"ついさっき"
「ついさっき連絡があったんだけど、カコちゃん、結婚するらしいよ」
「"ついさっき"ねぇ‥」
「お前も結婚式出る?俺連絡しとくよ」
「出るわけねーだろ。元カノの結婚式なんて」
カコとは4年前のクリスマスに会ったきりだ。その日は俺にとっても、カコにとっても最悪な日になったわけだが。
その日のことは鮮明に覚えている。
ーーー
俺の浮気がバレ、アパートの部屋では気まずい空気だけが流れていた。
うつむく彼女を目の前に必死に言い訳を考えていたおれは、つくづく馬鹿な男だとウンザリする。
「もう、帰るね」
「あ、うん。またちゃんと説明するから、今日は本当にごめん。」
彼女は黙って玄関まで歩いて行った。
部屋の中で一切顔を上げなかった彼女とは、玄関でこちらを振り向いた時に初めて目を合わせた。
「ついさっきまで、コウくんのこと大好きだったよ」
そう言って別れたきり二度と連絡が返ってくることはなかった。
ーーー
「コウ、もしかしてまだカコちゃんのこと引きずってんのか?」
「いや、そんな気持ち"ついさっき"忘れたよ」
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