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冬のまつりは花火が似合う7
街に赤や緑、ゴールドの華やかな色合いが溢れ返る季節。クリスマスの空気が一気に銀座の街全体を呑み込む。嫌いじゃない…でも、地味に生きてきた自分には相応しくないような居心地の悪さも感じていた。
あれから、何度かバーに彼のLiveを観に行った。いつも夫と一緒に。ただ一度だけ、ふらりと店に立ち寄った時に偶然、店先でばったり彼に会った。
あれ以来、お互いを意識しないようにスマートに振る舞ってきたつもりだ。彼も私に何も言ってこなかった。私は既婚者で、彼より一回り近く歳上だ。何のメリットもないつまらない女。そう思われても仕方なかった。
「あ、こんばんは…今日は1人なんですね?」
彼は私を見つけると、嬉しそうに駆け寄る。
「ええ。どう?ピアノ、練習してる?」
当たり障りの無い会話。私達は核心には触れずにお互いを探る。私の事、どう思う?興味ある?女として見てくれる?私は君が可愛くて仕方ないよ。同じ気持ちならここから連れ出して…溢れ出そうな言葉を呑み込む。
ふいに手を掴まれる。
「はい」
連絡先を書いたカード。
「会えたら渡そうと思ってた。東京で初めてできた友達だから…。また会えて嬉しかったから」
子どもみたいな顔をする。
あんなに大人びた表情で私を見たのに。
一体どれが、ホントの君なのか分からない。
「じゃあね。また」
ニコッと笑い店に入って行く。
「あ!いい忘れた!」
ふりかえると私の前に立った。
「よく似合ってる、そのピアス。綺麗だね」
小さなパールのピアスに触れそうになる。
手を伸ばす彼から身を引いた。
怖かった。触れられたらもう自分を止められない。
それが分かっていた。私は大人だから。先の事は大体分かってしまう。
少しバツが悪そうにしている彼に「またね」と短く答えて店を後にした。振り向く事が出来なかった。彼をとっくに好きになっていた事に私はこの時、やっと気づいた。
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