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インストラクショナルデザインのモデルとコーチングの活用による効果的なプログラムの提案 ~コーチングとインストラクショナルデザインの専門家による架空対談 その13~

インストラクショナルデザインとコーチングのモデルは、うまく適用させると人材育成の大きな武器になりそうです。
他のモデルだとどうなのか、高橋さんはさらに深堀していきます。

高橋純一さんの探求:

「これまで、ADDIEモデルやARCSモデルなどについて議論してきましたが、インストラクショナルデザインの古典的なモデルである『ガニェの9教授事象』やメリルの『IDの第一原理』についても触れてみたいと思います。これらのモデルは、教育の基本的な構造を定義するものとして広く知られていますが、コーチングのアプローチとどのように融合できるか、お二方のご意見を伺いたいと思います。」

ガニェの9教授事象の観点から:

鈴木先生は、インストラクショナルデザインでも古典的なモデルである『ガニェの9教授事象』について説明しつつ、コーチングを活かせつ場面について述べます。
「ガニェの9教授事象は、効果的な教育のために必要なステップを具体的に示したもので、学習者が情報を処理し、知識を長期記憶に定着させるための段階的なプロセスを提供します。これをコーチングと組み合わせる際には、各教授事象にコーチングの要素を取り入れることが考えられます。たとえば、学習者の注意を引く最初のステップ(1. 注意を引く)で、コーチがクライアントの現在の課題や目標に焦点を当てた質問を行い、関心を喚起します。また、7番目のステップ(7. フィードバックを提供する)で、コーチングによる個別のフィードバックを行い、学習者が自己の進捗を理解し、改善点を見つける手助けをすることができます。これにより、ガニェの構造化された学習プロセスが、コーチングの柔軟で個別化されたサポートと組み合わさることで、学習効果がさらに高まると考えます。」

メリルのIDの第一原理の観点から:

佐藤先生は、ご自身としても関心の高かった『IDの第一原理』を踏まえたコーチングの可能性について説明します。
「メリルの『IDの第一原理』は、学習が最も効果的に行われる条件を示したモデルで、特に、問題解決を中心に学習をデザインすることを強調しています。これをコーチングのモデルと組み合わせることで、特に『タスク中心の学習』が効果的にサポートされると考えます。たとえば、コーチングのセッションで、クライアントが特定のタスクに直面した際に、メリルの原理を活用してそのタスクをどのように解決するかを議論します。学習者は、自分で解決策を考え出すプロセスをコーチと共に進めることで、より深い理解と実践的なスキルを習得します。特に、『帰結を見せる』や『統合する』というステップでは、コーチングを通じて学習内容を実生活や職場でどのように適用するかを考えさせることで、学習効果を実際の成果に結びつけることが可能になります。」

高橋純一さんの促進と統合の提案:

「お二人のご意見を伺い、ガニェの9教授事象とコーチング、またはメリルのIDの第一原理とコーチングを組み合わせることで、それぞれの強みを活かしながら学習者やクライアントがより実践的で効果的な学習体験を得られることが分かりました。具体的には、ガニェの教授事象を基にした教育プログラムにおいて、各ステップでコーチングを組み込むことや、メリルの第一原理で示されたタスク中心のアプローチにコーチングの柔軟性を加えることで、学習者が自己主導で問題解決に取り組めるようになると考えます。ここでさらに深めて、これらの組み合わせをどのように現場で実践していくか、具体的なステップや応用例についてお二人の提案をいただけますか?」

研修プログラムの中にコーチングを組み込む:

鈴木先生は、具体的な融合イメージを伝えます。
「例えば、新しいシステムの導入研修プログラムを設計する場合、ガニェの9教授事象に基づいて研修全体を構築しつつ、各ステップでコーチングセッションを挿入することが考えられます。システムの基本操作を学んだ後(5. 学習ガイダンスを提供する)、コーチが学習者に対して、自分の業務にどのように新システムを適用するかを考えさせる質問を投げかけ、具体的な応用方法を模索させることができます。また、プログラムの最後に(9. 保持と転移を高める)、コーチングを通じて学んだことを現場でどのように実践するかについて振り返りと計画を立てるセッションを行うことも効果的です。」

コーチングを利用したシナリオベースのトレーニング:

佐藤先生も、IDの第一原理を基にしたコーチングプログラムについて提案します。
「メリルの第一原理を基にしたコーチングプログラムでは、特にタスクに直面した際の問題解決能力を高めるために、コーチングを利用したシナリオベースのトレーニングを実施できます。例えば、リーダーシップ開発プログラムにおいて、学習者がチーム内で直面する典型的な問題をシミュレーションし、その解決策を考えるタスクを設定します。ここで、コーチが学習者と共に問題解決のステップを進め、必要なスキルや知識を引き出す支援を行います。また、各タスクの後に、『結果のフィードバック』と『統合』を行い、コーチングを通じて学んだことがどのように他の状況に適用できるかを確認します。これにより、学習者は自己の経験と知識を結びつけ、効果的にスキルを実践に移すことができます。」

高橋純一さんの総括と次のステップ:

「お二人の具体的な提案から、ガニェの9教授事象やメリルの第一原理が持つ強力なフレームワークとコーチングの柔軟性を組み合わせることで、学習者が深い理解と実践的なスキルを得ることができることが分かりました。これらのアプローチは、単に知識を伝えるだけでなく、学習者が自己の業務や生活に直接応用できるように設計されている点が非常に有益です。今後は、これらのモデルの組み合わせを実際にプログラムに組み込み、その効果を評価するプロジェクトを立ち上げることを提案したいと思います。さらに、これを基に新しい教育・コーチングの標準モデルを開発することも視野に入れていきたいですね。」

このディスカッションでは、インストラクショナルデザインの古典的なモデルである「ガニェの9教授事象」と「メリルのIDの第一原理」がコーチングモデルとどのように融合できるかについて議論が行われました。鈴木先生はガニェの9教授事象の各ステップにコーチングを組み込むことで学習効果を高める提案をし、佐藤先生はメリルのタスク中心のアプローチにコーチングを加えることで、実践的な問題解決能力を強化する提案をしました。高橋さんはこれを総括し、実際のプログラムに組み込んで評価することを次のステップとして提案しています。

【登場人物や対談内容については、すべてフィクションです】

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