兄が離婚したらしい。数年前に③

兄の元嫁のことを思い出すと辟易としてしまう。


もうそれはどこからどう考えても常識は通用しない相手だった。


だからこそ、
既婚で子供を持ちながら
夫ではない他の男性の赤ちゃんを身籠ったと聞いても


そして他の男性の子供を身籠った事実を伏せたまま、夫に離婚を切り出し、
“慰謝料も養育費も何もいらないからとにかく別れてくれ”と夫に伝えたことも


終いには
“別れてくれないなら子供にはもう会わせない”と強情なことを言い出し、とにかく力づくで自分の意のままに離婚を進めようとしたことも


彼女を思えば全く不思議ではなかった。


世の中にはいろいろな人がおり、
兄はそのいろいろな人の中で彼女を選び、それでも6年くらいは結婚生活を送っていたのだ。


元嫁の彼女には終始驚かされることばかりでもあったが、でもやっぱり感謝もしている。


なにせ、とにかく甥っ子がかわいい。


あんな素敵な子は、私は見たことがない。


繊細で思いやりがあり、よく人を喜ばせる。


彼が生まれた時は、本当に可愛くて、こんなに可愛い赤ちゃんがいるのかと何度も何度も驚かされた。


甥っ子を産んでくれたのは他でもない、彼女だった。


充分有り難い。


それだけで。


ありがとう。


そして、そんな彼女にしてやられっぱなしの兄。


兄はそんな彼女でなければ、見向きもされないほど魅力のない男性なのかもしれない。


地味で無口で、性格面は優しいだけが取り柄の面白みのない兄に、


結婚生活の喜びと子供を持つ幸せを経験させてくれた。


それだけで充分。


有り難い。


本当に。


ありがとうございました。


今も、甥っ子を育ててくれてありがとう。


ただいつか、自分のことを振り返ることも覚えてほしい。


あなたの人生と、あなたの家族のために。


これからも、多くの幸せが訪れますように。













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