#1 介護保険外サービス 2年6ヶ月の歩み
介護保険外のオーダーメイド介護サービス「イチロウ」(https://ichirou.co.jp/)を運営している株式会社LINKの水野です。
今回、プレシリーズAラウンドで1億円の資金調達を実施しました。
このタイミングで、サービス提供開始から2年6ヶ月の実績とインサイト、そこから見えた介護の未来について振り返り、4本のnoteにまとめました。
今回の4本の記事も下記から読めるので、他の記事もぜひご一読ください。
1. 介護保険外サービス 2年6ヶ月の歩み(本記事)
2. 介護保険外サービスに徹して見えた世界
3. 介護ワークシェアの可能性
4. 介護を変える真の介護DXとは
まず1本目は、介護保険外サービスを2年6ヶ月間運営してきた実績の報告です。
このnoteでの表現について
・介護保険適用内の訪問介護サービスを訪問介護と表現しております。
・イチロウが提供する介護保険適用外の訪問介護サービスを介護保険外サービスと表現しております。
本記事の要約
◉ 介護保険外サービスを始めた理由
・日本の高齢化社会を抱える社会課題の解決がしたい
・介護業界の社会課題とは
1. 年間10万人以上の介護離職者
2. 慢性的な介護士の人材不足
3. 介護士の低賃金
◉ イチロウのビジネスモデルと特徴
・介護保険外サービスに特化
・介護士のシェアリングモデルを採用
・オペレーションをデジタル化
◉ 2年6ヶ月の実績
・サービスの種類
・平均顧客単価(月間)
・パートナーの保有資格
・パートナーの経験年数
・パートナーの就業状況
・パートナーの性別
・パートナーの年齢構成
介護保険外サービスを始めた理由
オーダーメイド介護サービス「イチロウ」は、簡単に言うと介護保険適用外の訪問介護サービスです。
なぜ私たちLINKがイチロウをスタートさせたのかを説明していきます。
■ 日本の高齢化社会が抱える社会課題を解決したい
オーダーメイド介護サービス「イチロウ」は、主に以下の介護が抱える社会課題を解決するために作りました。
・介護離職者数の課題
・介護士の人材不足の課題
・介護士の低賃金の課題
■ 介護業界の社会課題とは
介護業界は、主に2000年に始まった介護保険制度に基づいて運営されています。今では、30種類状のカテゴリーがあり、日本に30万以上の介護事業所が存在します。
介護保険制度は、社会保険の仕組みによって運用され、全ての国民が享受できるサービスとして非常に優れた仕組みです。国民全体に浸透する介護保険制度が存在するのは、世界中を見ても日本の他にドイツや韓国ぐらいで、優れた社会保障制度だと思います。
しかし、全ての国民が利用できるポジティブな面を持ちながら、社会保障費の抑制のために厳格化されるルールやデジタル化の遅れなどが課題となっています。優れた介護保険制度を持っているが故に、介護保険外の柔軟な民間サービスが育たないという側面も持っています。
そして、介護保険制度だけでは解決できない大きな社会課題を抱えています。私たちが解決したい社会課題について、詳しく説明していきます。
1. 年間10万人の介護離職者数の課題
年間に支出される介護保険給付費は年々増加し、社会保障費として国の財政を圧迫しています。そのため、介護保険制度上のルールは3年ごとに厳格化され、顧客ニーズと乖離していく傾向にあります。
その結果、年間10万人に及ぶ介護を理由に仕事を辞める介護離職が発生しています。(介護保険のルールが厳しくなったことだけが要因ではありません)
総務省の「平成29年度就業構造基本調査」によると、「介護・看護のため過去1年間に前職を離職した人」の数は、2007年時点で約14万4,800人、2012年時点で約10万1,100人、2017年時点で約9万9,100人。全体として緩やかな減少傾向はあるものの、毎年10万人規模の介護離職者数が発生している現状があります。
そして、介護離職後に正社員として再就職した人の割は49.8%と約半数の人は、正社員に戻れないという悲しいデータも存在します。正社員で再就職できない人は、派遣社員や契約社員、パート・アルバイト、あるいは無職という状況に置かれています。
3. 慢性的な介護士の人材不足の課題
介護離職問題は、介護をする家族が苦しむの課題でした。一方で介護士の人材不足も大きな社会問題となっています。
厚生労働省の発表によると2025年までに、需要245万人に対して供給が211万人と30万人以上が不足する見込みと発表しています。
私も介護施設で施設長をしていたときには、介護士は絶滅してしまったのかと思うほど人材確保に苦戦したことを覚えています。
3. 介護士の低賃金の課題
介護士の人材不足の大きな要因とされているのが、介護士の低賃金問題だと言われています。
UAゼンセン日本介護クラフトユニオンが行った調査によれば、介護職員の平均給与額は359万8,000円で、全産業を通じた平均給与である436万4,000円と比較し約100万円の差があります。厚生労働省でも様々な賃金改善案は出されているものの、抜本的な改善には至っていないと思っています。
低賃金問題のために、40代以下の若い世代が収入不安から介護の仕事を辞めてしまい、介護士の高齢化も進んでいます。
特に訪問介護領域で顕著に現れ、介護労働安定センターの発表では、40歳以下の訪問介護員(ホームヘルパー)が27%と、訪問介護領域(ホームヘルプ)において高齢化が進んでいることがわかります。
ここまでご説明した日本の大きな社会課題を解決するためにイチロウを作りました。
イチロウのビジネスモデル
イチロウは、シェアリングエコノミーの考えを取り入れ、業務委託として登録する介護士と介護依頼者をオンライン上でマッチングして派遣するビジネスです。
イチロウに以下の3つの重要な特徴を持っています。
・介護保険外サービスに特化
・介護士のシェアリングモデルを採用
・オペレーションのデジタル化へのこだわり
1. 介護保険外サービスに特化
介護離職者数の課題において重要なポイントは、訪問介護のルールが厳しく顧客ニーズに応えきれていない点だと思っています。多様化する介護ニーズにルールの厳しい訪問介護が応えられていません。
イチロウは、介護保険外に特化することで、要介護者やその家族のニーズに100%応えることができ、介護保険と介護保険外を併用することで、介護を理由に仕事を辞めることなく、少しでも長く在宅で介護を行うことができると考えました。
訪問介護サービスは、既に日本中の訪問介護事業所が提供しているため、私たちはあえて介護保険外サービスに特化してサービスを提供することを決めました。
ここで訪問介護のルール上、苦手な部分をおさらいします。
● 依頼から利用までに1週間以上かかってしまう
訪問介護の利用を開始する場合、ケアマネジャーへ依頼し、ケアマネジャーが介護事業所を探し、空きのあるヘルパーがいるか確認します。そして、ケアプランの立案や変更を行い、サービス担当者会議の開催を経て利用に至ります。
様々な工程がアナログで行われるため、1週間以上の時間がかか場合が多くあります。
● 介護保険上認められたサービス内容以外は認められない
介護保険上、身体介護や生活支援といったサービスを受けられる範囲が決められており、電球の交換や見守り、散歩など認められていないサービス内容は受けることができません。さらに、同居する家族がいる場合には調理や掃除などが受けられないなどの制約も存在します。
● 1時間以上の介護を受けにくい
訪問介護のサービス提供時間は、必要な介護サービスを足していくことでサービス提供時間が算出されます。そのため、結果的に1時間もしくは1時間30分以上の介護を受けることが難しくなっている現状があります。
2. 介護士のシェアリングモデルを採用
次に介護士をどのように確保・マネジメントしていくかという問いに対して、イチロウはシェアリングモデルを採用しました。
シェアリングモデルとは、介護保険制度のように雇用契約を締結して働いてもらうのではなく、イチロウプラットフォームへ登録・業務委託契約を締結して働いてもらう仕組みです。
シフトを作成して働いてもらうのではなく、業務が発生したときに、自分の意思で業務へ応募することができる仕組みとなっており、介護士は仕事を与えられるのではなく、やりたい仕事を自分で取りに行くという選択をすることができるようになっています。シェアリングモデルについては#3で詳しく説明します。
3. オペレーションのデジタル化へのこだわり
オペレーションのデジタル化とは、介護の依頼から介護士の登録、マッチング、マネジメント全てのオペレーションをデジタル化し業務を効率化することです。
デジタル化により、ご利用者の利用料を相場より安く抑えたり、間接コストを圧縮することで介護士の賃金を改善したりすることができるメリットがあります。
ここまでイチロウを始めた背景やビジネスモデルについて説明をしてきましたが、ここからは2年間の実績を数字で振り返っていこうと思います。
2年6ヶ月の実績
サービス種類
これまで4,500回以上のマッチングを行って来ました。
ここでは、提供を行ったサービスの種類を報告いたします。
● マッチング回数
・自宅の介護:1,586回(34.9%)
・自宅の家事:1,432回(31.4%)
・通院の付き添い:1,101回(24.2%)
・外出の付き添い:16件(0.3%)
・入院中の介護:113回(2.5%)
・見守り・話し相手:86回(1.9%)
・その他:214回(4.7%)
・合計:4,548件
平均顧客単価(月間)
次に1ヶ月の平均顧客単価になります。
サービス開始当初は、自宅の介護の顧客単価が極端に高い傾向にあり、一部の利用単価が高い少数の利用者の影響を受けていました。サービス利用者の増加に伴い、徐々に数値が推しなべられていった傾向が見られます。
● サービス全体
・2019年9月:8万1,141円
・2020年9月:4万1,857円
・2021年9月:3万8,766円
● 自宅の介護
・2019年9月:58万2,512円
・2020年9月:39万5,999円
・2021年9月:12万7,241円
● 自宅の家事
・2019年9月:1万4,567円
・2020年9月:8万9,051円
・2021年9月:6万0,729円
● 通院の付き添い
・2019年9月:1万2,753円
・2020年9月:1万1,284円
・2021年9月:1万1,238円
パートナーの保有資格
登録するパートナーの保有資格の構成です。
基本的に介護・看護系資格を必須としているため、資格保有率は約90%以上となっています。内訳は、介護系の資格保有者が81.7%、看護系資格保有者が4.3%、PT・OT等のセラピスト系資格保有者は2.1%、その他が0.4%となっています。具体的な数値は下記となります。
● 保有資格構成
・初任者研修終了:28.2%
・実務者研修終了:10.3%
・介護福祉士:43.2%
・介護支援専門員:3.8%
・看護師:4.3%
・セラピスト:2.1%
・無資格:6.4%
・その他:0.4%
パートナーの経験年数
登録するパートナーの経験年数の構成です。
介護経験が5年以上のベテラン層が44.8%と、経験が豊富な介護士が多く登録している傾向があります。
● 経験年数構成
・未経験者:12.0%
・1年未満:8.3%
・1年〜3年:19.8%
・3〜5年:15.1%
・5年〜10年:15.6%
・10年以上:29.2%
パートナーの就業状況
登録するパートナーの副業やダブルワーク率の構成です。
私たちは、シェアリングモデルにより副業として働きたい介護士の集客に力を入れてきました。その狙い通り、9割以上の方がイチロウ以外の介護事業所で働きながら、副業・ダブルワークとしてイチロウで働いていただけていることが分かります。
副業・ダブルワークとして働く割合:97.2%
パートナーの性別
登録パートナーの性別構成です。
9割以上が女性の介護士の方にご登録いただいております。
・女性:91.5%
・男性:8.5%
パートナーの年齢構成
登録するパートナーの年齢構成です。
7割以上が40歳以上と、一般的な介護事業所の年齢構成と違いが見られない結果となっています。
・19歳未満:0.4%
・20歳〜29歳:8.5%
・30歳〜39歳:15.7%
・40歳〜49歳:31.4%
・50歳〜59歳:30.0%
・60歳〜69歳:13.0%
・70歳以上:0.9%
ここまでが2年6ヶ月のイチロウが積み上げてきた実績と結果です。
次回の#2では、イチロウの特徴である「介護保険外サービスに徹して見えた世界」についてまとめます。
#2からは、数値やインサイトから得た考察を踏まえた面白い話になっていきますので、ご期待ください。
今回の4本の記事も下記から読めるので、他の記事もぜひご一読ください。
1. 介護保険外サービスに徹して見えた世界(本記事)
2. 介護保険外サービスに徹して見えた世界
3. 介護ワークシェアという世界
4. 介護を変える真の介護DXとは
最後に、イチロウでは介護保険外サービスの発展のために、本記事をベースとした取材依頼や志を共にする仲間を募集しています。
少しでも関心がある方は、どしどしご連絡いただけると嬉しいです。
【会社概要】
会社名:株式会社LINK(https://link-cocokara.jp/)
代表取締役:水野友喜(みずのゆうき)
資本金:33,799,354円
本社:〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目2-17 トランスワークス青山
事業概要:オーダーメイド介護サービス「イチロウ」の運営
介護現場で10年以上経験した代表取締役の水野友喜が2017年に創業。
「年間10万人の介護離職の課題」「介護士の低所得・人材不足の課題」など、介護の社会問題をインターネットの力を活用したデジタル視点で解決することを目指し、介護業界のDXに取り組んでいます。
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
広報担当:水野友喜
電話:052-325-8385 メールアドレス:corp@ichirou.co.jp
【採用のお問合せ先】
採用担当:中澤美樹
電話:052-325-8385 メールアドレス:corp@ichirou.co.jp
最後までご精読いただきありがとうございました。