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思い通りに生きていけなくなっていた

東京の中間施設の屋上でビルと空を眺めながらタバコを吸うのが好きでした。この空と僕の地元の空もつながっているのだなぁと下手な詩のようなことを考えて感傷的になる日々でした。

スリップした理由を考え続ける9カ月でした。「自分よりひどい人はたくさんいるんだから、まだやったっていいだろう」「結局家族の犠牲になっていたんだ」「まだ、貯金もあるし仕事もあるし、自分が稼いだ金を何に使ったっていいだろう」

全部強迫観念が信じ込ませた嘘なのだということが、ステップを学びわかりました。でもその嘘は僕の心の奥底にいて、感情のバロメーターが限界を超えるとギャンブルに走らせました。

「身体のアレルギーと精神の強迫観念」何度も繰り返し教わりました。そしてこの病気は自分で診断できなくてはいけないとも教わりました。

ステップワークを続け、もうすぐ施設を終了する頃に「正直」というテーマでミーティングしました。それまで僕はずっと「仕事に行けなくなってスリップしました」と言っていましたが、その日「ギャンブルしたくて仕事に行けなくなりました」と言いました。ギャンブルしている時はもちろん、ギャンブルしていない時もギャンブルのことを考えていたのだということを再確認できました。ギャンブルが僕の支配者でした。そしてやっと「思い通りに生きていけなくなっていた」と認めることができました。言葉で言うのは難しいのですが、腹の底から「その生き方は嫌だ、戻りたくない」と思いました。

あれから10年経ちます。今も色々辛いことがありますが、とにかくギャンブルに支配されない平穏な日々です。


今はタバコもやめましたが、地元の北アルプスの山々と空を眺めながら、この空はあのビルの街とつながっているのだなぁと思います。


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