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『読書が好きな君へ』

『読書が好きな君へ』【超短編小説 077】

君が本を読むことが大好きなのは知っているよ。
いつも一人で何かしらの文学小説を読んでいるからね。

誰かと本以外の話をするよりも、読書に耽っている方が楽しいし、
有意義だと思っているんだろうね。

でもね、僕は本も好きだけれど君にも興味があるんだ。
どうだろう、例えば僕を本だと思ってページをめくってみないかい?

表装はどうかな?そんなに悪くはないだろう?
でも、大切なのは見た目よりも中身だ。

君が興味を持ってくれたなら、惜しまずに僕の全てを公開するよ。
ページをめくり僕を読み進めていく君の表情一つ一つを僕は見たいんだ。

君にとって僕の人生は、コメディかい?サスペンスかい?それとも子供向けのファンタジーかい?

そしていつか君の人生のページをめくらせてくれたらいいな。
その時にはポテトチップスのカスが落ちないように気をつけるよ。

空白のページが現れたら、どうか一緒に新たな物語を綴って欲しい。
どんな冒険や、どんな悲劇も、君と一緒にハッピーエンドにつなげたいんだ。


君は読んでいた本に栞をはさんで、こちらに目を向ける。
ゆっくりと近づいてくる君の口元は微かに笑みを浮かべていた。

「綺麗だ、、、」と、思わずつぶやいた僕の唇を君の唇がふさぐ。
激しく、そして時に優しく。一枚一枚、互いのページをめくっていく。

僕と君の読書が始まる。秋の夜長の始まり。
おそらくカーテンの隙間から三日月が覗いているのだろう。

僕は君の、君は僕の「物語」を読み耽っていく。黙々と。

ある瞬間、君と僕の「物語」がひとつになったのを感じる。
幸せな瞬間と君を抱きしめながら、僕の口元は微笑んでいた。

「読まれるって、読むことと同じくらい楽しいのね。」
君の一言がさらに僕を笑顔にさせる。

熱の籠った部屋。冷気を取り込むためにカーテンを少し開けた。
曇りガラスに僕は指を走らせて、読書が好きな君へメッセージを書く、

『つづく』と。

読書をする女性01

《最後まで読んで下さり有難うございます。》

僕の行動原理はネガティブなものが多く、だからアウトプットする物も暗いものが多いいです。それでも「いいね」やコメントを頂けるだけで幸せです。力になります。本当に有難うございます。