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Twitterは「道」&「マーケティングの場」。人気編集者・竹村俊助さんに聞く「noteとTwitterでつくる新しい企業コミュニケーション」実践編

noteとTwitterを組み合わせてつかう際のTipsを語る「noteとTwitterでつくる新しい企業コミュニケーション」イベント。今回は実践編として、編集者の竹村俊助たけむらしゅんすけさんにおこしいただきました。

竹村さんは、ダイヤモンド社などを経て、株式会社WORDSを設立。前田裕二著『メモの魔力』、高島宗一郎著『福岡市を経営する』などヒット作を連発している売れっ子編集者です。

企業のnote活用についても様々な記事を書いている竹村さん。より多くのひとに読まれるnoteの書き方テクニックと、Twitterでさらに読み手をふやすための考え方やコツについておうかがいしました。

ゲスト

編集者
竹村俊助さん

顧問編集者とは?

ーー竹村さんはご自身を「顧問編集者」と称していますね。「顧問編集者」としての仕事や役割など、特徴を教えてください。

竹村 企業の経営者に話をうかがって、それをわかりやすく面白くまとめるのが「顧問編集者」の仕事です。

実業家の国光宏尚ひろなおさんのnoteを手がけたのが、「顧問編集者」の仕事をするきっかけとなりました。国光さんが「FiNANCiE(フィナンシェ)」というWebサービスをローンチするタイミングで、自分の考えや想いをしっかりとみなさんに伝える手伝いをしてほしいとご相談を受けたんです。

実際に国光さんのnoteを編集させていただいたら、結構反響が大きくて。スキも3100を超えています(2022年5月30日現在)。経営やビジネスの世界でも、編集力が求められているんだということを実感しました。

ーー2019年3月にこの記事を出したのは、まさにベストタイミングでしたね。InstagramやFacebookに陰りが出はじめたころで、国光さんはこの記事を出したことでWeb界に確固たるポジションを築きました。いまや国光さんは、「Web3」の旗手と目されています。

竹村 もともと、国光さんの考えとこれまでの経歴が非常に興味深いものだったんです。僕はそれを、わかりやすく整えて文章にさせていただいただけ。

経営者が社史をまとめたい、ビジョンを伝えたい、新しいサービスをローンチするなどというときには、わかりやすくまとめられた文章が必要になります。そのうえ、より多くのひとに伝えようとするならば、その文章は読者が読みたいと思える内容になっていなければなりません。

経営者の「伝えたい! 」内容を、読者の「知りたい! 」内容に変換して橋渡しするのが、顧問編集者の役割なんです。

従来は、テレビや出版、Webなどのメディア側に編集者がいました。経営者は取材をしてもらい、記事にしてもらっていたわけです。でもこのやり方では、メディア側の意図が強く反映されてしまい、せっかくいいことを言ったのに削られてしまったり、メディアが経営者の想いをくみとり切れず本人が本来言いたかったことを取り上げてもらえなかったりということが起こりえました。

しかしnoteやTwitterなら、発信者側に編集者がつくことで、経営者は自分の想いの丈をコントローラブルな状態で発信できるんです。

「何を」よりも「だれが」を先に

ーー具体的にはどのように編集を進めていくんですか。

竹村 経営者が発信する目的を最初にうかがい、方針を決めます。

このときのポイントが、「何を言うか」の前に「だれが言うか」をちゃんと固めること。

自分のよく知らないひとがいきなり自社サービスの紹介や組織論を語り出しても、だれも興味をもって聞きたいと思いませんよね。なので、まずはそのひとが何者なのかがわかるような、自己紹介になるコンテンツをつくらさせていただきます。

月に2、3回経営者の方に取材をさせていただき、言語化や思考の整理のお手伝いをします。経営者の方がやることは、基本的に僕らの質問に答えることだけ。

いきなりビジネスモデルの話などはしません。「ご両親は何をされていたんですか」、「子どものころ勉強はできましたか」、「部活は何をやっていましたか」など、”人間〇〇さん”にフォーカスして質問していくのが、うちの特徴的なやり方です。

どんなに偉い経営者の方でも、取材時に広報や秘書の方の立ち合いはご遠慮いただいて、なるべくマンツーマンで話を聞きます。

記事を読むひとは、「経営者の話」が聞きたいわけではなく、「おもしろい話」、「何か自分の役に立つこと」を知りたいんです。経営者の方の経験や考えにはそういったものが必ずありますし、それらはご本人がピュアな状態で話した方が引き出されやすいんですね。

経営者の方が素の状態で話した内容を、わかりやすく読者に伝えるのが僕らの仕事。記事化してそれがバズったとしても、僕らがすごいのではなくて。その方の本来の価値がみなさんにちゃんと伝わった結果です。

noteに「それっぽさ」はいらない

ーー印象的だったnoteの成功事例についてお聞かせください。

竹村 印刷会社の2代目社長・工藤太一さんの例です。工藤さんは企業のインナーブランディングを支援する会社を経営しているんですが、その仕事への想いが世の中に伝わりづらいということで、うちの会社へ相談に来られました。

話を聞いていくと、工藤さんは実は印刷会社の2代目社長。でも、印刷業は「斜陽」というイメージがあって、実際に売上も落ちていた。そこで、新業態として大企業のインナーブランディングを請け負うことにしたそうです。社会的に意義のあることですし、インナーコミュニケーションとして社内報の制作、印刷を承れば印刷業の売り上げにもなります。

ご本人は、自社を紹介する際に「インクの臭いをさせたくない」とおっしゃっていたんですが、工藤さんや新業態の会社の根幹にあるのは、工藤さんのお父様が立派につくりあげてきた印刷会社です。なので、私はそれを押し出していくことを工藤さんに提案しました。そしてできあがった初回のnoteが「36歳で印刷会社の社長になった僕が、減り続ける売上をなんとか立て直した話」です。

結果、多くのひとに読んでいただくことができました。スキも3700以上ついています(2022年5月30日現在)。

いまのひとたちは、Web情報に対してすごく敏感。「ウソ」や「つくりもの」をすぐに見抜きます。それに、きらきらしたストーリーを求めてもいません。

僕はnoteを「人生のど真ん中」にあるメディアだと思っていて。顧問編集者として取材をするときも、「いま目の前にいる人の人生」について聞くようにしています。「スーツよりもパジャマ」、「それっぽさよりもピュアさ」。

「経営者らしい」文章ではなく、自身の経験や想いを正直に書くというのが、noteの記事をより読まれるようにする秘訣だと思います。

Twitterは「道」そして「マーケティングの場」

ーー竹村さんにとって、Twitterはどのような位置づけですか。

竹村 Twitterは、読者がnoteの記事にたどり着くまでの「道」だと思っています。note内での回遊もすごくあると思いますが、noteの外からひとを呼び込むためにはやはり道があった方がいい。

それに、Twitterは「マーケティングの場」でもあると考えています。Twitterで小さいコンテンツをたくさんばらまくと、「リーダーの話をするとウケがいいな」とか、「自己啓発に関連した発信をすると反応が多いな」などがある程度わかります。どこに注力してnoteを書けばいいのか、事前に把握できるので効率がいいんです。

顧問編集者としても、経営者の方にはそのようなTwitterのつかい方をアドバイスしています。

ーーnoteやTwitterによる発信の効果測定については、どのようにお考えですか。

竹村 今日お話しした事例はとくに読者の反応がよかったもの。全部の記事が3000、4000とスキがつくわけではもちろんありません。じゃあ、書く意味がないのかというと、決してそんなことはありません。

経営者が自分の会社の価値や自身の考え、想いを言葉にしてコンテンツとして貯めていくプロセスに意味があると思っています。noteはずっと残しておけるので、積み上がった良質なコンテンツは資産になるんです。

僕も今日、自分がだいぶ前に書いたnoteをここで紹介していただいて、また新しいひとに読んでいただける機会になったと思っています。

ーー最後に、noteやTwitterでこれから発信しようとしているひとに向けて、アドバイスをお願いします。

竹村 ひとに多く読まれるコンテンツは、ストーリーとノウハウです。ストーリーは、過去・現在・未来と、現在進行形のものとにわけて書くといいですね。

過去のストーリーは自己紹介や社史など、会社や経営者の履歴書をつくるイメージです。ブレイクスルーした出来事があったらそれをまとめてもいいと思います。商品やサービスの誕生秘話ですね。誕生秘話って、すごくみんなに興味をもってもらいやすいです。

現在進行形のストーリーはNHKの『プロジェクトX』のような、いまやっているプロジェクトのストーリー。

未来に向けたストーリーが「ビジョン」です。「こういう世界をつくりたい」という考えをまとめるといいと思います。その際は、経営者の方の原体験を入れておくといいですね。なぜそのように考えるようになったのかが読者に伝わるので、興味をもってもらいやすくなると思います。

ノウハウも、個人・チーム・会社のノウハウでわけるとよいです。個人のノウハウなら「仕事術」や「思考法」、チームのノウハウなら「チーム術」、「リーダー論」、「コミュニケーション論」など。会社のノウハウなら「戦略」や「マネジメント」、「ビジネスモデル」などになります。

ただ、いきなりコンテンツメーカーになるのは難易度が高めですし、続かないと苦しくなるので、まずは今日のこのイベントで思ったことを自分の言葉で書いてみるというのはどうでしょうか。それに対して僕が「いいね」をしたり、リツイートしたりして、つながりや発信の場が広がっていくかもしれません。

ーー本日はありがとうございました。

※敬称略
※当イベントでは、竹村さんが顧問編集者として手がけたほかのnoteの記事事例についてもお話ししています(38:20ぐらいから)。くわしくは以下の動画アーカイブをご覧ください。

ゲストプロフィール

竹村俊助たけむらしゅんすけさん
株式会社WORDS代表取締役

株式会社WORDS代表取締役。経営者の顧問編集者。ダイヤモンド社などを経て2018年に独立。前田裕二著『メモの魔力』、高島宗一郎著『福岡市を経営する』、佐藤可士和著『佐藤可士和の打ち合わせ』など、数々のヒット作の編集・執筆を手がける。SNS時代の「伝わる文章」を探求中。自著に『書くのがしんどい』(PHP研究所)がある。ポテトサラダが好き。

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interview by 徳力基彦 text by いとうめぐみ

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