ネッククーラーをオシャレに着こなしたい
あつい。暑すぎる。『君たちはどう生きるか』じゃないよ。こんなに暑いと生きていけない。
体調を崩すほどの暑さなので、何か対策を考えなければならない。そこで、流行りの「ネッククーラー」というアイテムを買った。首に巻く保冷剤のようなもので、ひんやりして気持ちいい。近所のスーパーに行くことすら嫌になる気温だが、これをつけてからは少し楽になった。
たいへん便利なアイテムなんだけど、ひとつだけ大きな不満がある。その不満を解消するために試行錯誤したら、最終的に貴族になった。
暑い夏の救世主
ここ数年、猛暑日が平常になってしまったので「クールスプレー」「日傘」など、様々なアイテムが飛ぶように売れている。数年前に若い女性を中心に「ハンディファン」が流行ったので、街中でも頻繁に目にする。
そうした流れで、最近登場したのがこのアイテムだ。
「ネックピロー」「ネッククーラー」などの名称で売られている。ドイツ生まれの素材が使われているすごいやつ。らしい。
冷凍庫で凍らせておけば、一時間くらいじんわり冷たさをキープしてくれる。使用時間が少し短くて物足りないが、不満なのはそこではない。
ひとつ致命的な欠陥がある。それは、オシャレじゃないということ。
ポップすぎる外観のせいで、どんな格好をしていても「行楽に来た人」っぽくなってしまう。『3首』といって「手首」「足首」「首」の3箇所は、特に視線が集まるポイントで、ファッションでは非常に重要な意味を持つ。だから首にこんなカラフルなものをつけていては、何を着ていても台無しになる。
ならば、何かしらのカバーをつけて、ネッククーラーを見えないようにしてあげればいい。裁縫はよくわからないけれど、ちょっとしたカバーくらいなら、すぐに作れるだろう。なんて考えて、下記のようなものをつくることにした。
カジュアルよりも、フォーマルな方がオシャレになりやすい。つまり、目指すべきはフォーマルの究極、貴族である。
貴族の襟といえば、まっさきに想像するものがある。「襞襟(ひだえり)」「エリザベスカラー」などと呼ばれるものだ。
「エリザベスカラー」というと、ペットがつけるものを想像すると思うけれど、今回つくるのは、本家のエリザベスがつけている方である。本ザベスや、宣教師がつけているものを想像してほしい。
ネッククーラーを覆うようにゴージャスな襟をつけてしまえば、オシャレと利便性を両立できる。これはすごい発明かもしれない。
貴族のお冷却
針と糸を手にしたのは、中学校の家庭科の授業以来だ。悪戦苦闘して、どうにか完成させたので、まずは先に着用した様子を見てもらおう。
襞襟を被せるだけで、ここまで変わるのか。
さきほどまでは「行楽に来たお父さん」みたいな格好だったのに、襟をつけただけで「威厳ある貴族」になった。
心なしか、顔つきも勇ましくなっている気がする。ノブレス・オブリージュ。貴族の自覚が芽生えてきたのかもしれない。
見比べてみれば、どちらがオシャレかは、一目瞭然だろう。
夏休みの工作はこれで決まり
裁縫セットがなかったので、色々と買い揃えたら、ちょっとした飲み会くらいの出費になった。生地を買ったのなんて、高校の文化祭以来の体験だ。
「どうせまた何か買い足すだろう」と年会費を払って、裁縫専門店の会員証をつくったのに、その帰り道に寄った100円ショップでも同じものを揃えられた。
別に買わなくてもいいのに、100円ショップでも材料を買い足したので、同じものが二つある。どれだけ混乱していたかが伺い知れる。
まずは「このくらいかな?」と思いながら切った布を用意する。
なんとなく、フリルがあった方がそれっぽく見えると思ってつけてみた。ミシンはもっていないので、布用ボンドで貼り付ける。「なんとかなれー」で全てがうまくいくと、小さくてかわいいやつが言ってたので、たぶん大丈夫だろう。
本体となる太めのゴムに、襞(ひだ)をつくりながら縫い付けていく。延々と同じ行程が続くので、つけっぱなしにしていたテレビが、気付いたら通販番組になっていた。へえ、油汚れが一瞬で。この時間、映画でも流しておけばよかったな。
できあがったのが上記のものだ。すぐに先ほどの着用写真との違いに気づけた人は勘が良い。国立勘研究所に就職できる。
実は、土日を潰して肩をゴリゴリにしながら裁縫に取り組んだが、見栄えの悪いものしかできなかった。しかたなく、コスプレ用のものをAmazonで買って、つくりなおしたのが先ほどのものだ。意外と高かったので、この前行ったハリウッドザコシショウのライブと同じくらいの金額が消えてしまった。
ネコだってゴージャスになりたいはず
手作りの襞襟は、もったいないのでネコ用にすることにした。本家エリザベスカラーをするネコ。きっと、かわいい。せっかくなので、お揃いにして一緒に写真も撮りたい。
うちのネコは抱っこが嫌いなのを忘れていた。抱え上げていたら、バタバタと抵抗し、手を引っ掻かれた。
手の甲に滲む血を見ながら、人間のエゴに付き合わせてはいけなかったと反省する。好物のカニカマをあげて、三十分くらい撫で回したら和解できたっぽいので、ネコ好きのみなさんも許してください。僕たちは仲良しです。
暑い夏も、涼しく過ごそう
さて、見た目の問題も解決したので、思う存分、屋外で過ごせる。バーベキューの予定とかあったら誘ってください。自分、片付けとか得意です。貴族だけど。
やっかいな暑ささえ緩和されれば、天気もいいし、昼も長いし、夏はいいことしかない。ネッククーラーのおかげで、楽しい夏が帰ってきた。
おしまい
真夏なのに長袖長ズボンの写真を見て「暑苦しい!」と思ったかもしれないが、実際にものすごく暑かった。オシャレは我慢。
貴族っぽい柄の服が、厚手の長袖しかなかったのだ。半袖の貴族というのも、ちょっと想像できないので、必然だったのかもしれない。
ちなみに、ネッククーラーの快適さを3とすると、長袖シャツの不快さは12くらい。次は「半袖でも貴族っぽく見える方法」を模索すべきだろう。布も針も糸も、大量に余っていることだし。
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