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Policy Design School DAY1 / 内省 INTROSPECT

こんにちは、STUDIO POLICY DESIGNです。

前回の記事では、経産省版デザインスクール”Policy Design School”について、ご紹介させていただきました。

Policy Design Schoolは、デザイン手法を用いた政策立案プロセスを学び・実践する、経済産業省の職員を中心としながら、民間企業等の参加者も交えた研修・政策立案実践プログラムで、先日2021年8月7日からスタートし、12月までに全10回のスケジュールで今後実施していきます。
今回は、このPolicy Desigh Schoolのプログラム全体の構成第1回のコンテンツをご紹介します。

Policy Design Schoolの全体カリキュラム

PDSプログラムの流れ

政策を立案する際は、通常は、配属された部署の所掌の範囲内で課題を設定し、政策を立案します。
しかし、本プログラムでは、政策課題が最初から与えられることはありません。プログラムの前半(DAY1-6)では、自身のこれまでの人生を通じた自身のビジョンを作り、そのビジョンに基づき、日本や世界の未来像を描き、その未来像を実現するために取り組むべき課題を発見します。

このようなプログラム設計にした理由は、デザイン思考では、一般的にダブルダイアモンドと呼ばれるプロセスでプロジェクトを進めるのですが、何が問題となっているか問題を定義してから、解決策を作ることになります。

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当たり前のように思えるかもしれませんが、行政のみならず、様々な仕事においても、事前に課題が設定され、又は世の中や組織内で課題と思われているものが既に存在し、それを解くことが仕事になっていることは多いと思います。
例えば、「AIの活用が進んでいないことが課題」、「職員の離職率が多いことが課題」などの職務課題が与えられたとして、特にその課題設定は本当に正しいのか、と疑うことは通常少ないように思います。
しかし、実は、問題の本質は別のところにあって、闇雲にAIを使うのではなく社外の専門家を活用する方がいいかもしれませんし、無理に離職を止めるよりも、そもそも組織をコンパクトな事業体に改めることが本質的にいいかもしれません。

このためデザインプロセスでは、人々や人々を取り巻くシステムを徹底的に観察・調査し、本質的な問題は何か、誰のなんの問題を解決しようとしているのか、定義することに、まずは注力します。このことが、この先の解決策を作るプロセスにおいて、極めて重要な土台となります。

Policy Design School DAY1 "INTROSPECT 内省"

このような考え方から、先述のとおり、DAY1のプログラムは、参加者自身のビジョンを作ることからはじめました。
行政官の多くの仕事は、上位の行政機関や上長からの指示、所管団体からの要望、メディアからの批判、国会での論戦などなど、いろんな方向から、ともすれば相矛盾した指示や批判、厳しい指摘等々が飛び交い、これを調整して、解決策を導くと言ったことが多いものです。このこと自身も、民主主義の根幹をなす大事な仕事ではありますが、新しい政策を自ら考え、産むということには必ずしもつながりません。

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このため、自ら政策を生み出す起点を作るべく、行政官自身が、自身のこれまでの人生を振り返り、自身の想いを再確認するワークショップを実施しました。
具体的には、ポジティブ心理学という心理学の一分野に着想を得て、自分の子供の頃と、社会人になった後に、時間を忘れて没頭したことや、大切にしてきた人間関係、ポジティブな感情を抱いた時などを、様々な画像・イラストや自身の撮影した写真で表現してもらい、その取り組みを通じて、自分の想いを掘り起こしてもらいました。

ポジティブ心理学とは、個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する心理学の一分野である。精神疾患を治すことよりも、通常の人生をより充実したものにするための研究がなされている。主観的に幸福な人は、そうでない人に比べて、生産的、行動的、健康で、友好的で、創造的になると研究されている。
引用:wikipedia

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表現してもらった写真や画像を元に、対話をすると様々なことがわかります。
例えば、「チャンプロード」というバイク・車雑誌の画像を貼り付けた方は、「これは昔大学時代の恩師から紹介された雑誌で、自分はバイクに乗ることはないけれど、自分のコミュニティは硬直的なので、全く接したことのないこういう世界があることを知った方がいいとのアドバイスをもらったことがある。それが自分の生きる指針になっていると感じた。」と話していました。
画像ひとつから、自分の生きてきた指針、変わってきたこと、変わらないもの、いろんな物語が溢れてきます。

行政官が自ら定めるビジョンと肩書き

それぞれの参加者には2人1組でお互いの物語を引き出しあってもらいました。
その上で、次は、行政官や参加者それぞれのビジョンとそのビジョンを表す新たな肩書きを作ってもらいました。

新たな肩書きというのは、課長補佐とか企画係長といった、行政機関から与えられた職務を表すものではなく、自分が何をなしたい人間なのか、行政官なのかを表すものをつけてもらいました。

例えば、
・エネルギーエコシステム プロデューサー
・SpotLighter
・時代の繋ぎ手
・People & Culture デザイナー
・party fashionable 哲学者
・破壊的DXゴリラ
などなど、ちょっとニヤッとしてしまう面白いものもあり、参加者それぞれの個性もよく反映した肩書きをつけられました。

また、肩書きのみならず、何をなしていく人なのか、これまで生きてきた中で感じたことも振り返ってもらいながら、それぞれのビジョンステートメントを作成してもらいました。
例えば、先ほどご紹介した、バイク・車雑誌の画像を紹介していた参加者のお一人は以下のようなステートメントを作成されています。

<肩書き>
Parallel Co-creator
<ビジョンステートメント>
長崎県で生まれ育ったが、地元や学校の固定的・競争的な人間関係・環境に違和感。自分と異なる時間・空間・世界に思いを馳せることに関心を持ち始める。
杉原千畝氏の伝記を読んだことをきっかけに、自分自身が他者に対してどういう貢献ができるのかということを模索。
特に社会人になって以降は、美大生や研究者など、これまでに出会わなかったような人と人を繋ぐ場所を作り、そこで生まれる価値やその過程をデザインするプロセスに自分自身の強みを生かしていくことに注力。
これまで出会わなかったような点同士を繋ぎながら、余白をはらんだ未来を作っていきたい。

読んでいただけるとわかると思いますが、彼の生きてきた環境や思い、意志というものが、所属組織の肩書きなどとは違い、よく伝わってくるステートメントだと思います。

次回以降のプログラムでは、このステートメントを出発点にして、それぞれの参加者が、取り組んでいく課題を自らの意志で選び取り、政策立案に挑んでいく構成にしていく予定になっています。

今回ご紹介したプログラムの内容の詳細は、参加者の感想も踏まえて、以下のPodcastで配信しています。是非本記事と合わせてご視聴ください。

<Apple Podcast>

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