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会社員をしながら、大好きなアートを仕事にできたクリエイター・ぷらいまり。さんの情熱

noteで活躍するクリエイターを紹介する #noteクリエイターファイル 。今回は、会社員の傍ら、アート関連のライターとして活躍するぷらいまり。さんにお話を聞きました。

年間300近く(!)の展覧会や美術館に足を運んでいるぷらいまり。さん。noteでは、週末に行ける展覧会の紹介(【今週末行ける展覧会】)、実際に行ってよかった展覧会・美術館のレポート(●展覧会・美術館 案内●)、身近なモノの展開図を創作するペーパークラフトの作品集(ナンセンスの練習。)を中心に執筆しています。

ほかにも、Webメディア「ナンスカ」や「NEW ART STYLE」にライターとして参画。

noteに投稿されている記事だけでもその数726本(2021年6月26日現在)!その量と質からも「現代アートが好き」という気持ちがこぼれ出しています。

「たのしい」だけじゃなく「モヤモヤ」も魅力な現代アートの世界

ぷらいまり。さんが現代アートに魅せられたのは、高校3年生のころ。

「テレビで草間彌生さんの作品を観て、高熱を出したときのように、しんどくなったんです。同時期に、田中敦子さんのカラフルな蛍光灯をまとった『電気服』という作品にも触れて。それまで学校の美術の授業で見てきたものとはまったく違う作品に衝撃を受けました。こんな世界があるんだ!って。それが現代アートとの出会いですね」

大学生になって地方から東京へ出てきて、美術館や展覧会、芸術祭に足繁く通うように。

「鑑賞するうちにどんどん深みにはまっていきました。学生時代、マルチメディアアーティストの八谷和彦さんにも揺さぶられました。私は工学を専門としているんですが、『風の谷のナウシカ』の飛行具を本当に飛べるように再現した作品を観て、アートと工学のような、全然違うと思っていた分野のものを掛け合わせることもできて、こんなにおもしろいものが現実の世界に現れるんだ!って驚かされました」

メーカーに就職し技術職として働きはじめてからも、ぷらいまり。さんは変わらずアート鑑賞を続けます。でも次第に「疑問」を抱くようになった、と振り返ります。

「現代アートには、ただ『たのしい』ってだけじゃなくて、『モヤモヤ』する作品がいっぱいあります。当時の私は、そういう作品をどう観ていいのかわからなくて。現代アーティストがファッション的なアイコンとして取り上げられることにも違和感を覚えて、無邪気にたのしめなくなっていました。好きだったアートを嫌いになっちゃうかもしれない……。モヤモヤを紐解くために勉強したいと、NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(AIT)が主催する講座に通いはじめたんです。そこでの学びからモヤモヤもたのしめるようになって、また違う世界が広がった。そこから年間300近くの美術館や展覧会に足を運ぶほど、現代アートの沼にハマりました」

noteをきっかけに、「アートを書く」仕事が生まれた

ぷらいまり。さんがnoteをはじめたのは、AITの学びから“モヤモヤ”が解消されていった2014年の4月のこと。展覧会のレポートには、ぷらいまり。さんが鑑賞して抱いた“モヤモヤ”の糸を一つずつ解いていくように、調べて考えたことがつづられています。

「最初はフラットな視点で書いていたんですが、AITで出会った友人に『あなたの意見がないとおもしろくないよ』とアドバイスをもらって。自分なりの視点で書くことを意識しています。かつての私のように『よくわからないな』と思っているひとたちに、『そのモヤモヤもおもしろいんだよ』と共有するような気持ちで書いていますね。大型アート展だけでなく難解な作品展も取り上げることで、入り口を広げて、もっと気軽に現代アートをたのしんでもらえたらいいなと思っています」

2015年から書きはじめた【今週末行ける展覧会】は、週末に美術館を訪れるぷらいまり。さん自身が“あったらいいな”と思った企画をまとめたもの

「仕事の昼休みにwebや美術館でもらったチラシで情報収集して、行きたい展覧会をGoogleカレンダーに書き込んでいます。それをもとにnoteを書いて毎週水曜に更新していて。noteのおかげでアート鑑賞に行くいいペースが保てています。自分のためにやっていることですが、同じ趣味を持つ誰かの役に立ったらうれしいですね」

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ぷらいまりさんのGoogleカレンダー。何十本もの展覧会の日程を管理している。最近では、会期が変更になるたびにカレンダーも変更しているそう

自分の好きなアートをnoteに書き続けて5年が経つころ、「クリエイターへのお問い合わせ」窓口からメディアからの執筆依頼がくるように。

「noteの記事を読んでくれた編集者さんからご連絡をいただいて。いまは『ナンスカ』と『NEW ART STYLE』の2つのメディアで週3〜4本の記事を書いています。ほかにもアーティストの方から直接依頼をもらったこともあります。

note全体がポートフォリオの役割を果たしたことで、視点やテイストの違う記事がつくれることや、文章だけでなく写真が撮れることも伝わり、メディアとの相性を掴んでもらえたのだと思います。メディアでは、展覧会の紹介だけでなく、アーティストや美術館のインタビューも書けるようになりました」

こうしてぷらいまり。さんは、noteを通じて、現代アートを「観る」ことから「書く」ことへ、活動の幅を広げていきました。

「noteを書くようになって、自分が観たいものをただ鑑賞するだけでなく、ひとに良さを伝えられるように調べたり自分が考えたことを記録したりするようになりました。noteはスキやコメントで反応がわかるので、切り口や書き方を変えて試行錯誤もしやすいです」

創作にも挑戦!ネガティブな気持ちをエネルギーに変換する

さらにはコロナ禍、ぷらいまり。さんは自ら「創作」にもチャレンジ。noteで作品を発表しています。

「コロナ禍で展覧会に行けず悶々としていたとき、大好きなアーティスト、明和電機のコンサートがオンライン開催になって、コンサートをオンラインで楽しむためのグッズの工作キットが届いたんです。リアルで開催できない大変な状況をこんなふうに創作でおもしろく昇華できるんだなって感銘を受けて。私もイライラをポジティブなエネルギーに変えたい!と、ペーパークラフトの作品をつくってみることにしました。“身近なモノの見方を、ちょっとだけずらしてみる”をテーマに、もしもこうなったら?という妄想をかたちにしています。これまで見てきたアート作品で“好きだけど難解……”だと思うものを、自分なりに取っつきやすく表現してみたいという思いもありますね」

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もしもコンビーフの取り巻き鍵から牛が逃げ出したら……という発想で創作した展開図

「観る」「書く」そして自ら「創る」ようになって、日常やアート鑑賞、本業にも変化があったそう。

「ネガティブな気持ちも創作のエネルギーに変えることができるようになりました。好きなアーティストの作品を真似してつくってみると、『こんなにすごいことなんだ!』と観るだけではわからなかった発見も得られます。創作を続けるうえで、スキやサポートがとても励みになることがわかったので、私も好きなアーティストは積極的に推してお金も払って応援していきたいと改めて思いましたね。それから、noteを続けているうちに、深く調べてアイデアを出すことに慣れ、本業でも新規事業の提案ができるようになりました」

アートを「観る」「書く」「創る」の三本柱で好きなことを続けてく

それにしてもぷらいまり。さん、フルタイムで働きながら、展覧会に行き、メディアでもnoteでも記事を執筆、自ら創作までして、一体どうやって時間のやりくりをしているのでしょう。続ける秘訣は……?

「週末に展覧会に行って、移動時間や昼休みに情報収集して、早く帰った日の夜に執筆している感じですね。工作は週末に半日かけてやっています。私にとっては好きなことなので、とにかくたのしいんです。毎日更新!とかノルマも課してないし、自分のために書いているようなものなので。アートも書くことも、ただ好きだから続いているだけなんです」

そして、好きの延長線上には新たな仕事も生まれています。

「いつかアートを仕事にしたい、アートの魅力を広く伝えるようになりたい、という気持ちはずっと持っていました。まさか、こんなかたちで叶うなんて。会社員を続けながら、お金を得ることが目的になっていないからこそ、純粋にたのしんでできているんだと思います。これからも、欲張りかもしませんが、現代アートを『観る、書く、それを糧に自分で創る』──好きなことをずっと続けていきたいです」


noteクリエイターファイル
ぷらいまり。
年間300近くの展覧会に足を運ぶアート好き。会社員、webライター(アート系)、展開図をつくるひと。 月:展覧会・美術館紹介 水:今週末行ける展覧会紹介 金:ナンセンスの練習(オリジナル展開図) を書いています。お仕事依頼お待ちしてます→ https://is.gd/hqEiKw
note:@plastic_girl
Twitter:@plastic_candy

text by 徳 瑠里香

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