自宅をコメダにする
――自宅がコメダになったら、最高だと思いませんか?
う~~ん………。
今年から、自宅で仕事をするようになったのだけど、まったく全然捗らない。たぶん、環境が悪いのだと思う。
「自分の怠惰を環境のせいにするな!」と思ったかも知れないが、その振り上げた拳を降ろして、ズボンの中にしまってほしい。ほら、不思議と落ち着くでしょう。
こんな主張をするのには、ちゃんと根拠がある。だって、コメダ(コメダ珈琲店)なら捗るのだ。
実は昨年、コメダが好きすぎて、コメダから徒歩5分の部屋に引っ越した。
それ以来、大げさな表現ではなく週4日のペースで通っている。モーニングを食べに行ったあと、自宅で少し仕事をしてから、夕方にもう一度コメダに行くこともある。一日二コメダ。
だから、ずっとコメダで仕事をすればいいのだけれど『混雑時は90分まで』という掲示もあるし、自宅から持ち出せない資料もあるし、人生はままならない。
なんか、こう、どうにかならないだろうか…………。
う~~~~~~~~~~~~ん。
う~~~~~~~~ん。
う~~~ん。
ウーン
うん。
そうか。
自宅をコメダにすればいいのか。
ということで、自宅にコメダ、つくりました。
ちなみに、2023年7月に開催されていた「おうちコメダセットプレゼントキャンペーン」にも、もちろん応募しましたが、過去の例を調べると倍率は非常に高く「数万人に一人」レベル。当たる気がしませんでした。
コメダといえば赤いソファ。
コメダをつくるにあたって、まずはコメダを分解しよう。コメダとは、大きく3つの要素に分けられる。
「赤いソファ」「落ち着く内装」「広いテーブル」だ。
これが揃っていれば、間違いなくコメダである。「サングラス」「オールバック」「謎の外国語」が揃っていれば、間違いなくタモリなのと同じことだ。
3要素を揃えるために、まずは赤いソファからつくっていく。
いっそこの機会にソファを新調しようかとも思ったのだけど、ソファって、その、すごく高いんですね。平気で十万円単位の買い物になるのですぐに諦めた。
なので、今あるソファを有効利用する方法として、赤いカバーをかけることを思いついた。
赤い布を求めて手芸店をいくつか回ったが、コメダ生地は見つからない。コレジャナイが連続する。
延々と探し続けて、結局、日暮里まで足を伸ばした。
日暮里の繊維街は、生地が安く手に入ることで有名で、この日もかなり賑わっていた。近所の手芸店だと10cm150円で売っていた布が、日暮里だと1m100円で買えてしまう。よく見てほしい。10cmと1mだ。単位が違う。10倍だぞ、10倍。
繊維街に来れば、基本的にはどんな生地も揃うはず。しかし、コメダっぽい生地の名前がわからないので、どのコーナーを探して良いかもわからない。
大きな店舗は「○○館」「○○館」のように、建物がわかれているので、闇雲に探しても見つけられなかった。一時間ほど繊維街をうろうろと歩き回った末、店員さんに声をかける。
「あの、コメダみたいな生地を探しているんですが……」
幸いにも、やさしい店員さんだったので「はぁ?」と言われずに済んだ。
まったく同じものはないが、赤いコーデュロイが近いのではとアドバイスをもらってそれを購入。普通の生地なら1m100円で買えるのに、特殊な生地なので1m1500円もした。まじか。
コーデュロイ生地の高さにめまいがしたので、すべてを同じ布でつくることは早々に諦めた。座面と背もたれだけコーデュロイで、他は安いサテンでごまかす。
サテン生地は1m100円で買えた。あまりに安いので、本当は2mで十分なのに、なぜか5mも買ってしまった。家に大量に余っている。
ソファカバーのつくり方がわからず、調べても「無理」としか思えなかったので、全部見なかったことにして勘で進めていく。ミシンないし。根気ないし。
なんとなくサイズをあわせた布をソファ本体に被せて、カバーっぽくなるように布用接着剤でとめていく。背面のクッションだけ枕カバーみたいにゴムでとめられるようにしたけれど、それ以外は全部接着剤でベタベタと貼り付けた。
壁を全部変える。賃貸だけど。
次に取りかかったのは「落ち着く内装」だ。
コメダはチェーン店なので、店舗により若干の違いはあるが、木を基調とした内装なのは共通している。あとはレンガだったり、白い壁紙だったり。
壁紙をコメダ風にするのは、今回揃えた3要素のなかで、一番簡単だった。
行程としては、まず、柱を立てる。
シートだけでもよかったのだけど、柱のおかげで立体感が出て、手作りの安っぽさを打ち消してくれた。
木材柄のシートだけでは、同じ柄の繰り返しが多くて妙にのっぺりしてしまうことに気付き、途中でレンガ柄のものを買い足した。そのせいで、木材柄のシートが大量に余ってしまう。
木材柄シートと赤い布だけでつくれる工作があったら、誰か教えてほしい。
車がないので、ホームセンターまで台車を引いて5往復。もちろん、真夏で、すごく暑い。汗というより、もはや汁の量の水分を身体から流しながら、必死に荷物を運ぶ。
この日は風が強くて、プラダンが飛ばされそうになるのも本当にきつかった。「人にぶつかったら喧嘩になるかな? プラダンって盾になるかな?」と考えながら、必死に家まで運び込んだ。薄いプラダンでは、パンチ一発耐えられそうにない。防御+1、敏捷-36。
ホームセンターにあるなかで一番長い1F(フィート)の木材を買ったはずなのに、それでも天井まで届かなかった。全部諦めて「自宅のリビングを資材置き場にした」という記事にしようかと思ったが、どうにか試行錯誤して最終的にはなんとかなった。
根気、あるかもしれない。
業務用テーブルは、重すぎる。
コメダだと、なぜ作業が捗るか? 落ち着いた雰囲気や、エネルギーとモチベーションになるごはんなど、様々な理由は考えられるが、なかでも「テーブルが広い」という要素は外せない。
お冷やを2個置いただけで限界になるような丸テーブルではなく、分厚くて頼もしいのがコメダのテーブルだ。ノートパソコンとみそかつパン、小豆小町 葵を載せても、まだまだ余裕を残している。
一般的なカフェのテーブルとコメダのテーブルでは、コキリの剣とドラゴン殺しくらいの差がある。
分厚くて広いテーブルがほしかったが、これも買うと十万円単位の買い物になるので、きっぱり諦めて今あるものを活かす方向で行くことにした。リビングで使っているニトリのテーブルに、カフェ用テーブルの脚をつければいいだろう。
なるべくコメダに似たものを、通販で注文する。このテーブルの脚、商品ページによると15kgあるらしい。ネコ3匹分だ。仲良く暮らしてほしい。
この上に今あるテーブルの天板をとりつければ完成……なんだけど、テーブルの天板って何をどうすればとりつけられるのだろう。
なんか、注文したときは「ネジとかでウィーンと留めれば一発でしょ」と思っていたけれど、実際に重ねてみると、ネジだともげるのが感覚でわかる。ウィーンで済めば溶接はいらない。
結局、もともと天板についていた金具の位置を無理矢理変えて、テーブルの脚に繋げることでどうにか解決した。詳しい人が見たら「解決になっていない」と言うかもしれないけれど、もう遅い。詳しい人は記事を書く前に連絡してきてほしい。
さて、テーブルの用意ができたら、また困ったことが起きた。ソファとテーブルの高さが合わないのだ。
テーブルに合わせてソファの高さをあげるための長めの脚を買ったら、今度はネジのサイズが合わない。ちゃんと測って直径8mmだと確認したのに、実際は10mmだった。
ホームセンターを往復しながら対策を考え、最終的にはソファに新しい金具を取り付けて、無理矢理長い脚を付けられるように改造した。
綿密に計画を立てたはずなのに、実行してみると全然その通りにいかなくて現場で対応しながら犯行を進めていくこの感じ、なんだかすごくミステリっぽい。今なら完全犯罪、完遂できる気がする。
我が家にコメダがやってきた!
さて、コメダを構成する「赤いソファ」「落ち着く内装」「広いテーブル」の全てが揃った。
自分だけのコメダが、今、ここにある。
何も知らない人に写真を見せて「ここ、どこだと思う?」と尋ねたら、「コメダ」と答えてもらえるんじゃないか。これ、俺の家なんスよ。
公式通販で売っているグラスも買ったし、紙のコースターと豆も用意した。豆は近所の店舗で100個セット1000円で売っていた。買うときは「100個も」と思ったが、気が付けば手が伸びているので、全然足りない。次は1000個セット1万円で買うべきかもしれない。
自宅コメダは自由だ。どんなことをしてもいい。ネコを座らせても「あーっ!!お客様!!困ります!!あーっ!!」なんて言われる心配はない。
90分という制限もない。9時間でも、9日でもいればいい。だって、自分の家なんだもの。
『自宅にコメダ』という人類史上かつてない最高の環境が、いよいよ整った。
おしまい
大満足の出来だ。コメダにいるときとほぼ同じ光景なので、あとはYouTubeにあがっているカフェの雑音などをBGM代わりに流せば、環境的には変わらない。
これで自宅でも、大いに仕事が捗るだろう。
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