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卒論の話

学校というものに行き初めて15年。もうそろそろ学生とも言えない年齢になってきたのを、朝9時の渋谷の交差点で感じました。卒業式用の袴を履いて、髪の毛を綺麗に編み込んだ人たちが歩いているのを見て、あー大学の卒業式かと思うと共に、それが認知できたのが、僕もこの3月で大学を卒業するからだと気付き、もうそんな年齢なのかと今更ながら驚いてしまいました。前のnoteでも書いたけど、僕の実感を飛び越して友達が立派な社会人、大人になってて寂しさと感慨深さを感じることも多々あります。これからは中学の友達、高校の友達でありながらも、一人の大人として接することもあるのかと思うとちょっと寂しくなることがあります。時間って思っている以上に簡単に過ぎていくんだということをここ最近で実感しました。

今日はそんな寂しい話をしたいんじゃありません。僕がこの一年、15年間の学生生活の最後の課題である卒業論文製作に取り組んだ時のことを話します。

僕は海洋生物や海洋環境について研究する学部に通っていて、研究室は海の状況と魚の分布などについて研究する研究室に所属しています。卒論のテーマを考える段において、僕はかなり悩みました。誰にも研究されておらず、僕の力で結果が出せそうなもの。研究などしたことがなく(みんなきっと無かったけれど笑)、特にこんなことをしたいっていうのも特にない僕にとって研究テーマを決めて、計画を立てるなんて至難の業でした。ずっと悶々と論文を見てみたり、自分が思っていることを書き出してみたり色々したけど、結局決まることはありませんでした。一ヶ月くらいたってもまだまだ白紙状態で、先生に「流石に考えるのが遅すぎる!」と怒られたのはいい思い出です。

他人と比べて、どうこうってわけではないのですが、同期の子はテーマを決めるのが早かったです。そもそもその子はイカ類の研究がやりたくて大学に入ったため、イカをやりたいっていうのは既に決まっていたみたいです。そこからテーマを考えていったそうだったので、早かったのかなって思います。この時に興味が何かに向いている人、このことをやろうという軸のようなものを持っている人は強いなと感じました。これまで大学3年間ろくに授業も受けず、勉強もそこそこしか、しなかった僕にとって研究をしてまで更に学びたいことなんて思いつきませんでした。興味があったら何かのきっかけになったかもしれない物事に対して、何も引っかからない。情報収集を日頃から心がけることが大事だななんて今更になって気付く(笑)小さい積み重ねは深みになるんですね。

一般家庭の魚介類の使用頻度、鮮魚店の利用目的などの二度の紆余曲折を経て、やっと学校給食という最終的なテーマにたどり着きました。そこまでの道のりが長く、このテーマにしようって思ったのは10月頃でした。学校給食をテーマにした理由は自分の力でデータが取れること、数字としてのデータが見やすいところでした。理系の研究室ではやっぱりデータが大事です。数字で表せるデータが不可欠でした。一般家庭の魚介類の使用頻度、鮮魚店の利用目的のテーマでの聞き取り調査ではなかなか思うようなデータが取れなくて、道を変えました。僕は初めて卒論の制作で自分で課題を設定して、解決の方法を探すってことをしました。問題の置き場所も、解決への糸口も、これでいいのか分からずに暗い部屋の中を進んでいるような初めての感覚に出会いました。この道を行っていいものかどうか、いったところで出口を見つけることができるのかななどと、モヤモヤ何回も悩みました。この時に研究室の先生に、「とりあえずこの方向って思う方にやってみな。思うようにいくことは少ないかも知れないけど、やってみないことにはわからないから。」といっていただきました。その言葉に従ってちょっとずつやってみるとわかることも多くなり、先が少しずつ見通せるようになってきました。

この経験から僕はまずはやってみて、それを続けて見ることの大切さと、最初から全てを見通せるようなことはないんだということを学びました。今まである程度のやることと道が決まっていて、そこをずっとひたすらに歩いていく、そしてその途中にチェックポイントがあって、この方向で正しいかどうかを誰かが教えてくれていました。また、その道もある程度最初にゴールが見えていることが多かったです。でも今回はレールは自分で作らなければいけない、誰も方向の正しさを教えてくれないような感じで凄く大変でした。でも、その分出来上がったものには自力で作ったという愛着がありました。これから世の中に出たらきっとそのようなことばかりなのではないかと思います。この道が正解だって教えてくれる人もいないし、自分の人生は自分で決めて行かなくてはいけません。そんな予行演習をしたような経験でした。


僕の卒業論文はよくできたものでは無いかもしれません。でも、このテーマで卒業論文を作成出来て良かったなって思いました。それは卒論制作の過程でたくさんの出会いがあり、たくさんの人にお世話になりました。卒論のおかげで人に会いに行くことへの抵抗は無くなりました。また、僕は最初学校給食のことについて栄養士さんに聞き取り調査を行うことが何度かありました。最初はお仕事の邪魔になって、失礼かなって思ってなるべく電話などはしないようにしていました。しかし、実際電話をしてみると、快く聞き取り調査に応じて下さる栄養士さんが多く、なかには僕の卒論に興味をもってくださる人もいました。人の受け取り方はなかなか想像と異なることがあるんですね。勇気をもってお聞きしてみて良かったと感じました。

この春から修士論文という、卒論の少しレベルアップしたものに挑まなきゃいけません。また、真っ暗な先の見えないものの中を進まなきゃいけないかもしれないけど、その中で多くの人との出会いがあるのがとても楽しみです。

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