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「アベンジャーズ/エンドゲーム」を超えた「唐人街探偵 東京MISSION」は、「人間の証明」オマージュという母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね

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「エンドゲーム」を超えたぜ!

中国では、あの「アベンジャーズ/エンドゲーム」を超えた! と言われる「唐人街探偵 東京MISSION」(原題「唐人街探案3」)。
「全米ナンバーワン大ヒット!」というキャッチコピーの作品が毎年何本も公開されるのはお約束でして、どの観点で超えたのかというと、以下だそうです。

中国旧正月の今年2月12日に公開されるや、初日に約10.1億元(約164億円)の興行収入を記録、『アベンジャーズ/エンドゲーム』を抜いて全世界オープニング週末興行収入No.1の新記録を樹立した『唐人街探偵 東京MISSION』
(妻夫木聡&長澤まさみら出演!『エンドゲーム』超え中国映画『唐人街探偵』緊急公開&予告編も)

ちらりと調べたところ、最終的には、鬼滅も真っ青、中国本土では軽く700億円は超えているそうなので、大ヒットなのは間違いないのでしょう。

いろいろな意見はあろうとも、「エンドゲーム」が、現代エンタメの到達点であったのは間違いなく、それを「超えた」とポスターに書く位なのですから、いったいぜんたいどんな映画なんだろうと、興味半分、恐ろしさ半分で見て来ました。

本当は字幕版を見たかったのですが、時間帯の関係で吹替版を選択。
中国語での会話が日本語になっているので、逆に混乱してしまうシーンもありましたが、そこまで支障はなかったです。

日本描写

オープニングから、昔懐かしい下痢腹ギャグを見せられて、「おぉ、ゆるい!(下痢腹だけに)」と衝撃。

それ以降、「東京MISSION」という副題の通り、90%東京が舞台。

しかしリアルというよりは、中国人基準の、ゆるーい日本観に基づいた日本描写の連続。
さんざんハリウッドでやられてきたので、別に腹は立たないし、なんなら、「悪意」とは言わないまでも、どこかしら「上から目線」な欧米の描写とは違って、単純に、視線の高さは「水平」かな?(かつてなら、「憧憬」であったのを寂しく感じる人もいるかもしれませんが)

銭湯の受付を花魁(芸者? 舞妓?)がしており、扉を開けると、いきなり草津温泉みたいな場所で、「脱衣所は?」と疑問に思う暇もなく、画面一杯に紋々を入れた裸体のヤクザたち。

それからも、相撲取り、秋葉のコスプレ、東京タワー、公道を走るゴーカートといった、「ほら、日本でしょ?」というシーンの連続。

「007は二度死ぬ」あたりと比較すると、新旧の日本観の変化が分かるんじゃないかな?

コナンの影響

今の中国の勢いを象徴して、「アクションもミステリーも旅情もギャグも人情(親子の絆)も全部入りだぜー」というごった煮で、「日本のバブル期に、仲間由紀恵さん/阿部寛さんの「トリック」をつくったら、こんな感じだったのかなぁ」と思うような出来栄え。

そして、背骨のミステリーですが、いちいち、過去の推理モノからの引用したがるのは、「名探偵コナン」っぽいなぁと思ったり。
また、単純なミステリーに終わらせないで、この事件の黒幕には、世界支を目論む「Q」という、巨大な組織が存在しているという風呂敷の広げ方も、「コナン」の影響が強いのかな?

それにしても、真の悪役「Q」。
少数のエリートによる大衆の支配を目指している分かりやすい悪の組織。
でも、「これって、中国共産党のことじゃね?」と思ったのは私だけ?
いや、習近平の潜在的なライバルである「中国共産党青年団」と見るべきか?(・・・・・・どっちでもないだろうけど)

(あと、コナンのライバルである「金田一少年の事件簿」の、原作者/作画コンビによる「探偵学園Q」なんて作品もあったなぁ。)

推理モノ

以前も書いたことがあるんですが、ミステリー映画・ドラマって、おそろしい分量で生産されているけど、動画と理屈(謎解き)の相性って、本当は良くないと思うんです。

トリックを絵的に説明できる強みはあっては、ロジックは結局、言葉に頼らざるを得ないことも多く、そうすると、モノローグや、わざとらしい説明台詞を多用することになって、「なんだかなー」と感じることは多いです。

本作ですが、密室トリックについては、スタイリッシュな映像を駆使しているのは、「おぉ」と素直に感動。
コメディだから許される飛躍を、うまく活かしていたと思います。

でも、これまた推理モノ「あるある」ですが、凝ったトリックを駆使して、大きなどんでん返しをやろうとすればするほど、人間描写/人間ドラマはおざなり/強引になってしまいがちで、本作も、犯行動機の説明の段階になって、犯人による怒涛の心情吐露/真相告白開始。

「日本の二時間ドラマみたいだな」と思う間もなく、バックで流れる「人間の証明テーマ曲」。

母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね・・・・・・・。

「人間の証明」も出生の秘密を背景にした親と子の殺人事件でしたが、「唐人街探偵3」も同じような構図で、コナンの影響とかなんとか、そんもんじゃなくて、モロ「人間の証明」のオマージュだってことを製作者側が公表しているわけで、

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と、「エヴァンゲリオン」で「さよならジュピター」の主題歌「VOYAGER〜日付のない墓標」が流れて来た時以来の驚きでした。

母さん、あの帽子は中国人が拾ってくれましたよ・・・・・。

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