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回復に必要な[燃料]の獲得を目指す

お疲れ様です。はらリハです。

本日は…
「回復に必ず必要になるもの…モチベーション」について説明します。

引用文献:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/59/3/59_59.260/_pdf

はじめに

 回復に必要なのはたくさんありますが、その中でも必ず必要なものは「燃料」、ここではモチベーションと呼びます。

 まずは、Peter G.Levine著者「エビデンスに基づく脳卒中後の上肢の手のリハビリテーション」の筆者と脳卒中患者の面接の様子をご覧ください。

※ ピーター(セラピスト)
※ 彼女(患者)

彼女:「OK!ピーター。あなたは長年、脳卒中に関連する研究をしてきたのね。じゃあ私が歩けることや手を動かせるようになる為に、あなたは何をしてくれる?」

ピーター:「良い情報と悪い情報があります。良い情報は、私が考えているプランを行えば回復を最大限にまで高めることができます。」

彼女:「それはすごいじゃない!あなたが言う通りになれたらいいわ!」

ピーター「悪い情報は、これまでの人生で最も過酷な練習になるかもしれないということです。」

彼女:「はぁ。あなたが望んでいるレベルまでは頑張れないわ。」

『エビデンスに基づく脳卒中後の上肢の手のリハビリテーション』より引用

 ピーターはこの会話を「最低である」と述べています。

 この会話から、やる気が得られる方もいるかもしれませんが、脳卒中となり未来に希望が持てない方が多くいる中で「今まで経験したことのない過酷なトレーニング」の発言は、不安を煽るような言い方に聞こえます。

 この会話では、目標に向かって挑戦するために必要な「モチベーション(切望/希望/夢)」は得られません。

 では、どうすればいいのでしょうか??

自己決定理論の活用

 そもそも「モチベーション」とは??

[モチベーションとは??]
→ 目標を達成しようとする行動を引き起こす動機

 人が何かしらの目標を達成するための「原動力」がモチベーションです。

 この原動力を私は「回復に必要な燃料」と考えています。

 この燃料を獲得するためにはモチベーション理論の中でも「自己決定理論」が活用できます。

[自己決定理論とは??]
「モチベーションがない状態」から「自発的に取り組む」までの6段階を研究したモチベーション理論(動機づけ)

自己決定理論(SDT)、エドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱した理論

 自己決定理論では、自己決定の程度が低いものから順に「無動機づけ→外発的動機づけ→内発的動機づけ」に分類しています。

1)無動機づけ
→ 無気力、自分の意思がなく、そもそも”やらない状態”

2)外発的動機づけ
→ 訓練そのものとは別の目的のために訓練を行う”やらないといけない状態”

3)内発的動機づけ
→ 訓練そのものが楽しいと感じられる”やりたい状態”

自己決定理論

 上記の図は、モチベーションが低くやる気のない状態から、モチベーションが高くやる気に満ち溢れている状態までの6段階を示しています。

 左から右に進むにつれて、自己決定の度合いが高く、内発的動機づけでは「訓練そのものが楽しいと感じられる状態」が脳卒中後の回復に最も適したモチベーションの状態です。

 では、どうすればこのレベルのモチベーションを手に入れられるのか、具体的な方法を紹介します。

回復に必要な燃料を手に入れろ!

 モチベーションは切望、希望、夢です。

☑︎ 絶対に障害に負けない!
☑︎ 回復してみせる!
☑︎ 病前の姿に戻る!

 という意思からモチベーションは生まれます。

モチベーションを高める、維持するためのアイデアを以下に紹介します。

1)小さな目標を1つずつ達成していく

『自分がどんな人生を送りたいのか』

 ”目標を決める”ことはモチベーションを高めることに必要不可欠です。

 ある研究では…

仕事上の目標を立てる群

人生の目標を立てる群

 に分けて、どちらが生産量が高くなるか、検証した研究があります。

 結果は…

 「人生の目標を立てる群」が生産量が高いと報告があります。

 ここではわかることは…

自分にとって「意味のあるもの」への集中力や成功に対しる戦略、モチベーションを得るためには「目標を立てる」ことは有効な手段だと言うことです。

 ただし、目標を「麻痺を完全に治す」では具体性が無く、フワフワしたものになる為、麻痺を完全に治したうえで”人生の中で何をやりたいのか”、ここが重要になります。

 まずは”人生でこれはやれるようになりたい”という具体的な長期目標を立てます。

長期目標:人生でこれはやれるようになりたいこと

 次に、”その目標を達成するために必要/できるようになりたい項目”を立案します。

 ここでは例として「装具を外してキャンプに行きたい」を長期目標として上げています。

 その課題となる項目はいくつかありますが、今回は「キャンプ用の低い椅子から立てない」を課題とし、その目標を達成するために難易度を落とした課題(短期目標)を設定し、1つずつクリアするためにリハビリを行います。

[短期目標の難易度]
※ 以下、装具を外して実施
1)普通の椅子から手すりを使って立ち上がる

□ つま先は床につけたまま立ち上がる
□ つま先/踵をつけたまま立ち上がる
※以下、□は同じ
2)普通の椅子から手すり使わずに立ち上がる
3)普通の椅子から腕を組んだまま立ち上がる
4)柔らかいソファーから手すりを使って立ち上がる
5)柔らかいソファーから手すりを使わずに立ち上がる
6)柔らかいソファーから腕を組んだまま立ち上がる
7)自宅内でキャンプ用の椅子を手すりを使って立ち上がる
8)自宅内でキャンプ用の椅子から手すりを使わずに立ち上がる
9)自宅内でキャンプ用の椅子から腕を組んだまま立ち上がる
10)自宅庭でキャンプ用の椅子を手すりを使って立ち上がる
11)自宅庭でキャンプ用の椅子から手すりを使わずに立ち上がる
12)自宅庭でキャンプ用の椅子から腕を組んだまま立ち上がる

短期目標の一例

 上記のように問題点と類似した課題の難易度を下げた目標を立て、その目標に対して1つずつ達成していくことがモチベーションを高める/維持することができます。

 この目標設定から訓練の流れは、脳卒中後遺症の根本的な改善にも効果的です。

 ぜひ、実践しましょう。

 課題はわかるけど、短期目標、それに向けたリハビリがわからない方は、以下のオープンチャットで相談を受けますので、ぜひご利用ください。

2)回復をSNS上で記録する

 厚生労働省の報告では、2020年の脳血管疾患の患者数は日本だけでも「174.2万人」と報告されています。

☑︎ Twitter
☑︎ Facebook
☑︎ Instagram
☑︎ note
☑︎ LINE openchat
☑︎ YouTube

 など、SNSを通し、自身と同じ経験をした方と交流できる場を設けることで「現状や未来の不安、恐怖の緩和/生活や回復に役立つ情報交換/悩みの相談」など、モチベーション以外に得られるものがたくさんあります。

 それに合わせて…

☑︎ 本日のリハビリメニューを記録
☑︎ いつまでにここまで目標を達成するという決意表明
☑︎ 新しいことに挑戦した感想

 など、「自身の目標/成果と変化の記録」はモチベーションを高める効果が期待できます。

 他にも、皆さんの努力と成功は、脳卒中後遺症の回復を目指す方の励みとなり、後遺症に悩む方々のモチベーションにもつながる可能性があります。

 また、辛い闘病生活を送る方々、学校生活や家庭内環境に悩みを持つ子供たち、仕事や人間関係に精神的な苦痛を抱いている若者など、さまざまな悩み、不安を抱えている方の勇気や希望になる可能性もあります。

 心無いコメント、誹謗中傷など、SNSの利用が問題になっている場合も散見されるため、使い方には十分注意が必要ですが、得られるものも多くあります。

 ぜひ、活用してみてください。 

3)マインドセットを切り替える

 自身の考え方を一変させることもモチベーションの高める/維持することに有効です。

[脳卒中後遺症の回復に対する考え方]
① 回復には努力が必要という自覚
② 回復を一種の競走と捉える
③ 回復過程を楽しむ

マインドセット

 1つ目は”回復には努力が必要”という考え方です。

 「回復にはそれ相応の努力が必要」という考えが頭の中で当然のように思えていれば、モチベーションを維持することは容易です。

☑︎ 試験に合格した
☑︎ 仕事で成果を収めた
☑︎ 自宅退院できた

 など、これらは「それ相応の努力をしたことで得られた結果」です。

この結果を得るためには「それ相応の努力」が必要である

  と脳を切り替える必要があります。


 2つ目は”回復を一種の競争と捉える”という考え方です。

 優秀なアスリートは常に自分自身と戦っています。

 常に自分に負けないマインドを持ち、日々、課題に取り組んでいます。

 この姿勢を見習いましょう。


 3つ目は”回復過程を楽しむ”という考え方です。

 脳卒中を経験していない人が言えることでは無いですが…

 回復過程を楽しんでいる方は例外なく回復が進みやすいです。

 私が自費リハビリ施設に勤めている時、ほとんどの利用者様から、自宅で自分なりに課題を見つけ、それを達成したことを都度、報告を頂いていました。

 例えば「家でこれはできたけど、これは難しかったんだよね〜、どうすればいいかな?」と自分なりに課題と向き合い、リハビリに取り組んでいました。

 この方は、できないことを見つけると嬉しそうに私に相談してくれました。

 できないことを解決することで「麻痺のない自分の姿」に近づくことを知っているからです。

 回復過程を楽しむのは、メリットしかないので、モチベーションを高める手段として取り込みましょう。

 この3つの考え方を念頭に持ちながらリハビリを行いましょう。

4)目標に対してスケジュールを組む

 1ヶ月を目処に、リハビリメニューの組み立てましょう。

 できれば紙面上に作り、達成する度にチェックができるようにしましょう。

 リハビリを取り組み、継続できることが視覚的、かつ記録できることで自分の努力を見える化でき、モチベーションを高める材料になります。

 また、1週間、2週間と、継続的に取り組むことができた時には自分にご褒美をあげましょう。

 小さなご褒美でいいので、なにか報酬が得られる仕組みを作るとモチベーションを保ちやすくなります。

 ぜひ、活用してみてください。

モチベーションを燃料に回復を目指そう

 上記の以外にも…

[ リハビリ的に]
☑︎ 現状に適した難易度調節
☑︎ 訓練結果について適切なフィードバック
☑︎ 訓練成果を実際に発揮できる環境
☑︎ 自分の好みの訓練手段を選択
☑︎ 飽きないように訓練が都度変更できる
☑︎ 家族や友人が一緒に取り組んでくれる
☑︎ 集団のリハビリ
☑︎ 自費リハビリなど、お金を払って訓練する

モチベーションを高める方法

[ 一般的に ]
☑︎ 自己啓発系の本を読む
☑︎ 他人の努力する姿を見る
☑︎ 規則正しい生活を送る(睡眠/食事/運動)
☑︎ 休日を楽しむ
☑︎ ルーティンを作る
☑︎ 目標を達成した時のことを考える
☑︎ 同じ目標を持つ仲間を見つける

モチベーションを高める方法

 モチベーションがあれば必ず回復する訳ではありません。

 脳卒中後の後遺症の回復には…

脳卒中により死滅した脳細胞は二度と読みが入らないけど脳の可塑性と呼ばれる新しい神経回路を再構築する方法を利用する

 ことが必要です。

 しかし、モチベーションが無ければ、この方法を活用した「ハードな訓練に取り組む」ことも「目標を達成するまで続ける」ことも難しいです。

 自分に合ったモチベーションを高める方法を見つけ回復に必要な[燃料]を獲得しましょう。

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