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構造化された学習プログラム vs 自発的な成長の促進 ~コーチングとインストラクショナルデザインの専門家による架空対談 その10~

ここまで肯定的なディスカッションが進んできていろいろなヒントが得られたのですが、一方で対立概念もあるのではないかと思われます。
高橋さんが、その点について切り込みました。
お二方の反応が気になります。

高橋純一さんの切り込み:

「これまで、インストラクショナルデザインとコーチングの融合が持つ可能性について議論してきましたが、IDが提供する構造化された学習プログラムと、コーチングが重視する自発的な成長の促進には、アプローチの違いがあります。ここでお二人に、構造化と自発性のバランスについて、どのように考えているかを議論していただきたいと思います。鈴木先生、まずはIDの観点から、構造化された学習の重要性についてお聞かせください。」

構造化された学習プログラムで学習迷子を防ぐ:

鈴木先生は、インストラクショナルデザインによる構造化された学習プログラムの効果について説明します。
「インストラクショナルデザインにおいて、構造化された学習プログラムは、学習者が効率的に必要な知識やスキルを習得するために不可欠です。特に、企業の研修などでは、限られた時間内で効果的に教育を行う必要があるため、体系的に設計されたカリキュラムが重要な役割を果たします。すべての学習者が同じ基準で同じスキルを習得できるよう、計画されたプログラムが必要です。構造化されたプログラムがあるからこそ、学習者は迷うことなく、目標に向かって確実に進むことができるのです。」

自分のペースで学びを進める:

一方で、佐藤先生は構造化された学習プログラムに関する懸念点を指摘します。
「鈴木先生がおっしゃる構造化された学習の重要性は理解しますが、私はコーチングの立場から、自発的な成長の促進が同じくらい重要だと考えています。個々の学習者が自分の内的動機に基づいて学び、成長することができる環境を作ることが、長期的にはより深い学習効果をもたらすと信じています。構造化されたプログラムは確かに効率的ですが、それが画一的になるリスクがあります。学習者が自分で考え、自分のペースで学びを進めることで、より深い理解と持続的な成長が可能になるのです。」

高橋純一さんの介入:

「お二人の意見には、それぞれ一理あります。鈴木先生の言う構造化された学習は、確実に成果を出すための強力な方法ですし、佐藤先生の強調する自発性は、学習者の内発的なモチベーションを引き出す上で重要です。では、構造化されたプログラムが持つ強制力と、自発的な学習の自由度をどうバランスさせるかが問題になるかと思います。お二人は、このバランスをどのように考え、実際の教育やコーチングでどのように実現していきますか?」

自分の興味やニーズに応じて学びを深める:

鈴木先生は、学習効果を高めるためには構造化は必須であり、その中でいかに自主性を担保するか、その観点で解説します。
「確かに、バランスが重要です。私は、構造化された学習プログラムの中に、選択肢を取り入れることで、学習者が自分の興味やニーズに応じて学びを深める余地を作ることが可能だと考えます。たとえば、基礎的な知識を全員に提供した後、応用的な部分では各自が興味のある分野を選択して学ぶことができるように設計することが考えられます。これにより、IDの強みを活かしつつ、学習者の自発的な学びを促進することができます。」

自分で学習計画を立てるプロセス:

佐藤先生は、鈴木先生の解説を受けて同意しつつ、さらに自発的な学習に繋げる観点で提言を行います。
「そのアプローチには賛成です。ただ、私はさらに、コーチングを通じて学習者が自分で目標を設定し、それに向けて自分で学習計画を立てるプロセスを支援したいと考えます。構造化されたカリキュラムの中で、個々の学習者が自分のペースで学び、必要に応じてコーチングを受けることで、より深い自己成長が促進されると考えます。また、コーチングセッションでは、構造化されたプログラム内で学んだ内容を、どのように自分の状況に適用するかについて考えさせることで、学習者が自分の学びに対する所有感を持てるようになります。」

高橋純一さんの総括:

「お二人の意見から、構造化された学習と自発的な成長の間には、必ずしも対立があるわけではなく、むしろ補完的な関係があることが分かりました。学習プログラムをしっかりと構造化しつつ、その中で選択の自由を提供し、さらにコーチングを通じて学習者が自らの成長を自覚できるようにすることが、効果的な学習を実現する鍵だと感じます。このバランスを保ちながら、未来の教育・ビジネス支援をより良いものにしていくために、私たちがどのような工夫をすべきか、今後も議論を続けていきたいと思います。」

このディベートでは、構造化された学習プログラムと自発的な成長の促進に関して、それぞれの強みとそのバランスの取り方について意見が交わされました。鈴木先生は構造化されたアプローチの有効性を強調しつつ、自由度を持たせる方法を提案し、佐藤先生はコーチングを活用して学習者が自ら学びを進めるプロセスを重視する立場を取りました。高橋さんは、この二つのアプローチが補完的であると総括し、建設的な解決策を導き出しました。

【登場人物や対談内容については、すべてフィクションです】

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