性行為の後で性器を拭く瞬間の情けなさ
谷崎潤一郎の小説に、一人の男が道で転ぶだけの話がある。転んだ男は、とてつもない情けなさを感じる。どうせ転ぶなら誰かに見てもらっていた方がよかったような気もする。男は堂々巡りの逡巡に駆られる。情けなさを描き切った短編小説の傑作だ。
人間が生きる上で、「情けなさ」はたぶん本質的な問題の一つだ。常にかっこよくいたい、きれいでいたい、クールでいたいと思っても、どうせ生きてたら情けない瞬間が次々やってくる。
では、一人の人間が生活するうえで一番情けない瞬間とはいつなのだろうか。僕は