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企業における人材開発を研究する研究者からの質問 ~コーチングとインストラクショナルデザインの専門家による架空対談 その17~

インストラクショナルデザインやコーチングではない切り口で企業の人材開発現場のフィールドワークなどを元に人材開発の在り方を研究する原田教授が質問するようです。
異なる分野の専門家の参戦に会場もどよめきます。

原田教授の質問:


「本日は、非常に興味深いディスカッションを聴かせていただきました。私は、企業における人材育成や組織開発を専門としていますが、特に現場での実践に即したアプローチを重視しています。これまでのお話の中で、インストラクショナルデザイン(ID)とコーチングの融合が何度も議論されましたが、実際の現場でこれをどのように具体的に実装し、かつ現場の抵抗をどう乗り越えるかについて、もう少し詳しくお聞かせいただけますか?」

現場の文脈に合わせたアプローチを設計:

まず鈴木先生が、この問いに答えます。
「原田教授のご質問は、現場での実践において非常に重要なポイントをついていると思います。インストラクショナルデザイン(ID)とコーチングの融合を現場で実装する際、最も重要なのは、現場のニーズをしっかりと把握し、現場の文脈に合わせたアプローチを設計することです。

  1. 現場との対話を重視: IDのプロセスにおいて、まず初めに現場の声をしっかりと拾うことが不可欠です。現場のリーダーや実際に教育を受ける社員と対話し、彼らが直面している課題や期待される成果を具体的に把握します。このフェーズで、現場が何を求めているかを正確に理解することが、その後のプログラム設計の成功に直結します。

  2. カスタマイズされた学習プログラム: 現場のニーズに基づいて、IDの原則を用いてカスタマイズされた学習プログラムを設計します。例えば、業務に直接関連するシナリオやケーススタディを取り入れた実践的な内容を構築することで、現場に即した学びを提供します。これにより、現場の抵抗を減らし、学習内容が日々の業務に直結することを社員に実感させることができます。」

主体的な学びへの動機づけ:

佐藤先生は、学びの姿勢が重要であり、そのための動機づけが要であろうと述べます。
「現場での実装においては、コーチングが非常に重要な役割を果たします。現場の抵抗を乗り越えるためには、社員一人ひとりが自分の学びに対して主体的に取り組むことを促す必要があります。

  1. 現場リーダーを巻き込む: まず、現場のリーダー層を巻き込むことが重要です。彼らがコーチングの価値を理解し、実際にそれを実践できるようサポートすることで、現場全体にコーチング文化を浸透させることができます。リーダーが自らの経験を基に社員を支援する姿勢を示すことで、社員も学びに対して前向きな姿勢を取るようになります。

  2. 継続的なフィードバックとサポート: 学習プログラムが実装された後、定期的なフィードバックセッションを設け、社員が直面する課題について話し合います。これにより、現場の実情に応じた柔軟な対応が可能となり、社員は自分がサポートされていると感じることで、学びの定着と実践への応用が進むでしょう。」

ボトムアップアプローチで現場の抵抗を乗り越える:

高橋さんは、二人の見解をまとめつつ、持論を述べます。
「原田教授の現場に即したアプローチへの関心は非常に共感できるものです。現場の抵抗を乗り越えるためには、トップダウンではなく、現場からのボトムアップアプローチが効果的です。具体的には、次のようなステップを提案します。

  1. 現場の声を取り入れたパイロットプログラムの導入: 最初から全社的に導入するのではなく、まずは一部の現場でパイロットプログラムを導入し、その効果を測定します。この際、現場からのフィードバックを積極的に取り入れ、プログラムの改善を行います。これにより、現場のニーズに合致したプログラムが完成し、他の部門でも展開しやすくなります。

  2. 成功事例の共有: パイロットプログラムが成功した場合、その事例を社内で広く共有します。具体的な成果や現場の声を伝えることで、他の部署や社員にも新しいアプローチへの信頼感を醸成し、抵抗感を減らすことができます。

このように、現場を巻き込み、現場のニーズに即したアプローチを継続的に行うことで、インストラクショナルデザインとコーチングの融合が現場に根付き、企業全体の学びの文化を育むことができると考えます。」

このやり取りでは、原田教授が現場での実践に即した具体的なアプローチについて質問し、鈴木先生と佐藤先生がそれぞれインストラクショナルデザインとコーチングの視点から具体的な手法を提案しています。高橋さんはこれを総括し、パイロットプログラムの導入と成功事例の共有によって、現場の抵抗を乗り越えるための具体的なステップを示しました。

原田教授の反応:

「鈴木先生、佐藤先生、高橋先生、素晴らしいご回答をいただき、ありがとうございます。お三方が指摘された現場との対話の重要性や、カスタマイズされたアプローチ、そしてパイロットプログラムの導入という点は、まさに私が日々現場で感じている課題に対する有効な解決策だと思います。

特に、鈴木先生がおっしゃった現場の声をしっかりと拾うことの重要性は、私の研究でも非常に強調している点です。現場で働く人々のニーズを無視しては、どんなに優れた理論やモデルも効果を発揮することは難しいと感じています。また、佐藤先生が指摘された現場リーダーの巻き込みは、リーダーが単なる管理者ではなく、学びを促進するファシリテーターとして機能するために非常に重要です。

そして、高橋先生がまとめられたパイロットプログラムの導入と成功事例の共有というアプローチは、まさに現場に根付かせるための実践的なステップであり、特に中小企業やリソースが限られている組織でも取り組みやすい方法だと感じます。

私自身も、企業の現場での実践を重視する立場として、これらのアプローチをさらに深く研究し、現場での効果を実証していきたいと考えています。今日のディスカッションを通じて、現場の声を大切にしながら、インストラクショナルデザインとコーチングをどのように統合し、実際に効果的な人材育成を実現していくかというヒントを多く得ることができました。本当にありがとうございました。」

この想定では、原田教授は、三人の専門家が提案した現場に即した具体的なアプローチに非常に共感し、それが現場で実践可能なものであると高く評価しています。教授は、これらのアプローチを自らの研究や現場での実践に活かしたいと考え、感謝の意を表しています。

【登場人物や対談内容については、すべてフィクションです】

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