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たぐりよせて。

初めの一歩(1)

中から聞こえる楽しそうな声。
かなりの勇気を振り絞り、そっと扉を引いた。

「いらっしゃいませ。おひとり?」

店内の視線が一斉にこちらへ向く。
明るい洋楽が流れる店内で促されるまま高めの椅子に座る。
とりあえず荷物を下ろし少し高めに設計された椅子に座る。

「こんばんは、タバコ吸います?」
「あ、はい。ありがとうございます。」

灰皿。タバコ吸っていいんだ。
飲み物をどうするかとニコニコした顔でメニューを差し出された。
よくある「とりあえず生」という言葉の通り、生ビールを頼んでみる。

かなり焦っている状態であることが自分でも分かる。
メニューには沢山のお酒の名前が書いてあった。
メニューを置いて、とりあえず落ち着こうと煙草に火を付けた。

手汗が酷い、心臓もかなり早く脈打っている。
一呼吸おき、少しずつ周りを見渡してみる。
沢山の人がそれぞれのテーブルで楽しんでいるのがうかがえる。

「お待たせしました〜」

軽く会釈すると笑顔がこぼれた。
可愛いらしいが似合う人。

「このお店来るの初めてですか?」
「はい…なんとなくで来てしまいまして。」
「そうですよね!このお店の説明しておきますね!」

お店の説明を受けながら、少し話していると他のお客さんからの注文が来て、お姉さんはドリンクを作りに行った。喋りやすい人でよかった。そう思いながらタバコとお酒を口の中で混ぜる。心臓が静かになるのをひたすら願ってるなんて悟られたくない。話し相手が居なくなったので、ボーッと今朝のことを考えていた。



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