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効果的な学習環境をデザインする:M.D.メリルのID第一原理に基づくアプローチ


M.D.メリルの「IDの第一原理」に基づく効果的な学習環境の実現

効果的な学習環境を作り上げるためには、単に情報を伝えるだけでは不十分です。学習者が知識を効果的に獲得し、それを実際に応用できるようにするためには、学習設計の基本的な原則に従うことが重要です。今回は、M.D.メリルが提唱する「インストラクショナルデザイン(ID)の第一原理」を紹介し、その要点を解説していきます。この原理は、学習環境を設計する際の基本的なフレームワークとなり、研修やOJT(On-the-Job Training)においても応用できるものです。

第一原理:現実世界の問題から導入する

メリルの第一原理の一つ目は、「現実世界の問題から導入する」ことです。これは、学習者が明日にも役立つような知識やスキルを身につけることを目的としています。実際の業務や日常生活に関連した問題を最初に提示することで、学習者は自分にとっての学びの価値を実感し、学習に対する意欲が高まります。例えば、営業研修であれば、実際の営業活動で直面する課題を取り上げ、その解決方法を学ぶことで、学習の動機付けが強化されます。

第二原理:活性化

二つ目の原理は「活性化」です。これは、学習者の過去の経験や知識を引き出し、それを新しい学びに結びつけることを目的としています。新しい情報を学ぶ際、既存の知識や経験が土台となることで、理解が深まり、記憶に定着しやすくなります。例えば、研修の初めに、参加者が過去に経験した似たような状況や問題を振り返らせることで、新しい学びに対する準備が整います。

第三原理:例示

三つ目の原理は「例示」です。学習者が新しい概念やスキルを理解するためには、具体的な事例や実例を示すことが効果的です。研修のアンケート結果などでも、「講師の体験談が参考になった」という意見がよく見られますが、これは事例が学習者の理解を助ける役割を果たしているためです。例えば、管理職研修では、過去の成功事例や失敗事例を取り上げ、それらを通じて学びのポイントを具体的に示すことが有効です。

第四原理:応用

四つ目の原理は「応用」です。これは、学習者が新しく学んだ知識やスキルを実際に使ってみることを促すものです。私自身の研修では、ゲームやロールプレイングを頻繁に取り入れており、「知っているけどできない」というギャップを体感させることを重視しています。これにより、学習者は自身の弱点を認識し、継続的なトレーニングの必要性を理解します。例えば、コミュニケーションスキルを学ぶ研修では、実際の対話を模擬するロールプレイングを行い、学んだスキルを試してもらいます。

第五原理:統合

最後の原理は「統合」です。これは、学んだ内容を現場で実際に活用するために、学習者が具体的なアクションプランを作成し、学びを統合するプロセスです。研修の最後には、学んだ内容を振り返り、どのように職場で活かすかを考える時間を設けます。この際、職場環境や上司の支援も重要な要素となります。特に、上司が新しい挑戦を制止するような状況では、学んだことが実践に移されることなく、学びの効果が失われてしまう可能性があります。そのため、管理職のサポートも重要であり、職場全体が学習を支援する環境を作ることが求められます。

OJTへの応用

M.D.メリルの「IDの第一原理」は、研修だけでなく、OJTにも応用できるモデルです。OJTでは、学習者が実際の業務を通じて学ぶことが多いですが、これらの原理を取り入れることで、より効果的な学習環境を提供することができます。例えば、現実の業務から導入し、過去の経験を活性化させ、実際に業務を行いながら学びを応用し、最後にその経験を統合することで、学習者は業務に直結したスキルを効果的に身につけることができます。

まとめ

M.D.メリルが提唱する「IDの第一原理」は、効果的な学習環境を設計するための基本的なフレームワークです。現実世界の問題から導入し、過去の経験を活性化し、具体的な例を示し、学んだ内容を応用し、最後に統合するという一連のプロセスは、学習者が知識やスキルを効果的に習得し、それを実際の業務に活かすための道筋を示しています。これらの原理を活用して、研修やOJTの設計を見直し、より効果的な学習環境を提供していきましょう。

(この記事は、2020年1月20日にオフィスKojoのメルマガ「KOJO井戸端会議」に掲載したものを再編集したものです。)

※この記事は、弊社のメルマガ「KOJO井戸端会議」の過去の記事からピックアップし、note用に再編集したものです。
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