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#4 介護を変える真の介護DXとは

介護保険外のオーダーメイド介護サービス「イチロウ」を運営している株式会社LINKの水野です。

今回、プレシリーズAラウンドで1億円の資金調達を実施しました。
このタイミングで、サービス提供開始から2年6ヶ月の実績とインサイト、そこから見えた介護の未来について振り返り、4本のnoteにまとめました。

今回の4本の記事も下記から読めるので、他の記事もぜひご一読ください。

1. 介護保険外サービス 2年6ヶ月の歩み
2. 介護保険外サービスに徹して見えた世界
3. 介護ワークシェアの可能性
4. 介護を変える真の介護DXとは(本記事)

ここまで3本はイチロウのビジネスについて書いていきました。
#4本目は、イチロウを運営してくる中で見えてきたマクロの視点における「社会課題を解決する真の介護DXとは」について書いていきます。

このnoteでの表現について
介護保険適用内の訪問介護サービス訪問介護と表現しております。
・イチロウが提供する介護保険適用外の訪問介護サービス介護保険外サービスと表現しております。

介護業界のDXはまだまだこれから

ここ数年で、よくDXという言葉を耳にするようになりました。
DXとは何か、介護におけるDXとは何かを考えてみたいと思います。

■ LayerXが作成したデジタル化フェーズ
個人的に非常にわかりやすいと思ったDXのデジタル化フェーズです。
LayerXの福島さんのnoteを読んで、一番わかりやすいと思い活用させていただきました。福島さんのnoteでは、Level1から徐々にあげていくものだと書いてあります。

Level1(ツールのデジタル化)〜4(コラボレーション)の4段階で表現されています。
今の介護業界も、まだまだツールのデジタル化に止まっている印象です。

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■ 現在はLevel1のツールのデジタル化になっている

介護業界も段々と紙から電子に置き換わりつつあります。
しかし、デジタル化されたからといって業務にかかる時間が短縮されたり無くなったりすることはなく、個人的にはあまり変わっていない印象です。

介護業界で一番メジャーなものが介護保険請求ツールだと思います。このツールがあるとないでは、毎月の月末作業は大きく変わります。私が業務として介護請求業務を行うようになったときには、既に存在しており、なかったと思ったらゾッとします。
しかし、これもツールのデジタル化なのだと思います。最近では、レセプトデータを電子提出できるようになり、以前のように紙やCDにおとして国保連合会へ手渡しをしにいくことはなくなり、業務のデジタル化に突入しつつあるとも感じています。

介護保険請求
毎月のレセプトを国保連合会へ提出するワークフローを支援する介護保険請求ソフトがあります。有名どころでは、カイポケ(SMS)やほのぼの(NDソフトウェア)等があります。

■ 介護DXがLevel2に進めない理由は「法律」
介護業界においてデジタル化というと「ITリテラシーが低い」「パソコンアレルギー」等という言葉を聞きます。

ここがIT導入が遅れるレガシー産業の要因だと言われていますが、私は、「法律」にあると思っています。
法律が悪いというわけではありません。介護保険制度上で運営される以上、介護事業者は、介護保険制度に則ったアナログなルールに従う必要があり、Level2のデジタル起点の新しいワークフローが作れないということです。

■ 代表的な例は訪問介護の人員基準
法律によって改善できそうなのに改善されない代表的な例として、訪問介護の人員基準があります。

介護保険方では、訪問介護における人員基準として、サービス提供責任者の配置が求められています。配置基準として「利用者40名またはその端数を増すごとに1人以上のサービス提供責任者としなければならない」とされています。

このため、利用者数が増えるたびにサービス提供責任者を配置する必要が出てきます。
サービス提供責任者の業務は、訪問介護計画書の作成、訪問介護員の同行訪問、訪問介護員の教育だったりしますので、ITの力で解決できそうな部分です。

しかし仮に、訪問介護計画書をAIが勝手に作成してくれ、訪問介護員がスマホから研修を受けられるようになり、サービス提供責任者の業務内容が軽くなったとしても、利用者40名ごとに1名配置する義務が変わらない限り、そこに支払うコストを支払うには至りません。どんなにサービス提供責任者の業務を効率化しワークフローを整理しても経営上のインパクトがないからです。

このように、IT化と法改正はセットで行われないといけません。
更に言うと、法改正が先行しないとシステムを開発した事業者も積極的な投資ができません。
ITの活用できるポイントを整理し、先行して法改正がなされていくと、レガシーな介護業界も変わっていくと思っています。

イチロウはLevel2→3を目指している

ここでイチロウが目指している介護DXについて説明します。
結論から言うと、イチロウはLevel2あたりから3を目指しています。

■ まずはデジタル起点のワークフロー構築(Level2)を目指す

イチロウは介護保険外に特化し、介護保険制度の外側で運営されています。そのため、先ほどあげたような人員基準は求められず、国が定めたワークフローもありません。ゼロからお客様へ最高の介護士を派遣するためのワークフローを構築しています。

ワークフロー構築の中心にあるのがインターネットの力を使うデジタル起点の考え方です。

例えば、介護保険制度下では、サービス提供エリアを定め、エリアごとに事務所を借りて人を配置する必要がありますが、イチロウは、デジタル起点でワークフローを構築しているため、現地に人がいなくても最適なマッチングが行うことができ、東京から名古屋のお客様からの依頼に応えることを可能にしています。

ここで、イチロウがデジタル起点のワークフローを構築したことによるメリットをご紹介します。

■ デジタル起点のワークフローによるメリット

1. 介護士の時給を1.6倍に!
イチロウでは、各エリアごとに利用者のご要望をヒアリング、マッチング、マネジメントするCS(カスタマーサクセス)業務を効率化し、間接コストの削減に成功しています。これにより、原価率(パートナー報酬)70%を実現しています。
名古屋では業界平均の1.65倍、東京23区では1.55倍の時給を支払っています。

イチロウが解決したい社会課題 (38)

2. マッチングまでのスピードが最短5分に!
 #2でも触れていますが、マッチングに必要なコミュニケーション効率をあげることで、最短5分のマッチングと2時間の派遣を可能にしています。

イチロウが解決したい社会課題 (23)

3. レポート機能でサービスの透明性がアップ!
パートナー向けのアプリ開発、現地へ到着しサービスを開始と終了したときのレポート機能の実装により、サービスの透明性を向上させることができています。
これまで介護を依頼する家族やケアマネジャー、介護事業者(私たち)は、実際に訪問介護員が現地に行っているのか、サービスが終了したのかを把握することができず、訪問介護サービスはブラックボックス化していました。イチロウのレポートの機能は、リアルタイム且つ写真付きのレポートで、遠く離れたご家族や関係者へもサービス内容を報告することができ、サービスの安心感を高めることができています。

イチロウが解決したい社会課題 (37)

ここまで幾つかのイチロウのデジタル起点に考え方で作ったワークフローやシステムへの利点を説明してきました。

イチロウと訪問介護等や他社サービスとの違いをまとめましたので、参考にしてくでさい。

イチロウが解決したい社会課題 (39)

4. 社員の働く場所が自由に!
デジタル起点による利点は、介護依頼者や働く介護士だけではなく、イチロウを運営する会社にもメリットがあります。オンライン上でサービスのマッチングやマネジメントができるため、イチロウのメンバーは、PCと電話があればどこからでも仕事をすることができ働く場所を問いません。(サービス運営上必要な場合は現場へ飛んでいくこともあります)

そのため、コロナ禍でもフルリモートで仕事をすることができ、地域を問わない採用が可能となっています。実際に、現在は東京・愛知・静岡・宮城(予定)の人材が場所に問わられない働き方をしています。介護業界ではとても珍しい組織が作れていると思っています。

■ Level3以降については検証中です

Level3以降については、マッチングの自動化や介護事業者とのコラボレーション等を描いていますが、まずはLevel2を達成したいと思っています。

介護給付費を年間3700億円を削減できるかもしれない

イチロウが目指すワークフローやシステム、それによる利点を活かすことで、国の財政負担を軽減する可能性についても触れたいと思います。

ここでイチロウと訪問介護の料金や時給などを比較をしてみます。(イチロウは愛知Ver)

● 利用料/時間
 イチロウ:2,800円
 訪問介護:5,000円(利用者負担+介護給付)
● 介護士の時給/時間
 イチロウ:2,000円
 訪問介護:1,600円
● 間接コスト/時間
 イチロウ:800円
 訪問介護:3,400円
● 間接コスト率
 イチロウ:29%
 訪問介護:68%

上記の数字を見ると、利用料から介護士の時給を引いた間接コストの割合がいかに低いかがわかります。
この数字を元に、イチロウの仕組みを訪問介護の介護給付費にあてて試算すると、訪問介護に使用される介護給付費の37.7%が削減できる計算になります。1年間の訪問介護の介護給付費が1兆円程度なので、3,700億円が削減できることになります。

詳しく説明をすると、

・1時間あたりの介護給付費用:4,500円(5,000円のうち1割が利用者負担)
・イチロウと同等の料金へ下げた場合の削減可能額:-1,700円
・介護給付費の削減率:37.7%
・1年間の訪問介護に使用される介護給付費:1兆円
・介護給付費の削減率:37.7%
・介護給付費の削減効果:3,700億円

これは、かなりざっくりとした計算で考慮すべき点は山ほどあると思いますが、デジタル起点で作ったワークフローやシステムを活用すれば、3,700億円介護給付費の削減につながる可能性を秘めているということです。
年間の介護給付費全体が10兆円とすると約4%の削減であり、今後介護給付費がふくらんでいくと仮定すると、もっと大きなインパクトになる可能性があります。

私たちは、介護保険制度の外側で、イチロウの仕組みを磨き、日本の社会保障費の削減にも関わっていくという野望を持っています。

まだまだ課題は山積みでですが、介護保険外市場での成功、地方自治体とのPoCなどを進めながらチャレンジしていきたいと思っています。

でもやっぱり究極的には、目の前で苦しんでいる人たちを助けたい

介護保険外サービスの価値から介護DX、社会保障にまで飛躍していきましたが、究極的には目の前で苦しんでいる人たちを助けたい想いが根源にあります。

介護士として、目の前で辛い思いをしてきた人たちを見てきたからこそ作れる世界があると思っています。イチロウが解決したい3つの社会課題に立ち返ります。

イチロウが解決したい社会課題 (4)

・介護離職者数の課題
・介護士の人材不足の課題
・介護士の低賃金の課題

介護を理由に仕事を辞めてしまう人をなくしたいし、介護士が正当な賃金を得て希望を持って仕事に臨めるようにしたい。結果的に介護士の人材不足の解消に向かって進んでいきたいと思っています。

やっぱりここを中心にして頑張っていきたいと思っています。

おわりに

全4回にわたってイチロウの実績・インサイト、介護DXがもたらす社会変革について書いてきました。
いかがでしたでしょうか?あくまで、イチロウというサービス運営を通して私たちが出した答えであり、次の1年・2年で変化・進化したりすることもあると思います。

イチロウはこれからも、目の前のお客様への「高いクオリティのサービス提供」「デジタル起点のワークフロー構築によるDX」を通して大きな「社会課題の解決」に向け、真っ直ぐ走り続けていきます。

4つのnoteに分けてかなり赤裸々に運営情報を公開してきました。
ぜひ、介護保険外サービスの発展のために、本記事をベースとした取材依頼や志を共にする仲間を募集しています。

どしどしご連絡いただけると嬉しいです。

【会社概要】
会社名:株式会社LINK(https://link-cocokara.jp/)
代表取締役:水野友喜(みずのゆうき)
資本金:33,799,354円
本社:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目2-17 トランスワークス青山
事業概要:オーダーメイド介護サービス「イチロウ」の運営

介護現場で10年以上経験した代表取締役の水野友喜が2017年に創業。
「年間10万人の介護離職の課題」「介護士の低所得・人材不足の課題」など、介護の社会問題をインターネットの力を活用したデジタル視点で解決することを目指し、介護業界のDXに取り組んでいます。

【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
広報担当:水野友喜
電話:052-325-8385 メールアドレス:corp@ichirou.co.jp

【採用のお問合せ先】
採用担当:中澤美樹
電話:052-325-8385 メールアドレス:corp@ichirou.co.jp

最後までご精読いただきありがとうございました。


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