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「noteを始めて新しい人生が始まった」73歳現役のすし屋・ほり川さん

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、73歳の店主が営む「鮨ほり川」さんを訪ねました。

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新型コロナウイルス拡大防止のため自粛が要請され、多くの飲食店が苦戦を強いられる中、1本のnoteが話題を呼びました。

投稿したのは、東京下北沢に店を構える老舗「鮨ほり川」の店主、堀川文雄さん。1975年に開業して45年間、ずっとお店に立って寿司を握り続けてきた73歳の現役の職人でありながら、コロナ禍、スマホを片手にSNSで積極的に発信。

noteでは、シンプルかつ前向きに、お店のこだわりや家庭用にアレンジしたレシピまでを公開しています。

自粛中、危機を救った1本のnote

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「noteを始めたおかげで、73歳から新しい人生が始まった気分です」

そう話す堀川さんがnoteを始めたのは2020年4月。緊急事態宣言が出て、お店の存続が危ぶまれるほどの局面に立たされていたときでした。

「遠方から来るお客さんが多かったものですから。自粛の影響で2月からお客さんが減って、一人も来ない日が続きました。先も見えず、いつまでお店が続けられるか、このまま続けられないかもしれない。そう思ったときに、とりあえず自分にできることをしよう、noteをやろう!と」

自己紹介として初めて投稿したnoteの反響は予想外に大きく、スキやRTだけでなく、2019年3月に開設したTwitterとInstagramのフォロワーが増え、堀川さんのスマホの通知は鳴り止みません。

「美味しそう!」「自粛が明けたら行く!」「がんばってください!」ーー若い世代を中心にコメントやDMが次々に届きます。

「みなさんの反応にずいぶんと救われました。これまでお店の中だけではお客さんがどう思っているのかわからなかったものですから、直接コメントをもらって、自分がやるべきことがクリアになりましてね。若い人たちにもっと鮨を食べに来てもらうためにはどうすればいいか。自粛中にいろいろ考えて試しました」

“回らないすし屋”の敷居を低くして、若い世代にもっと鮨を身近に感じてほしい。

そんな願いを持って堀川さんは、こだわりのオリジナルメニューやお店の楽しみ方、家庭でつくれるレシピをnoteで公開し、新しいメニューやコース料理を考案していきます。

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「“家でつくってみたら、美味しかった”と言ってもらえるのが嬉しくて。noteにレシピを書くと不思議と新しいメニューが浮かぶんですよ」

「これまで旬の素材を生かして型にはまらないためにもアラカルトでやってきました。でも、noteを書くようになってからSNSを通して若い人たちから“時価が怖い”、“どうやって頼んだらいいかわからない”という声を聞いて、コースをやってみるかと。まずこれを食べておけば間違いない!という45年間の集大成のほり川スペシャルをつくりました」

暖簾がかけられない日も、応援の言葉を励みに、自粛が明けてお客さんが来る日を心待ちにしながら、堀川さんはお店に立ち続けていました。

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大学生や歳が離れた友人に教わった発信

45年間、古典的な江戸前鮨を握りながらも、昔から今も変わらず、その時代の“新しいもの”が好きだという堀川さん。

「今は、noteさんが時代の先を行ってるでしょう。だから始めたんです」

堀川さんが73歳にして、頭を柔らかくして常に“新しいもの”に触れ、こんなにも若さと元気が漲っているのはなぜなのでしょうか。

「出前が減って弟子を取らなくなった30年前からずっと、アルバイトの大学生と一緒に働いています。18歳、20歳の彼らがいろいろ教えてくれるんですよ。一緒にいると年齢がわかんなくなっちゃう」

スマホもiPodも、TwitterもInstagramも、アルバイトの大学生が使っているのを見てやりたい!と教えてもらいながら始めたこと。学生と一緒に60歳にして初の海外、サンフランシスコへ行ったことも。

noteは、元アルバイトで15年来の友人である秋谷麻美さんに教わりました。フリーランスで個人のスタイリストをする秋谷さんのお客さんがnote経由で来ることが多いことから、やってみたい!と思ったそう。

週1回ほどのペースで秋谷さんがお店に訪れる際に、堀川さんがアイデアを話しスマホのメモを見せて、一緒に撮影して、PCからnoteに投稿。毎日、休憩時間にスマホをチェックして、少しずつコメントの返信をしています。

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「堀川さんはここでご飯を食べさせてもらっておしゃべりをしたり、カフェでお茶をしたり、仲の良い友だちですね。noteも私と同じものをやりたい!と言って始めて、使いこなしています。書けば書くほど、あれもこれもとアイデアが浮かんでくるようで、楽しそうです」(秋谷さん)

「今ちょうどnoteに書きたいことがあるんですよ!」と嬉しそうに目尻に皺を刻んで握ってくれたのはマンゴーの握り。今、お店のイチオシ、一番の人気のメニューだとか。

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いただくと、シャリの酸味とわさびがマンゴーのジューシーな甘みと意外にもマッチして驚きの美味しさ!!トロピカルな風が吹いて異国にいるような気分に。

若いお客さんで満席になる日も。発信の効果

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noteを始めて2ヶ月が過ぎ、自粛が開けた頃、鮨ほり川には予約の電話が相次ぎました。満席となる日も増えています。

「若いお客さんがすっごい増えました。10人中6〜7人くらいはnoteを見て来たと言ってくれますね。発信のやり方についてアドバイスをくれるお客さんもいますよ。写真を撮ってSNSにも上げてくれるので、感想が聞けて嬉しいです。一人で来てくれるお客さんも増えました。noteを書いていなかったら、今頃どうなっていたことか。救われました」

noteを始める前、4月の頭はこのまま閉店を余儀なくされることも恐れていたという堀川さん。今は、体力が持つ限り、自分で仕入れができるうちは現役でお店に立ち続けたいと言います。

「最近は、アルバイトだけでなく、お客さんやnoteを書いている同業者の若い人たちからも刺激をもらっていますね」

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これから、お店に来れない人にも身近に感じてもらえるよう、寿司の握り方を動画で配信してみたいと、発信にも前のめり。

73歳、まだまだ現役。堀川さんはこれから、どんな新しいメニューを生み、どんな新しいことに挑戦していくのでしょうか。noteを読んでぜひ、鮨ほり川の暖簾をくぐってみてください。

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■クリエイターファイル
73歳すし屋のnote【現役】

鮨ほり川です。1975年に開業し、45年間、休まずに下北沢の鮨ほり川という店をやってます。今も現役です。仕入れから調理まで全て一人でやっています。一人でも多くの人に店を知ってほしいと思い、noteをはじめました。http://www.sushi-horikawa.jp
note:@sushi_horikawa
Twitter:@sushi_horikawa
Instagram:@sushi_horikawa/

鮨ほり川
東京都世田谷区代田1-46-3 フェニックスマンション1F/03-3413-8776
2020年5月26日から18:00-22:00/水曜定休
世田谷代田駅から徒歩7分/下北沢駅から徒歩10分

text by 徳 瑠里香 photo by 平野太一

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