどを獲りに行くのが楽しくなってきた(自分が子供頃はトカゲをよく獲りにいってたのを思い出し懐かしい気持ちになっていました)、234日目担当のPTジュニアこと吉岡勇貴です(^-^)
本日は前回、前々回の立ち上がりの評価についての続きをお伝えしていきます。前回のブログをまだ読まれていない方はこちらからどうぞ(/・ω・)/
https://note.com/nougeblog/n/n2aebd9b22a9a?magazine_key=m98d2004582c1
★はじめに
前回・前々回の簡単な復習から
【立ち上がりの目的は立位を保つこと】
【立ち上がりのポイントは重心と支持基底面】
立位を保つという結果にフォーカスを当てるのではなく、足底接地状態や足の向きといった部分を評価する事で結果までの過程を知る事ができます。ここを知る事が私自身臨床の中で非常に大切な部分だと感じています。
そして、足底接地と足の向きが変化すると何が変わるかというと重心と支持基底面の関係性です。ここが崩れる事で立ち上がり動作が困難になる事や、立位を保つことができない状態となります。なぜなら、足底接地が不安定な状態であれば重心をコントロールすることが難しくなり、通常より重心をコントロールする為には筋活動が必要となります。
重心とは
力学的において空間的広がりをもって質量が分布するような系において、その質量に対して他の物体から働く万有引力(重力)の合力の作用点であると定義される点のことである。
Wikipediaより
これだけだとイメージがしにくいですし、どこを見ればいいのか分からないですよね💦

図1が重心となります。先ほどよりはイメージ出来ているのではないかと思います。この重心が立ち上がりで臀部離床の際に足部の支持基底面内まで移動できるかが重要になってきます。
次に支持基底面についてです。
支持基底面とは
支持基底面(base of support:BOS)とは体重や重心により圧を感じることができる身体表面(支持面)とその間にできる底面のことをいう。
宮崎哲哉:支持基底面.理学療法ジャーナル44巻8号.2010 8
この支持基底面と重心の関係は立ち上がりのみならず、色んな場面で必要となります。
ここで立ち上がりの支持基底面と重心の動きを確認しておきましょう(図2)

立ち上がり動作では重心が前上方へ移動していきます。それに伴い支持基底面は臀部離床を境に狭くなっていきます。なので、この足部の支持基底面内まで重心移動を行う事が重要になってきます。
そして、下記(図3)に今までの立ち上がりで見るポイントをまとめているので参考にして下さい。

★補足 評価のポイント
*Knee‐in knee‐outについて
Knee‐in knee‐outはどうなのか気になりませんか?結果としてどちらでも立ち上がりは可能だと考えています。しかし、過度なKnee‐in knee‐outでは注意が必要となります。
こうなると『過度とは?』の疑問がうまれますよね。何を基準にするかというと健側(非麻痺側)と患側(麻痺側)を比べてみましょう。
そこで健側と患側で違いがあれば修正していく必要があると考えますが、あとはKnee‐in knee‐outがどのタイミングで起こるのかが重要なポイントだとみています。
個人差はあると思いますし、男女差や疾患によっても差があると思うので1つの指標として考えてみて下さい。
*支持物の位置を評価
立ち上がりの際に前方支持物把持で立てる患者さんと側方支持把持で立てる患者さんがおられますよね?ここにも評価のポイントがあると考えています。
側方支持(例えば車椅子座位でアームレストに支持で立ち上がる)方だと平行棒で立ち上がりをすると出来ないケースが結構多いように私自身の経験では感じています。このパターンだと上方への重心移動が困難な方が上肢の支持で上方への重心移動を容易にしていると考えます。
だから、平行棒内での立ち上がりとなると前方への重心移動はアシスト出来ますが、上方への重心移動はアシスト出来ないので立ち上がれない患者さんが多い印象です。
なので、このような患者さんでは上方への重心移動をどのように行っていくのかが治療展開になると考えています。
この時に平行棒の調整が可能であれば一番低い状態にして上肢支持で上方への重心移動をアシストします。アームレスト支持では支持基底面内に重心は移動出来ているが後方重心に近くなる。それに比べて平行棒を低くした状態での立ち上がりであればしっかり前方への重心移動が整った状態で筋活動を促せるので反復する事が大切であると考えています
また、手すり等を引っ張るのは前方へ重心移動が難しいパターンです。先ほどの上方への重心移動が困難な患者さんとは違い支持物を引っ張る事で前方への重心移動をアシストしているのですが、引っ張る事だけでは上手くいかない事も臨床上よくあります。
それには今まで評価のポイントにあげてきた部分をもう一度評価して見て下さい。
★立ち上がり動作へ繋げるアプローチ
まず、立ち上がりが出来ない時に下肢の筋力強化訓練が頭に思い浮かぶと思います。私自身も立ち上がりが出来ない時にまず筋力強化訓練をしていました。
しかし、ここまで立ち上がりについてお伝えしてきた中で重心と支持基底面についての話が多かったです。まず、重心を支持基底面内に移動させる事が出来るかどうかを把握しておく必要があります。
私自身も結局はどこの相を評価して、どこの相に向けてアプローチしていたのかがよく分からないままに下肢の筋力強化訓練に取り組んでいました。例えば、座位姿勢から屈曲相へ移行する際に重心を前方へ移動させることが困難な患者さんに対して下肢筋力強化を選択しますか?おそらくしないと答える人が多いと思いますが、実際に支持基底面内に重心が移動出来ていない状態で立ち上がると立ち上がれないという結果が出てきます。それが臀部離床相~伸展相にかけてにまで影響を与えている事も多いです(全てがそうではないです)その相によって必要となる筋活動は変わるので、それに合わせて選択していく必要があります。
*両下肢でのキッキング
両下肢で同時にキッキングをすることで立ち上がり動作に近い状態が作れます。
両下肢を同じタイミングで動かすことは少ないように感じます。臥位の状態であれば下肢のコントロールも行いやすく、難易度も低いので取り組みやすいです。強く蹴る事を目的にするのではなく、同じようなタイミングで両下肢を使う訓練を行う事が重要だと考えています。
*ブリッジ運動
よく臨床で行うブリッジ運動ですが、方法によって活動筋の違いや立ち上がり動作に繋がる部分があります。
1つは膝関節屈曲角度の違いによって大殿筋・ハムストリングスの活動量に違いが出てきます。膝関節屈曲角度が大きくなる事で大殿筋の活動が強くなり、膝関節屈曲角度が小さくなる事でハムストリングスの活動が強くなります。
必要に応じて選択していきますが、今回の立ち上がりでは下記(図4)の状態で行う事で前方への重心移動が困難な場合に実施しています。

なぜなら、このブリッジ運動時に下腿前傾や下腿を固定した状態で大腿骨が動く立ち上がり動作と類似しているからです。
なので、筋力強化として運動のみでなく、重心移動を促す事や求めいている部位への筋活動を促すために行っています。
*高座位での立ち上がり動作
低い座位になると前方への重心移動が増大します。それに伴い股関節屈曲・体幹の前傾角度の増大や膝関節屈曲角度の増大となります。そして、筋活動も前脛骨筋・大腿四頭筋で増大するとされています。
実際臨床の中でも低い椅子からの立ち上がりは非常に難易度が高いです。

要因としては上記の事が考えられます。重心を動かす範囲が広くなればそれに伴い筋力も必要になることが考えられる。
だからこそ、高座位にする事で重心移動が少なくなる事で立ち上がりが容易になります。そこで、高い座位から立ち上がり動作を繰り返す事が良いのではなく、今までの評価から考えて前方・上方重心移動でどちら困難なのかが重要となります。
★まとめ
ここまで立ち上がりについて評価を中心にお伝えしてきました。
最後までお伝えしたいのは重心と支持基底面の関係性を常に考えておくことが重要です。私自身も筋力低下ばかりに目がいっており、なかなか立ち上がりの獲得に苦渋することも多くありました。しかし、診る視点を変化させたことによって立ち上がりの考え方も大きく変化しました。
治療に関しても文献等で色々な考え方があり、これが正解というものが確立されていないように感じます。そこで、重心をどの方向に動かせない・動かせるなどによって筋活動が変化する事で目の前の患者さんにどのような治療アプローチが必要かを選択していく事が重要であると考えています。
今回の治療は1つの案としてお役に立てれば幸いです。
最後まで購読頂きありがとうございました(^-^)
来週月曜日の臨床BATONはゆーすけです。テーマは『大腿骨頚部骨折術後のレントゲンとそこから考えるリハビリ』です\(^o^)/
ゆーすけ臨床BATONどうぞ(/・ω・)/
参考文献
・宮崎 哲哉.支持基底面.理学療法ジャーナル44巻8号.2010 8
・森明子他:椅子の高さの違いが起立・着座動作における下肢筋の筋活動に 与える影響川崎医療福祉学会誌 vol.13 No.1 2003 169-171
・森田 智美.立ち上がりを容易に行うために必要な足関節背屈可動域の検 討.理学療法₋臨床・研究・教育 19:23-26.2012
・新井一徳.立ち上がり動作における前脛骨筋の役割.理学療法学Supplement.2008(0),A3P3101-A3P3101,2009
・高橋純平 椅子からの立ち上がり動作における座面高の違いと下腿前傾角との関係.理学療法学 Supplement2012(0),48101280-48101280,2013
・泉田 康志 他.健常成人における膝関節屈曲角度の違いが立ち上がり動作へ及ぼす影響.Yamagata Journal of Health Sciences,Vol.12,2009
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