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インストラクショナルデザインの限界? ~コーチングとインストラクショナルデザインの専門家による架空対談 その18~

原田教授との質疑応答に触発されたのか、専門家の質問が続くようです。
しかも、インストラクショナルデザインに対して懐疑的な方のようです。
さて、どのようなやりとりが展開されるでしょうか?


インストラクショナルデザインに批判的な専門家の意見:

「これまでのディスカッションを興味深く拝聴していましたが、私はインストラクショナルデザイン(ID)には限界があると考えています。特に、IDは学習プロセスを過度に構造化し、学習者の創造性や自律性を抑え込む可能性があると感じています。現代の企業環境においては、学習者が自己主導で学び、適応する能力が重要であり、IDのような体系的アプローチでは対応しきれない部分があるのではないでしょうか?むしろ、アダプティブ・ラーニング(学習者1人ひとりに最適化された学習内容を提供することで、より効率的・効果的な学びを実現する学習方法)や学習者のエクスペリエンス(学習体験)を重視するアプローチの方が効果的ではないかと思いますが、この点についてご意見をお聞かせください。」

学習者中心のIDへ変遷:

鈴木先生はこの指摘に対し、ここ最近のインストラクショナルデザインにおける研究の実情を元に応えます。
「ご指摘いただいた点は、インストラクショナルデザインに対する非常に重要な視点だと思います。確かに、IDは学習プロセスを体系化し、ある程度の構造を提供するため、過度に硬直的な設計がなされると、学習者の創造性や自律性を阻害するリスクがあります。しかし、私はIDが必ずしも学習者の自律性を抑え込むものではなく、むしろ効果的に活用すれば、学習者の自律性をサポートする強力なツールになり得ると考えています。

例えば、IDのプロセスを柔軟に設計し、学習者が自ら学習のペースや内容を選択できるようにすることで、IDのフレームワークを活かしつつ、学習者の主体的な学びを促進することが可能です。また、最近ではアダプティブ・ラーニングのような個別化された学習アプローチとIDの統合が進んでおり、これにより学習者のニーズにより適切に対応できるようになっています。」

補完関係のIDとコーチング:

佐藤先生も、鈴木先生の話を受けて応えます。
「私は、IDとコーチングが対立するものではなく、むしろ補完し合うものだと考えています。IDが提供する構造化された学習プログラムは、学習者が基礎をしっかりと理解するために非常に有効です。しかし、その後の段階では、コーチングを通じて学習者が自らの目標に向かって学びを深め、自律的に行動する支援を行うことが可能です。

特に現代の企業環境では、変化に迅速に対応する力が求められます。そのためには、IDの基盤の上に、学習者が自己のニーズや環境に応じて学びを調整できる柔軟性を持たせることが重要です。アダプティブ・ラーニングやエクスペリエンス重視のアプローチも非常に有効ですが、それを支える基礎として、IDの原則が機能すると考えています。」

柔軟にIDを捉える重要性:

高橋さんが、二人の話をまとめます。
「お二人のお話から、IDに対する批判的な視点を含めたバランスの取れた考え方が見えてきました。確かに、IDが硬直的になりすぎると、学習者の創造性や柔軟性を阻害する可能性があります。しかし、IDの構造を柔軟に活用し、個別の学習者のニーズに応じたアプローチを設計することで、その欠点を克服することができます。

また、IDが提供する体系的なアプローチは、学習の基盤をしっかりと築く上で非常に重要です。その上で、コーチングやアダプティブ・ラーニングといった柔軟な手法を組み合わせることで、学習者が自己主導で学びを進められるような環境を作り出すことができます。つまり、IDは一つの道具として使い方次第で非常に効果的になり得るということです。

現代の企業において、どのアプローチも絶対的な解決策ではなく、状況やニーズに応じた適切な組み合わせが重要です。IDのフレームワークを基にしながらも、学習者のエクスペリエンスやアダプティブな要素を取り入れ、柔軟かつ効果的な学習環境を提供することが求められています。」

このやり取りでは、批判的な視点を持つ専門家がIDの限界について指摘し、それに対して鈴木先生がIDの柔軟性や新しいアプローチとの統合の可能性について説明しました。佐藤先生は、IDとコーチングが補完し合うことで、学習者の自律性を高めることができると述べ、高橋さんは、IDのフレームワークを基盤にしながら、柔軟性を持たせたアプローチの重要性を総括しました。

インストラクショナルデザインに批判的な専門家の反応:

「鈴木先生、佐藤先生、高橋先生、それぞれのご意見を伺い、インストラクショナルデザイン(ID)に対する理解が深まりました。特に、IDが必ずしも硬直的なものではなく、柔軟に設計することで学習者の自律性をサポートできるという点は、新たな視点を得ることができました。

ただ、私は依然として、IDがもたらす構造化された学習プロセスが、特に迅速に変化する現代のビジネス環境において、学習者の即時的な適応力や創造性を十分に引き出すのかどうかには懐疑的です。IDが有効な基盤を提供することには異論はありませんが、その後の応用や実践の段階で、どれだけ柔軟性を持たせられるかが鍵だと思います。

その点で、佐藤先生が言及されたコーチングや、アダプティブ・ラーニングのような、より動的なアプローチを取り入れることの重要性には非常に共感します。特に現代の企業においては、学習者が自分で学びの道を選び、自分のペースで成長していける環境を整えることが重要です。IDの枠組みを超えて、学習者中心の柔軟な学習環境を作り上げるための具体的な実践例や事例があれば、ぜひ参考にしたいと考えています。

全体として、IDの価値は理解しましたが、それを現場にどう応用し、かつ他のアプローチとどう組み合わせていくかについて、さらなる議論が必要だと感じています。今回のディスカッションは、私の考えを深める良い機会になりました。ありがとうございました。」

インストラクショナルデザインに批判的な専門家は、IDの柔軟な設計について新たな視点を得たものの、依然としてその限界について懸念を持っています。しかし、コーチングやアダプティブ・ラーニングのような動的なアプローチとIDを組み合わせることの重要性を認め、今後の実践に役立つ具体的な事例やさらなる議論を求めています。専門家は、ディスカッションが自身の考えを深める有意義なものだったと感謝の意を表しています。

【登場人物や対談内容については、すべてフィクションです】

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