名前の由来

病気が見つかったと知らされて、最初にやったのは、自分の病気について知ることと、健康保険や生命保険について調べることだった。

第一報は医師からの電話だったので、その内容を控えたり、調べたことをまとめておくのに、家にあった新しいノート、パソコンには専用のフォルダ、ブラウザのブックマークフォルダを準備した。
そのときに、「はて・・・」と困ったのが、それらにつける名前だった。

「がん」という名前のインパクトは、実際に自分が当事者になってしまうとなかなかに大きく(そのことはその後たびたび味わうことになる)、この先パソコンのデスクトップに「がん」という名前のフォルダがあるのは、あまりいい気分がしなそうな気がした。「癌」なんて漢字にしたら、目にするたびに落ち込みそうだ。
パソコンよりも人の目にふれるかもしれないノートの表紙に「がん」と書くのも気が引ける。英語で「cancer」としても、意味わかっちゃうしな・・・。
それで、学生時代に学んだ朝鮮語(韓国語)の辞書で「がん」を調べてみたら、암(アム)とあった。「韓国でもがんてあるんだよな・・・」とちらっとよぎった。あたりまえだ。

ひらがなで「あむ」とするとのんきな感じでわりとかわいいし、「あむあむ」と重ねるとのんき度が増すような気がした。なによりも、ほとんどの人に意味が通じないのがいい。
ためしにパソコンのブラウザのブックマークフォルダの名前を「あむあむ」としてみて、今もそのままだ。
でも、デスクトップのフォルダ名は結局「がん」だ。呼び名変えたところでなぁ・・・みたいな気持ちもやっぱりどこかにあった。
後に、診察内容や日々の心の動き、入院中には日記も書き込むことになるノートの表紙には何も書かなかった。「あむノート」と書こうかとも思ったけど、名前をつけてしまうと、なんだかがんにしばられるみたいな、がんを中心とした毎日がやってくることを受け入れるみたいな気がして、気が進まなかった。
体に不具合が出ていないのに、がんだと知ったからっていきなり病人気分になんてなりたくなくて、本当にささやかだけど、そんなこともしてみたのだった。

半年前のそんな時期を経て、せっかく記録しようというきもちになった今、いよいよお出まし願って「あむ日記」とした次第。

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