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わたしのブックサンタ

今年のクリスマス、初めてブックサンタに参加しました。
私はこの冬までブックサンタの取組を知りませんでした。
いつも利用している本屋も参加してますし(比較的目につく場所にポスターが貼ってありますし)、本に関わる情報なので、知らなかったというより、これまでも目にしたけど、あまり気にしていなかっただけかもしれません。

2017年のスタート以来、賛同して下さる著名人・団体が年々増えており、2023年度のパートナー書店は昨年から900店舗も増え、1,683店舗となりました。過去6年間で寄付された本の数は累計140,435冊。

https://booksanta.charity-santa.com/

親の経済状況や教育観と、こどもの学力や将来の賃金水準に関係があることは周知のことですが、そのことから、「子供の貧困対策に関する大綱」では学習支援策の必要が掲げられています。
そうした施策に対しては、学力と遺伝的要因、社会的要因の影響具合とか、学力しか評価軸のない能力主義観で成り立つ社会への態度の持ち方とかによって、人によって趣きが変わってきて、案外と一枚岩で進まないものです。そんなことを考えていたタイミングであったからか、ブックサンタにフックしました。

わが家は裕福ではなくて、両親共働きではありましたが、稼ぎが多いというわけではなく、共働きで家計を保っていました。
今ではなつかしい鍵っ子で、放課後の夕方は親が帰ってくるまでひとり留守番をしていました。
家族そろって外食とか旅行をしたことはなかったです。(外食や旅行自体がゼロだったわけではなく、どちらかの親とだけでした。)
ただなぜだか、本は買ってもらえました。
こどもの感覚ですが、おそらく月平均2~3万円くらいで、当時のわが家の経済水準を思うと、かなりの負担であったはずです。私が求めた本以外も、文学全集や、辞典の全集など、たくさんの本に囲まれて育ちました。
人気のテーマパークに行ったことはありませんでしたが不満はありませんでした。
日曜日。父親にとなり町の大きめの書店に連れていってもらって、本を買ってもらって、(ローカルの)百貨店の食堂で(ぺらぺらの)かつ丼を食べるのが最高の楽しみで、それで満足でした。

ある時、父が重い病に臥せって働くことができなくなったため、その後しばらく本屋に行けなくなりました。母は、2人の子どもを育てながら、自宅から遠く離れた大学病院に居る父を頻繁に見舞い、パートで家計を支えていました。当時の母にのしかかる負担は一体どれほどのものだったでしょうか。成人した今となっても、その苦労は想像がおよびません。でもそんな時でも本を買ってもらえました。さすがに量はかなり少なくなっていたと思いますが。

”本を買い与える”
それが親たちが信じた教育法なのか?子育て論なのか?
とにかく、たとえ苦しくても揺るがない信念であったのだろうと思います。

親の経済力はこどもの学力に影響しています。
たいてい人間の経済力は有限で、そのなかでわが子に対してどんな配分で何を提供するかは、それは決まった答えのない問題です。
わが家の信念は正しかったのか、(私は満足していますが)なんとも言い切れないですし、価値観の押し付けは不毛です。
だから、その足らざる部分を、誰かが、社会が、補うことができることには、私は大いに意義があると思うのです。
私は私の育てられた信念にしたがって、読書の力(ちから)を信じています。
なのでブックサンタに参加して、どこかで本を必要とする家庭に、私の選んだ本が届くことを、心からうれしく思います。
同じように、様々な人々が、それぞれ自分にできる、好きなやり方で、こどもの支援に参加していける、そうした社会づくりを目指していかなければならないとも思いました。

なお、私の選書は『かがみの孤城』にしました。
普段ほとんどフィクションを手に取らないのですが、職場で勧められて出会った本です。この偶然の出会いを、登場人物たちと同じ年代の方に届けられたら、本当にうれしいです。


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