大人になってから始めたから、こんなに楽しい

バイオリンを習い始めて3ヶ月が過ぎた。

飽きっぽい私にしては続いており、なんと毎日30分は練習しているという、自分でも驚きの状況だ。

幼少期にピアノを習っていたことはあるものの、弦楽器に触れるのは三十数年生きてきた中で初めて。

今まで触れたことのない楽器を始める。

これが。

かなり楽しい。

まず、0ベースなので、練習すればするほど上達するフェーズに、今はいる。
最初は「ギ、ギ、ギ…」としか鳴らず、「しずかちゃんのバイオリン！！」と子供達に笑われ、夫に「本当にバイオリンって難しい楽器なんだね」と緩めのフォローをされる始末。

そう、しずかちゃんのバイオリンに笑いをもらっていたみなさん。本当にあんな音が出ます。

しかし2か月も練習すればそれなりの音が鳴るようになり、（それなりと言っても美しい音色には程遠いのだが）
最初は「きらきら星」すらスムーズに弾けなかった自分が、今では「レ・ミゼラブル」のお気に入りの歌を練習している。

ビギナーズラックとはまた違うけれど、初心者だからこその著しい変化。そのスピード感がたまらなく楽しい。

そして、「何のためでもなく自分が楽しいだけ」の時間にうっとりする。
大人になってからの余暇と言えば「健康のための筋トレ」「仕事に活かせる文章術」「老後の資金のために金融を勉強しよう」というように、「何かのため」という目的がはっきりしたことが多かった。

もちろん、マンガをむさぼり読んだり、好きなミュージカルやディズニー映画を延々と観るなど、「娯楽」を消費する行動はあったよ。
それはもちろん「自分が楽しいだけ」の時間ではあったんだけどもさ。

「自分が楽しいだけ」かつ、「自分のレベルアップがわかること」ってしてこなかったかもしれない。

これはさ、大人になったからこその側面もある。

今もし私が10代とかで、バイオリンをしていたら、「何者か」になろうと目指してしまっていたかもしれないし、「極めなくては」という躍起になっていたかも。若者の青春のその頑張りや勢いはそれはそれで尊い。
でも30代の今だからこそ、今からソリストやオーケストラを目指すわけでもなく、一芸を披露する場面があるわけでもなく、また、いつ辞めても誰からも「もったいない」とか言われるわけでもない。
ただ純粋に「楽しいな～」だけで、できるような気もしている。

大人になってからの習い事は初めてに近いんだけど、先生も結構ゆるいことが分かった。
10代と先生の関係性は、師弟関係になりがち。けど、大人になってからの習い事は、先生は対等にお客様扱いをしてくれて、丁寧に扱ってくれるのよ。

そして、数多の「大人初心者」をみてきた先生は、大人の挫折しやすさを知っている。
「基礎は大事だけど、楽しくないし、大人なので、ぜひ好きな曲も進めましょう♪」と言って、完全に私の好きな楽譜を好きにひかせてくれて、しずかちゃん状態でもべた褒めしてくれる。

週末にウキウキで通うバイオリン教室の時間は、なんだか心地よく、「私による私のための時間っ！」とうっとりしている。

まぁあとは、「バイオリンなんて高尚な楽器をしちゃっている私」に酔ってもいる。そういうのも大事だと思っている。

始めたきっかけはというと、友人の影響が一番大きかったように思う。
4～5歳の育児中は「子供の習い事する？」的な時期である。子供がピアノを習い始め、母親自身も昔とった杵柄、のように、自分自身もピアノを再開したり、習い始める人は周囲に何人かいた。

「子供はピアノを見学したものの拒否し、実は私が習いに行っている」と話してくれた友人。
育児や仕事をしながら、次回レッスンまでに練習するは大変ではないのか、と私が問うと、
「もうね、練習はしてない。レッスン行って、その時間に弾くだけ。先生もそれでいいと言ってくれていて」と穏やかに話す彼女に心底驚いた。

練習しないって、ありなんだ…！習いごとって、練習しないと怒られると思ってた。

え、怒られるって、誰に…？ふと自分の思い込みに気づく。
そっか、そういう形もアリなのか…そう思うと、習いごとに対するハードルがグッと低くなったように感じた。（とはいえ、友人は幼少期のピアノ歴が長く素地があったし、しっかり発表会等もこなしていた。力の抜き方も、頑張り方も、素敵な人である）

友人たちがきっかけで「そういえば私、バイオリンにあこがれてたんだよな～」と、思い出し、レンタルバイオリンがある体験レッスンに申し込むことができた。

「そっか、別に練習しなくてもいいんだ～♪」のラフな気持ちから臨んだバイオリンレッスン。
しかしながら、つい練習してしまうところに、10代の頃しみついた、「毎日続けねばならない」の精神は深いな…と感じる。
ただし、練習すればするほど上達するので、楽しさは倍増である。

今はまだレンタルバイオリンを使っているが、「買っちゃう？自分のバイオリン買っちゃう？」と誕生日に向かって購入熱も上昇中。

大人って良いな、大人は、本当に良い。

30代なのだから、いい時計や宝石の一つでも増やしたいなと思いつつ、それより今はバイオリン欲しいな～と思っている自分に驚いている毎日である。