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「先義後利」の精神:企業経営における義と利の関係性


先義後利 -義を先に、利を後に-

私の好きな言葉に「先義後利」という言葉があります。これは、「義」を優先し、その後に「利」を得るという考え方です。特に、大丸百貨店の経営理念(現在は大丸松坂屋)としても知られており、江戸時代の「大文字屋」創業者である下村彦右衛門正啓がこの言葉を事業の根本理念として掲げました。

「先義後利」という言葉は、企業経営や商売の基本的な価値観を示すものです。「義」とは、道義や正義、つまり社会に対して正しいことを行う姿勢を指し、これを貫くことで、最終的に「利」、つまり利益がもたらされるという考え方です。この順序が大切だとされています。

現代のビジネスにおいても、この考え方は重要です。短期的な利益を追い求めるだけではなく、長期的な視野で社会貢献や顧客の信頼を第一に考えることで、企業の信頼やブランド価値が向上し、結果的に利益がもたらされるのです。この理念は、特に顧客に対する姿勢や社会的な責任を果たすことの重要性を強調しています。

「三方よし」との共通点

「先義後利」は、日本の伝統的な商慣習である「三方よし」とも共通する価値観を持っています。「三方よし」は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三者が全て満足する取引を目指す考え方で、近江商人に由来しています。この考え方も、企業や商売が社会に貢献し、顧客の信頼を得ることで、自身の利益も得られるという発想に基づいています。

「三方よし」も「先義後利」も、どちらもまず他者や社会に対して「義」を尽くし、正しい行動を取ることで最終的に自分にも利益が返ってくるという、持続的な経営や商売の姿勢を示しているのです。

現代における「先義後利」の意義

このような理念は、現代の企業経営においてもますます重要性を増しています。特に、SDGs(持続可能な開発目標)が広く認識される中で、企業は単に利益を追求するだけでなく、社会や環境に配慮した経営を行うことが求められています。環境に優しい製品の開発や社会貢献活動、透明な企業運営など、企業が「義」を果たすことで、長期的には信頼が高まり、利益がもたらされるというのは、「先義後利」の現代的な解釈とも言えるでしょう。

この「先義後利」の精神は、私たちが日々の仕事や生活においても取り入れることができるものです。人との関わりやビジネスにおいて、まず相手の立場や社会全体の利益を考え、それに基づいて行動することで、結果的に自分に返ってくるものが大きくなる。このような姿勢が、信頼関係の構築や持続的な成功につながるのです。

結論

「先義後利」という言葉は、時代を超えても有効な価値観です。短期的な利益を追うのではなく、まずは「義」を優先し、社会や顧客に対して誠実であることが、結果的に成功や利益をもたらします。日本の伝統的な商慣習である「三方よし」とも通じるこの理念を、現代のビジネスや個人の生活に取り入れていくことで、より豊かで持続可能な未来を築いていくことができるでしょう。

(この記事は、2016年4月4日にオフィスKojoのブログ「伝刻の詞」にエントリーしたものを再編集したものです。)


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