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「書くことは人生の幅を広げてくれる」元スポーツ紙記者・塩畑大輔さんがnoteを書き続ける理由

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、元スポーツ紙記者の塩畑大輔さんにお話を聞きました。

日刊スポーツ新聞社で記者として12年、カメラマンとして3年。サッカー、ゴルフ、野球。スポーツの現場で名だたる選手と信頼関係を築き、筆を執ってきた塩畑さん。その後プラットフォームであるLINE株式会社に籍を移し、現在はLINE NEWSで媒体とのコラボ企画の編集をしています。

noteでは、新聞記者時代には書くことのなかった、取材相手である選手や監督とのエピソードを中心に綴っています。その物語からは、選手や監督の人となりが垣間見られるだけでなく、塩畑さん自身の書き手としての矜持や佇まいが感じられます。

新聞記者を辞めた今だから書けることを書き続ける場所

塩畑さんがnoteを始めたのは2020年の5月。日刊スポーツ新聞社を離れ、LINE NEWSで記事を書くことを辞め、記者として自らの筆を折った頃でした。

「スポーツの現場で15年、40歳を手前に、自分のキャリアの先が見えたこともあって、日刊スポーツを辞めました。デスクになって現場を離れることになるのなら、自分が可能性を感じたインターネットの世界、プラットフォーム側に行ってみようと。

転職後、たまたまLINE NEWSでも記事を書くことになったんですが、あくまでそれは、日々取材をしている媒体さんに活用してもらうための土壌づくり。もともと土壌が整ったら、自分は書くことをやめるつもりでいました」

記者として書く場所を手放した塩畑さんに、「書き続けなきゃ、だめですよ」とnoteをすすめたのは、年の離れたふたりの友人でした。

「若い友人に背中を押されて、自分がなんたるか、何を大事にしているかを、物書きは書くことで伝えなきゃと思ったんです」

コロナ禍、塩畑さんには、元スポーツ紙記者として“伝えたいこと”がありました。

「スポーツの試合が延期になって、選手たちが独自に発信をする機会が増えました。受け取る側もこれでよくない?みたいな空気になって、知り合いの記者からも相談を受けたんです。もちろんそれ自体は悪いことではないけれど、やっぱり、第三者である記者が書くことで、選手のかっこいいところを伝えられるし、説得力を持たせられる。

新聞記者は美学としても、価値判断の序列を守るためにも、自分を記事に写り込ませないんです。でもその分、どうやって取材をし、記事を書いているかが伝わりにくい。新聞記者ではなくなった今なら、その価値を伝えられると思いました」

塩畑さんはnoteを通じて、「第三者が取材して書くことは必要ないんじゃない?」という世の中の問いに対する答えを、新聞記者時代の体験を持って伝えてくれています。

noteを書くことで生まれた、人とのつながりと自信

塩畑さんが1万字を超える文量で丁寧に熱く書き上げたnoteは、インターネットを通じて、選手やチームのファンのみならず、ゆっくりと、遠くまで、届いています。

「noteの反響で驚いたのは、公開してから時間が経っても読まれ続けること。自分が思うところを深く書き込んで、noteに置いておくだけで、読む人が自分の好きなタイミングで、その時の気分で読んでくれる。noteはそうやって、書き手と受け手の距離を縮めてくれます」

「noteを読みました」ーーその一言をきっかけに、憧れの存在であった先輩記者と食事をする機会を得たり、仕事上で新しいコラボレーションが生まれたり、旧友と連絡を取り合うようになったり。

「そうやってnoteを通して生まれた、人とのつながりは何にも代え難いものだと思います」

また、noteを書くことで、塩畑さんは、“自信”を取り戻したと言います。

「僕が今いるLINE NEWSというプラットフォームでは、本当に伝えたいことを媒体さんに書いてもらいたいという思いでやっています。そこには僕が発信する側として大事にしたいことを書いて試す場所はないので、自分のnoteで実験しています。中身を本質的なものにしてどこまで読まれるか?そうした問いを投げるように、 自分がいいと思うものを書いたら、ちゃんと反響があった。確信が得られたことで、自信にもつながりました。

ちょうどその頃、自分の仕事のやり方に悩むようなこともあって、コロナも相まって気持ちが落ちていたんですが、noteに救われました。閉じかけていた世界が再び広がった。noteを書いていなかったら今頃どうなっていたんだろう、と思うほどです」

自分の人となりを書くことで伝えていく

「自分がいいと思う、本質的なものを書く」こと以外に、塩畑さんがnoteを書くときに大事にしていることは?

「noteを始めるときに、スポーツは読まれないんじゃない?と言われたことがあって。だからこそ意識しているのは、ただエピソードを紹介するだけでなく、学びと言ったら大上段ですが、共感を呼べるようなものにすること。また、紙面には書ききれなかった細かいところまで書いて、普通は行けない場所に来ているような擬似体験をしてもらえたらと思っています。

あとは、新聞記者はここまでやっているんだということを伝えるためにnoteを始めたので、現役記者の土俵を荒らさないことは、心に決めています」

書き上げたnoteは、公開前に、事実確認も含め、登場するスポーツ選手本人だけでなく、彼らの関係者や自分の同僚にも読んでもらっているそう。

(このnoteは、ASICSがnoteで開催した「#応援したいスポーツ」コンテストで「スポーツのきっかけ賞」を受賞)

“伝えたい”という明確な意思を持って、丁寧に深く書かれた塩畑さんのnote。その筆力と視点に目をつけた編集者から書籍出版の依頼も来ています。

「これからは書籍化など、少し先の展開も頭の片隅に置いて、noteを書いていきたいと思っています。自分がどういう書き手であるかを書くことでちゃんと伝えていけるように」

ほかにも、仲間と始めるYouTubeと掛け合わせてその裏側を書いたり、取材して書いてみたいと思う人を応援する講座を開いたり、noteという場所をこれからもっと活用していきたいと言います。

「僕、会う人会う人にnoteの執筆をすすめているんです。noteを書くことは、人生の幅を広げてくれることだと思うので」

スポーツが好きな人はもちろん、取材して書くことに興味がある人も、そうでない人も、ぜひ一度、塩畑さんのnoteを訪ねてみてください。

■noteクリエイターファイル
塩畑大輔

LINE株式会社。昨年まではLINE NEWS編集部で記事を書いていました。前職の日刊スポーツ新聞社では記者を12年間、カメラマンを3年間。記者として浦和や、オシムさんの千葉と日本代表、中村俊輔選手、男子ゴルフ、西武などを取材しました。取材現場で学ばせていただいたことを中心に。
note:@daisukeshiohata
Twitter:@daisukeshiohata


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