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~ショウタロウのつぶやき~

試験に落ちる、病気で倒れる…望み通りではなくても、人生を楽しむ考え方。まずは役に立つ、役に立たない、という発想から自由になる心得

それだけでかまわない

三食をつましく作って食って、近所を散歩して俳句作って、あとは家にある本とCDを消化するだけの人生で別に良いのです。
これは、台湾文学の翻訳者である天野健太郎さんの言葉です。
その様な生き方を良しとしない人はいるかもしれませんが、働かない訳ではありません。贅沢しないで好きなことをして生きる事。
他にどんな人生を生きるというのでしょうか?
実際には天野さんは、これ「だけ」ではなく、翻訳者として多くの仕事をされました。7年間に12作の翻訳を出版しております。呉明益の『自転車泥棒』の翻訳が出版された5日後、天野は47歳で亡くなりました。
旧約聖書では何事も、例えば、生まれるにも、死ぬにも「時」があって、人が苦労してみたところで何になろうとあります。
確かに、自分で何時?何処で?この世に生まれるかを決める事は出来ませんし、長生きしたいと思っても、何時?何処で?どのように死ぬかを決める訳にはいかないものです。

喜び楽しんで一生を送る事です
聖書には続けて〈人間にとってもっとも幸福なのは
喜び楽しんで一生を送ることだ〉とあります。
プラトンも、正しい生き方とは、一種の遊びを楽しみながら生きることであると言っているそうです(『法律』)。
とはいえ、生きることは苦しい。苦しい事も、悲しい事も一度も経験しないで生きることは出来ません。
人生は、決して順風満帆ではなく、行く手を阻むことは度々起こります。
一生懸命勉強しても試験に合格出来ず、願っていた学校に入学出来ない事、家庭の事情で諦める事もあるでしょう。思いがけず病気で倒れる事も事故・災害に遭う事もあるでしょう?
それでも、そんな人生を楽しんで生きる事は出来ると言います。

訳もなく惹かれるもの
どんな事も楽しむためには真剣でないといけないのです。
しかし、自分が望んだ通りの人生を送れなくても、深刻になることはありません。
〈誰でも、“ふっ“とした時に、訳もわからないまま、何かに惹かれてしまうことがあるらしい〉
(天野健太郎「あいまいな国境の歴史(抄)」前掲書所収)
訳もわからぬまま惹かれたものに夢中になれれば、何があっても深刻にならないで生きられるのです。訳もなく惹かれるものは趣味といわれますが、趣味といえるためには条件があります。
まず、役に立つ、立たないという発想から自由にならなければならなりません。どんな事でも、役に立つか?とか意味があるか?とか問わないと気がすまない人がおられます。 趣味に理由は必要ではないのです。

全ての写真をみる事です
趣味がなくても生きていけます。役に立つか?立たないか?といえば、役に立ちません。役に立つか?どうかばかり考えていては、趣味に没頭することは出来ません。面白くなくなりませんか?
次に、何か結果を出さないといけないという発想から抜け出す事です。
専門家といわれる位、究めると面白くなるモノです。好きでたまらないので打ち込んだ結果、専門家の様になる事はありますが、究める事を目標にすると、結果を出せないと、たちまちつまらなくなるモノです。
これだけの時間と労力をかける価値はないのではないかと思うようになるからです。
もっとも、それほど時間も労力もかけないうちに断念する事もあります。
定年後、これからは趣味に生きようと思って、高価な一眼レフカメラを買ってみても、すぐに使わなくなる事があります。
シャッターを押しさえすれば写真は撮れるものと思っていた人は、写真は、思いの外、難しい事にすぐに気づくでしょう?
写真の撮り方の関連書籍購入や調べると、構図にさえ注意すれば良い写真が撮れると思うかもしれませんが、撮ってみたい被写体が目の前に現れた時、理論は吹き飛んでしまいます。シャッターを切らなければチャンスを逸してしまうからです。
誰かに誉めらなければ気が済まない人は、写真を撮っても誰からも誉めて貰えないのでガッカリする事になるかもしれません。人から認められなくても、写真を撮ること自体が面白いと思えなければ続きません。
趣味に理由は必要ではありません。天野さんが、言う様に「わけもわからないまま」惹かれるものでなければ、楽しくなれません。
どうでもよくなる
自分の好きな事になると無心になって嫌な事を忘れれられたり、スッキリしたり、もっと楽しくなり更に工夫して楽しさが倍増してみたり、同じ同志に遭えたりすると話が、弾み良い方向に向かって行く事が多々あります。
仮に失うモノが、有っても自分自身は、些かも無駄だとは思わないモノです。
“ふっ”と合理的に考え計算してしまうと、「こんな事をしていて良いのか?」と考え、生きる喜びは失せてしまうのです。

※この話は、『悩める時の百冊百話-人生を救うあのセリフ、この思索』(中央公論新社)岸見一郎さん書籍の一部をショウタロウが編集したものです。

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