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仕事もアートも発信も、全部やり尽くす。事業デザイナー・スワンさんの“ごちゃ混ぜ”創作活動

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル。今回は、事業デザイナーのスワンさんにお話を聞きました。

多摩美術大学を卒業後、大手IT企業でデザイナーとして働きながら、副業で数十社以上のスタートアップの顧問として、事業改善や組織開発などに携わってきたスワンさん。2020年春に独立し、現在は新規事業を立ち上げながら、YouTubeチャンネルで発信もするなど、多彩な活動をされています。

そうしたご自身の経験をもとにした自己肯定力の保ち方や時間管理のノウハウをnoteで発信していたところ、出版社から声がかかり、2021年1月に著書『あなたの24時間はどこに消えるのか』が発売されました。

▼インタビュー動画

書くことで、周囲の声に対するモヤモヤが解消された

発信をはじめたきっかけは、会社員時代にさまざまなブログやコミュニティサービスのリサーチをしていたことだそう。

「『Simplog』というブログサービスを担当していたときに、書き物のメディアを一通り試していました。noteや海外のブログサービスなども見ながら、書き続けるひとの気持ちを考えたり、反応がある記事とない記事の違いを分析したり。気がついたら自分でものめり込んでいって、自分の創作としての書き物をするようになりました」

ファインアート(芸術)を専攻していた学生時代は、油絵を描いたり、インスタレーションと呼ばれる空間全体をつかった作品制作をしていました。一方で、制作会社でアルバイトをして、ウェブデザインの勉強もはじめます。

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「学校では“平面”と“空間”を往復するようなかたちで、創作をすることが多かったですね。そこから、デザインとアートも行ったり来たりするようになりました。そのときは、デザインとアートの垣根に苦しんでいたりもしたんです。アートをやっているとデザインのひとから後ろ指をさされたり。その逆もあり。

全部たのしいんだからほっといてくれよ、って当時は思っていたんですけど。自分で発信を続けるようになって、自分の意思や思いを伝えられる場ができたことで、ようやく昇華された感じがあります」

創作活動に不安はつきもの。自分の経験談が誰かの役に立てば

2018年に書いた「折れないクリエイターの歩き方」というnoteが、多くのひとに読まれました。この記事を書くにあたって、影響を受けた本があると言います。

『アーティストのためのハンドブック 制作につきまとう不安との付き合い方』という、私の創作バイブルみたいな本があるんです。自分で何かをつくるって、苦しいし、馬鹿にされることもあるし、背後からまさかりが飛んでくるみたいなことも多い。『つくるって基本的に不安だよね』ということを前提として、肯定してくれているので、病みそうになったときは、いつも開いています」

創作をしながら常に不安と闘ってきたスワンさん。「セルフノート」という独自の不安への対処法も編み出しました。

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「毎朝、自分の頭の中をセルフノートにすべて書き出すということをしています。ブレインダンプと言われる、メンタルケアの手法ですね」

文章だけでそのときの感情を殴り書きすることもあれば、絵をスケッチすることも。ルールを決めずに、自分の思考整理や、感情のはきだめの場所として使っているそう。

noteではそうした自身の体験談を元にした、セルフマネジメントの方法を発信しています。

「自分の失敗談や苦しんだことをベースに、学問的な情報なども加えて、『こうなったらよくなったよ』ということを書いています。誰かの手助けになればいいなとも思いつつ、半分は自分のため。みなさんに共有することで、失敗を供養しているというか、浄化するような作用もあるのかなと思っています」

この2年間でありったけのリスクを取り尽くすことを決意して、独立

本業ではデザイナー、副業ではスタートアップ顧問として働きつつ、noteでも発信したりとさまざまな活動をしていたスワンさんですが、2020年春に独立。このタイミングで独立を決意した理由は?

「周りでフリーになったり独立をする友人が増えたことが1つ。あと、自分は経験主義なところがあって。やっていないのに、あーだこーだ言ったり、憶測で判断するのはかっこ悪いから、死なないことと犯罪以外やってもいいかなって思っているんですけど(笑)。

新卒でメガベンチャーに入り、副業で小さなスタートアップや資金調達前の会社のお手伝いなどもさせてもらう中で、あとやっていないことは『一人でやるもの』だなと。いま29歳なんですけど、結婚もしたし、後々は子どももできるかもしれないと思ったときに、『よし、いまが一番リスクを取れるときだ』って。ありったけのリスクをこの2年くらいに取り尽くそうと思って、会社を辞めました」

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リスクを取ることに、不安はなかったのでしょうか?

「決断をしたことには、自分の父の死の影響が大きいです。定年間際に難病を発症して、59歳で亡くなったので、父には老後がなかったんですね。老後がないパターンがあると気づいたときに、待っちゃいられないな、って。

介護のために実家に戻っていたんですが、そのときはリハリビリの手伝いで毎日筋肉痛で、自分も何もできなくなって。自分の時間って、一生、自分だけの時間なわけじゃない。『いつか』って本当にないんだなって思ったときに、覚悟が決まりました」

note、YouTube、アートにピアノ。ごちゃ混ぜの創作活動がスワン流

独立して1年。仕事やnoteに加え、昨年は本を執筆したり、YouTubeでの発信をはじめたりと、さらに活動の領域を広げています。

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「独立して、時間感覚が一番変わりました。昔は創作したいことがありすぎて時間貧乏になっていたというか、何か1つ創作をしたいならもう片方をあきらめなきゃいけないんじゃないかと、葛藤していた時期もありました。

でもいまはnoteにYouTube、ラジオ。今年からアート活動も再開しようと思っていますし、DIYもやっていたり。自分の好きなもの全部、取りこぼさずにやれそうな気がしています。あと、年始にピアノを買ったんです。母が音大出身で実家にもピアノがあったんですが、ちっちゃい頃はピアノのよさに気付けずにイヤイヤやってました。でも、いまになってめちゃくちゃ弾きたくなって(笑)。

仕事も創作もサンドイッチしてやっています。7日間をごちゃ混ぜで使っている感覚がありますね。朝起きて、タスクの整理をして、原稿を書くとか重い仕事をしたあとに、ごはんを食べてからYouTubeを録って、仕事のミーティングをして。レゴのように自分のやりたいことを組み合わせています。それぞれがお互いにリフレッシュになってくれるのも、楽ですね」

ごちゃ混ぜの時間管理には、NotionとGoogleカレンダーを活用。そのノウハウはnoteの記事にもまとめ、多くの反響を呼びました。

「一個の創作に熱を入れすぎると、燃焼してしまって起き上がれなくなることがあるんです。小刻みにやるほうが、自分の創作のペースに合っているのかなと。ずーっとnoteだけ、YouTubeだけ、みたいにやっていると、コケたときや調子悪いときに、負のループに入ってしまうので。分散していると、トータルで長く創作できるんじゃないかな」

Googleカレンダーを見せてもらうと、そこにはやったことが小刻みにぎっしり。スワンさんには、だらだらしている時間はないのでしょうか……?

「めっちゃありますよ(笑)。カレンダーに『nap』って入れてます。だらだらしないと、創作ってできないと思うんです。創作って『余白』だというのが、自分の中で一つのキーワードで。漫画とかで『それから2年後』みたいな設定ってあるじゃないですか。その2年間に何があったんだろうって想像するから、作品へより深い想いを馳せられる。余白が残されていることによって萌えるものがある。

だから、自分の生活に余白をつくるのはすごい大事だと思っているので、サウナに行ったり、とにかくボーッとする時間をつくったり、一人で泊まりに行ってホテルでゴロゴロしたり。わざと何もしない贅沢、みたいなものを、特に最近は心がけるようにしてますね」

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本を出すことが一つの目標だったというスワンさん。次なる目標は?

「いままでは、自分の創作が届いてるかというのがすごく不安で怖かったんですけど、特にこの1年くらいで届いた先が見えてきて。本もYouTubeもそうですけど、感想が届いたり、自分のつくってきたものの周りで少しずつ小さいコミュニティができてきてる感覚があります。自分の書き物やしゃべりというものを、どう人に伝えていくか、熱に変えていくかという、そのコミュニティづくりも創作。だから、これからは自分の創作を軸に、インタラクティブなものをつくっていきたいなぁなんて思ってます」

■クリエイターファイル
スワン
1991年群馬県生まれ。事業デザイナー、スタートアップデザイン顧問。多摩美術大学卒業後、サイバーエージェント、メルカリなど大手IT企業でデザイナーとしてサービス開発に携わりつつ、個人で現在まで数10社以上のスタートアップの事業改善、また組織開発など幅広く顧問として携わる。2020年春に独立し、現在は新規事業の仕込み中。Twitter、noteを中心に実体験と科学的根拠を融合させた情報発信を行う。平日も働き、遊び、休み、休日は山に登る日々。
note:@shiratoriyurie
Twitter:@shiratoriyurie

動画編集:Hiroya Tanaka 取材・文:志村優衣