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小説を読むのが怖くなった

中学生の頃、国語の時間で登場人物の心情を考える機会があった。人の気持ちを考える楽しさを知ったことがきっかけとなり、それ以来、僕は読書をするようになった。本を読むスピードが遅いので多くの本を読めるほうではないのだが、中学3年生〜高校2年生の頃はわりと読書をしていた時期だった。

読むジャンルは基本的に恋愛小説。
恋に恋していた時期だったからという理由もなくはないのだが、人の感情が重点的に描かれている点で恋愛小説に勝るものはないと思う。
相手のことを想う愛情や優しさを小説を通して知り、そういう優しさを自分も身につけられれば、魅力的な人間になれると信じている。
恋愛小説からは生き方を学ぶことができる。
だからこそ、僕は恋愛小説を好んで読んでいた。

小説を読む時に、僕は登場人物に感情移入をしてしまう。
たぶん国語の授業の癖が残っているんだと思う。登場人物の心情を考えるためには、その人物の視点から出来事や物事を考えてなくてはならないから、その名残で小説を読んでしまう気がする。

登場人物に感情移入するということは、心情を考える楽しさに気づかせてくれる反面、小説内の出来事を自分の身に起こったように感じてしまうことがある。
片想いしていた相手と結ばれる物語であれば幸せな気持ちで満たされるのだが、望ましくない出来事が登場すると様々な感情が身体を駆け巡る。

それが、自分の過去を呼び起こすことにも繋がる。

あまり詳しいことは述べないが、僕は高校生の頃に大切に思っていた人とイザコザが起こり、それがきっかけで人間不信になり、人と関わることがとても怖くなった。
相手のことを信じても、いつか自分のことを裏切っていなくなってしまうんじゃないか。
そう考えてしまうくらい本当に怖くて、当時は人と関係を築きたくなかった。

現在は落ち着いてきているが、心にはぽっかりと穴が空いてしまい、その心を抱えながら生活している。
それによって、自己防衛機能が過剰に働くようになった。
何が起こるようになったかというと、小説やドラマ、映画を受け付けなくなるということだ。
物語の中には「裏切り」とか「人を騙す」場面がある可能生があり、それに遭遇すると過去の自分を想起してしまう恐れがある。
「この中で嘘をついている人は誰だ!?」とか、「あなたを誘惑する美女を信じるか信じないか!?」みたいな物語は拒絶反応が起こってしまう。書いている現在でさえ苦しくなる。加えて、男女を奪い合うといった恋愛シミュレーション番組も考えるだけで怖くなる。

もちろん、全ての小説がそのような内容ではないということは理解している。素晴らしい作品もあるし、その作品たちを否定するつもりは全くない。
だけど、いつ、どの瞬間に過去を掘り起こされるかわからない。
今後どうなるかはわからないが、少なくとも今は小説を読む勇気が湧かない。過去を思い出すのが怖いから。

小説には大きな力がある。
その物語で人生を変えることもあるし、人の命を救うこともある。
作家が綴った綺麗な表現で恍惚な気分になることもあるし、感動を呼ぶという素敵な一面があることも僕は知ってる。

だからいつか、純粋な気持ちで読書を楽しめる日が来るといいな。

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