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はんぶんこ

「このアイスさ、2人ではんぶんこしない?」

2つが1つになっているアイスを買う時は、おれはいつもそのような提案をする。

しかし彼女の返答は決まって、

「わたしは1人で食べられるから」

そう言っておれの分も合わせて2つ、買い物カゴにアイスを放り込む。

家の冷凍庫には1つだけ残ったアイスがいくつも並んでいることを、彼女も知ってはいるのだが。

そんなことは気にも留めず、彼女はいつものようにアイスをカゴに入れる。

「家にまだ半分残ってるよ」

「わかってるよ。でもこっちの味が食べたいの」

そう言って気分を損ねた様子を見せながらも、コンビニを出ると嬉しそうにレジ袋の中身を覗き込む。

そんな姿を一生見ていたかった。


君が残していった、半分だけのアイスは全て食べきってしまったから、君との思い出も薄れていくものだと思い込んでいた。

でも君がカタチに残るものを置いていったせいで、アイスはなくなっても頭の中にある君との記憶がなくなることはないと、そう気付かされた。

おれは1人で食べ切れるから、冷凍庫にアイスが残ることはないのに。

でも今では、半分残ったアイスを見ると、どうしても冷凍庫にしまいたくなる。

そんな自分が、つくづく嫌になる。

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