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OJTを成功に導くリーダーシップ:状況対応型と守破離の共通点


OJTを効果的に進めるためのリーダーシップの考え方

OJT(On-the-Job Training)を進める上で、効果と効率を高めるためには、適切なリーダーシップの発揮が欠かせません。特に、アメリカの行動科学者ポール・ハーシィと作家ケン・ブランチャードが提唱した「状況対応型リーダーシップ」は、部下や後輩の能力や意欲に応じた柔軟な指導方法を提案しています。このリーダーシップ論は、指導者が個々の学習者の習熟度や心理的状態を見極め、それに応じて最適な指導アプローチを選択することの重要性を強調しています。

状況対応型リーダーシップの概要

状況対応型リーダーシップの核心は、部下の習熟度と意欲の2つの要素に基づいて、最適なリーダーシップスタイルを選択することにあります。具体的には、以下の4つのリーダーシップスタイルが提唱されています。

  1. 指示型(Telling): 部下が初心者であり、スキルが十分でない場合に有効です。このスタイルでは、指導者が詳細な指示を出し、タスクの進め方を具体的に示します。

  2. 説得型(Selling): 部下がある程度のスキルを持っているが、自信が不足している場合に適しています。指導者は、指示を出しつつも、理由を説明し、部下の意欲を高めます。

  3. 参加型(Participating): 部下が十分なスキルを持ち、自信もあるが、モチベーションが低下している場合に用います。このスタイルでは、指導者が部下と協力して問題を解決し、意思決定に参加させます。

  4. 委任型(Delegating): 部下が高いスキルと意欲を持っている場合に最も効果的です。指導者は、タスクの大部分を部下に委任し、自主性を尊重します。

このように、状況対応型リーダーシップは、状況に応じて指導方法を柔軟に変えることを推奨しており、OJTにおいても非常に有効なアプローチとなります。

「守破離」との共通点

興味深いことに、日本の伝統的な修業法「守破離」にも、状況対応型リーダーシップと類似した考え方が見られます。「守破離」とは、武道や伝統芸能における修行の理想的なプロセスを示すもので、「守(しゅ)」、「破(は)」、「離(り)」の3段階で構成されています。

  1. 守(しゅ): 師匠の教えを忠実に守り、型を習得する段階です。この段階では、指示型リーダーシップが適しています。弟子はまだ初心者であり、まずは基本をしっかりと身につけることが求められます。

  2. 破(は): 基本的な型を習得した後、自分なりの工夫を加え、新たな型を形成する段階です。この段階では、説得型や参加型のリーダーシップが効果的です。弟子は自分の考えを持ち始め、指導者とともに新たな挑戦を始めます。

  3. 離(り): 自分のスタイルを確立し、他者に教えることができる段階です。この段階では、委任型リーダーシップが最も適しています。弟子はすでに高いスキルと自信を持っており、自分の道を進むことが許されます。

この「守破離」のプロセスは、状況対応型リーダーシップと同様に、学習者の成長段階に応じた指導が重要であることを示しています。

山本五十六元帥のリーダーシップ哲学との関連

さらに、状況対応型リーダーシップの考え方は、山本五十六元帥の有名な言葉にも反映されています。彼の言葉「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ」は、リーダーシップの本質を見事に表現しています。この言葉は、部下や後輩に対して、まず模範を示し、次に説明し、実際に行動させ、そして結果を評価し、フィードバックを与えるというプロセスを示しています。

これは、まさに状況対応型リーダーシップの実践であり、部下や後輩がどの段階にいるかを見極め、それに応じた指導を行うことが求められるという考え方と一致しています。また、このプロセスは、学習者が次第に自主性を持つようになることを目指しており、リーダーシップの役割を段階的に変えていく必要性を強調しています。

まとめ

OJTを進める上で、効果的なリーダーシップは欠かせません。状況対応型リーダーシップは、部下や後輩の能力や意欲に応じた柔軟な指導方法を提供するための強力なツールです。また、日本の「守破離」や山本五十六元帥の言葉にも通じるこのアプローチは、学習者の成長段階に応じた指導が重要であることを再確認させてくれます。

効果的なOJTを実現するためには、指導者自身が柔軟であり、状況に応じて適切なリーダーシップスタイルを選択することが求められます。このような考え方を取り入れることで、OJTの効果と効率を一層高めることができるでしょう。

(この記事は、2019年11月20日にオフィスKojoのメルマガ「KOJO井戸端会議」に掲載したものを再編集したものです。)

※この記事は、弊社のメルマガ「KOJO井戸端会議」の過去の記事からピックアップし、note用に再編集したものです。
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