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陽炎~謀叛人と罵られた 真の忠臣~

原作、脚本 中村宙史

                       陽炎

赤々と燃え盛る、赤き炎が寺院を焦がす
その前に悲壮感?を胸に寺の方向を見る武士が刀を握りしめ、立ち尽くす……
やがて…

斉藤内蔵助利三『殿!殿!……は!ここにおられましたか!』

(頷く、武士)

斉藤内蔵助利三『信長様が寺の奥に、踏み込みまするか?!』

武士『うむ…』

(暗闇から武士の顔が少しずつ現れる)
(ススで汚れた顔……)

明智光秀『…義輝様…観ておられまするか……足利家の正当な血筋で天下を………
十五郎様………(全てを覚悟した顔へ)』

(明智光秀の顔ズームアップ、ズームアウトして進士藤延へ)

本能寺より遡る事…17年前…

京•室町第
進士晴舎『………!!!』
(進軍して来た兵に斬り殺される)
蜷川親長『殿!!三好の奴らが進軍して参りました!進士晴舎様、お討ち死に!!』

足利義輝『なんじゃと!!  何故じゃ!久秀は儂を殺すつもりか!?  儂は天下を統べる将軍ぞ!』

遡ること…永禄5年 
畠山•六角連合軍と阿波三好軍が久米田で激突し三好実休が討死、次いで永禄7年、三好の総帥、三好長慶が急死すると長慶の甥の三好義継を総帥に三好長逸を筆頭にした三好三人衆、松永久秀がその補佐にあたったのである。
長慶の死をきっかけに権威を上昇させる足利義輝との間に亀裂が生じていた為、足利義輝の討伐に踏み出す。
足利義輝亡き後は阿波三好当主、三好実休が生前度々、堺の豪商らの集まる茶会で接見していた畠山維広と懇意にしていた為、維広の主君、足利義冬の子、足利義栄を将軍に擁立しようと画策していた。
かつて三好実休は阿波の実権を握る為、兄、三好長慶が細川晴元を主君にするのとは別に阿波守護代 細川持隆を主君にしたが後により権威の強い平島公方に近づく為、細川持隆を殺害、その息子、細川真之を傀儡の阿波守護代として置くことにより三好による阿波の実効支配を強固なものとした。
この繋がりから平島公方、足利義冬の幕府の将軍になる夢は子、義栄に繋がれ実現させるための足利義輝将軍討伐であった…


十五郎『うわぁあ~ん』
煕子『十五郎!泣くのはおよしなさい』
ツマキ『姉上…ウッウッ…』
足利義輝『藤延……子らを』

進士藤延『お任せを…幸いにも我が母は美濃国の妻木家の出身故、其処に身を隠しまする……殿も無事、落ち延びられませ……』
トモ(藤延の妹で義輝の側室)『兄上!早う!』
進士藤延『うむ……然れば殿…』

足利義輝『任せたぞ…』

三好勢との小競り合いがあり義輝の背後に刺さる無数の槍…
足利義輝『ぐぎゃあー!!』

焼け落ちる室町第…

永禄10年…美濃国 岐阜城

織田信長『法知師、其方の母は妻木の出であったのぅ……妻木家は元々、奥三河の菅沼家と一つで美濃では確か…明智と名乗っていたそうではないか…』

進士法知師『は!左様で…』

織田信長『未だ混乱の続くこの美濃を治める為じゃ、法知師!還俗して明智家を復興する事を命ず!……名は…そうじゃの…貴様はよう秀でておる…そして慈悲深い…仏教では智慧や慈悲を表すことを光明というそうじゃ、
これより明智光秀と名乗るがよい』

明智光秀『畏ってござりまする!』


天正10年 天目山…

武田勝頼『武田家は…儂らの代で…』
武田信勝『父上…お供仕る!』


 安土城…

織田信長『武田が逝ったか………………抑えに使っておった徳川は最早、不用よのぅ…家臣にならず大名のままでは後々、邪魔になるのぅ……貴様を呼んだのは他でも無い…家康を殺せ…家康はこれより武田討伐の報告に安土にくるでな…貴様が饗応役としてもてなし…殺せ!』

明智光秀『…………その後は私も殺すおつもりでございますか?』

織田信長が光秀を三度蹴り飛ばす

織田信長『……貴様次第よ…貴様は未だ足利将軍の家臣である事を貫いておるからの……三好長慶に準じて儂も足利を滅ぼしてしまえば、其方も心変わりしようがの!』

明智光秀『……饗応役…承知仕りました…
しかしながら安土城内で殺しては他国からの反感を買うやも知れず内々に処置した方が良いと存じまする』

織田信長『ふむ、一理あるのぅ…そうじゃの安土でもてなした後、其方は禿げの援軍に西国に向かう為に進軍の準備をすると亀山で待機し……そうじゃのぅ、家康めには大和、堺遊覧に向かせ京の本能寺の茶会に呼びそのまま泊まらせるのが良いかの…』

明智光秀『家康を安心させる為に暫く殿も本能寺に滞在されてはいかがでしょう?
私が進軍される頃に退去していただければよろしいかと…』

織田信長『流石、キンカンよ!家康討伐の合図は余が本能寺へ入り次第報せる!早々に手配せい!』
明智光秀『はっ!』


天正10年5月21日 坂本城

明智光秀『近江の京極高次、阿閉貞征、若狭 武田元明、摂津衆 高山右近、中川清秀に信長討伐後密書を送り我らに味方するよう話しをつける。』

藤田伝吾『筒井様には信長討伐の件を知らせぬのですか?   大和国守護の軍勢が加わるよう信長討伐の前に我らの味方に引き入れてはいかがでしょう?』

明智光秀『確かに筒井殿は我ら明智の与力…じゃが……筒井殿は若くして守護大名になられた為、昔から家老達が筒井殿を支えておる…現、段階で事を伝えれば筒井殿は我らにつくか信長につくか家老達に事の内容を漏らすであろう……』

高山次右衛門『なるほど…その家老の1人が事を織田側に漏らす可能性があると。』

頷く光秀

三沢少兵衛『筒井殿には信長討伐後に話をつけるのが無難でしょうな』

頷く光秀

明智光秀『我らは信長討伐後、安土を落とし日の本の中枢である畿内の制圧を第一に行う、そこに追放された足利義昭様を室町幕府将軍として再び呼び戻しさえすれば吉田兼見殿を通じて朝廷工作する。朝廷の後押しが加わり三河殿、石谷を通じ長宗我部殿が加われば各国の大名は否が応でも将軍足利義昭様に従わずにはおられまい…』

明智家老一同『おおー』

安土饗応…

平伏する家康…もてなす信長…


安土城内一室…
徳川家康『何が饗応じゃ、義昭様が追放され信長と対等な立場でのぅなり武田が滅んだ今、儂の利用価値なぞ………嗚呼、嗚呼、嗚呼!!怖い怖い!儂はこの安土で殺されるに違いない死にとうない死にとうない!』
斉藤利三『三河殿、我が殿、光秀様が三河殿と相談したい事がありますれば少し宜しいでしょうや…』

徳川家康『何?光秀が……』
本多忠勝『殿!』
徳川家康『下手に断れば……儂の命なぞ…良かろう…入られよ』

徳川家康『………!?今何と!?    正気ござりまするか!?信長様を殺すとは!?』

明智光秀『左様……このままでは信長は三河殿を京、本能寺で殺しまする……その前に我らで信長を殺すのです』

井伊直政『解せませぬな……明智殿ほどの織田家重臣の方が、我らと主君の暗殺を持ちかけるとは…』

明智秀満『三河殿は勘違いなされておられるようじゃが…殿は一度も織田の軍門に降った覚えは御座らぬ』

榊原康政『!?はっ?然れば誰の家臣と申されるか!我が殿をはばかり取り殺すつもりであろう!』

徳川家康『待て康政!光秀殿にその気があれば既にこの場で儂を殺しておるわ……』

本多忠勝『それで、明智殿は誰ぞの家臣と!?返答次第では我が蜻蛉切りの錆にしますぞ!!』

明智光秀『我が主君は公方、足利家そのもの……足利義輝様の忠臣、進士藤延であり、今は足利義昭様の家臣でありまする、足利家を滅ぼそうとする信長めを停めるにはこの好機を逃す事は出来ませぬ』

徳川家康『………なんと……明智殿はあの奉公衆 進士殿の御嫡男で御座ったとは…わかり申した然れば我らは大和、堺遊覧の最中に信長の嫡男信忠を殺し本能寺攻めの抑えとなりましょうぞ』

明智光秀(感極まって嬉し泣き)『有難う御座りまする!!有難う御座りまする!』
(家康と硬く手を握る)
細川藤孝『必ずや信長を討ちましょうぞ!』

光秀の泣き顔ズームアップ、ズームアウトし
燃え盛る本能寺へ…

赤座永兼『貴様!山崎か!』
山崎長徳『この戦で功を獲れば儂は加賀を与えてくれるそうなのでな……赤座殿すまぬな!ヤァー』
赤座致命傷を負うが山崎に反撃、山崎逃げる

織田信長『光秀……!…是非もなし、余が余自ら死を招いたな…』

信長が首に刀をあて一気にに引き前屈みで倒れ伏す…
燃え落ちゆく本能寺…

堺…
徳川家康『…な!?信忠がいないじゃと!』

井伊直政『先程、大雨の中、夜闇に紛れココを離れたのを見た者がおります』


徳川家康『何じゃと!?……信忠めに感づかれたか……くぅ〜!今からではどうあっても間に合わぬ否、我らが遅れて京に入ったところで逆に討たれるのが目に見えておるわ………
光秀殿あい、すまぬ……三好長慶公がかつて作りしこの運河なれば飯盛山城までは半日もかかるまい…今は三河へ逃げるのじゃ!』

時を遡り…安土城下 秀吉屋敷

羽柴秀吉『……そうか!そうか!爺ィがの
よう伝えてくれましたの藤孝殿…!』

細川藤孝『すまぬ…光秀殿…』

羽柴秀吉『何を謝る必要がありましょうや?奴は我らの主君に弓引く者ですぞ』

細川藤孝『然れば、信長殿にお伝え』

羽柴秀吉『あとは儂に全てお任せくだされ』

屋敷をあとにする藤孝。

黒田官兵衛『……御運が開きましたな…』

羽柴秀吉『ふっハッハッハッハッ』

笑う秀吉の顔よりズームアップ、ズームアウト


天正10年6月1日亥の刻 丹波亀山城…

明智軍1万が出陣…

同年6月2日 子の刻

本城惣右衛門『なんで、こんな真夜中に進軍すんだか?毛利攻めなら遥か遠くだから朝出りゃあいいじゃねぇか…しかもこの進軍を見た者は百姓だろうと捕らえろなんざ…まるで、襲撃みたいじゃねぇか…』

同年6月2日 丑の刻 沓掛

斉藤利三『これより我らは京、本能寺へ進軍致す!各隊に伝えよ!』

本城惣右衛門『なるほど家康様が御上洛中だから家康様を討つのか!こんな夜更けに進軍する理由は本能寺で寝込みを襲うってわけか! …で、おい!その本能寺って何処にあんだ!』

同年6月2日 寅の刻 桂川…
本城惣右衛門『夜の京は静かだな…先鋒隊は旗を隠し本能寺で獲った首は打ち捨て女は殺さず捕まえて斉藤様に引き渡せって命令だったが…知ったこっちゃねぇぜ!一番乗りで殺しまくって手柄挙げてやる!』

本能寺門番 織田兵『て!?敵?!ガハッ…』

茂作『おい!首は打ち捨てって…!』

本城惣右衛門『うるせ!手柄を置いていけるか!』

田吾作『門が!門が開いてるぞ!』

本城惣右衛門『おいおい無用心だな…静か過ぎるじゃねぇか!』

狩野又九郎『門の方が騒がしい…な!何事か!?』

落合小八郎『ぐぼぁ!』

森成利『何事ぞ?』

森長隆『兄者……恐らく下々の喧嘩かと…』

戦のシーン

森長氏『て、て!?敵襲!!』

織田信長『何の騒ぎぞ?』

森長氏『敵襲に御座りまする!!』

織田信長『城介の謀叛か?』

森長氏『明智の者と思われます!』

織田信長『光秀…だ…と…余が本能寺にいる事を早よう伝えぃ、家康はまだ本能寺に居ない事ものぅ!……先走りおって!光秀め!』

明智秀満『かかれぃ!』

戦のシーン

赤座永兼『貴様!山崎か!』
山崎長徳『この戦で功を獲れば儂は加賀を与えてくれるそうなのでな……赤座殿すまぬな!ヤァー』
赤座致命傷を負うが山崎に反撃、山崎逃げる

菅屋角蔵『日向守様だと!馬鹿な!』

織田信長『光秀……!…奴は公方を取りよったか……
余に余を殺す計画を考えさせた…というか………
余は余自ら死を招いたな…』

大塚又一郎『早よう確認を急げ!』

薄田輿五郎『上様!ここは一刻も早くお立ち退きくださいませ!』

織田信長『是非に及ばず!弓を持て!寺に火を掛けよ!』

三沢少兵衛『信長がいたぞ!あの首をとれ!』

信長に刺さる槍
織田信長『ぐっ!』

成利が信長の盾になり亡くなる

森長隆『上様!最期まで我らも共にお供仕りまする!!』

織田信長『……余の最期は誰にも見せぬ…』



信長が首に刀をあて

織田信長『謀ったな…光秀……死のふは一定…』
一気にに引き前屈みで倒れ伏す…
燃え落ちゆく本能寺……


数日後…備中高松城 羽柴本陣。

家臣『筑前守様!杉原家次様より文が参りました』
杉原家次とは秀吉の妻、寧の叔父で大和、堺の秀吉が用意した密偵であった…
細川藤孝からもたらされた情報には本能寺の謀反の具体的な時期は知らされていなかった。
秀吉は信忠、家康が上洛するのがその時期と読み杉原を密偵として送っていたのである。


羽柴秀吉『よこせ!………ふふ…官兵衛、直ぐに安国寺恵瓊を呼び毛利との和睦を進めよ!』

黒田官兵衛『おお…なれば、明智が遂に…』

羽柴秀吉『そうじゃ……これで儂の天…ははハッハッハッハッ…』



山崎……

各地の大名、武将への手紙に賛同せず援軍に向かわない事に焦る光秀。


筒井順慶『謀反人を赦すな!かかれ!……光秀殿…儂にはこの道しか筒井家を守れぬ…』

細川藤孝『あの糞猿…己が手柄の為に主君を見殺しにしおって……じゃが、すまぬ光秀殿、儂にはあの猿に刀をむけられぬ!すまぬすまぬ……』

明智光秀『な!筒井殿が!?藤孝殿もか!いやいや、右近殿が抑えてくれればこの戦は勝てる!


斉藤利三『殿…高山殿が門を開き羽柴に寝返りました』

明智光秀が驚いた顔ズームアップズームアウト
竹林を歩く光秀、暫くすると槍を持った農民が現れ光秀お付きの家臣らが次々と殺され…

光秀に刺さる槍、倒れた光秀の首を獲ろうとする農民…


首実験の場

光秀の首印を見る秀吉、藤孝、右近、順慶

秀吉が高笑いする中で大泣きする藤孝、右近、順慶。

                           完


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三重県伊賀市上野丸之内28ラフォーレビル2階
伊賀の鎧屋NOTORIOUS
担当 中村宙史
℡090-7824-9617




 



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