地方の暮らしをもっと豊かに。地域通貨がもつ無限の可能性
私はサツドラホールディングス(株)のインキュベーションチームという部署に所属している村上(むらかみ)です。
初投稿ということで、書きながら緊張しておりますが(汗×200)
見ていただいた方が、少しでも興味・関心を持っていただければ嬉しいです。
世界の中でも日本は人口減少が非常に進んでおり、日本の中でも北海道は特に深刻です。
さらに人口減少だけではなく、高齢化伸び率全国1位、特定健康診査受診率全国ワースト1位など様々な課題が多くある地域で、まさに世界の課題先進地域。
このような北海道で、様々な課題を解決しようと私たちサツドラホールディングスはドラッグストア事業を中心としながらも、分野を飛び越えた様々な機能を持ったグループ会社を擁し、北海道の課題解決に向かってビジネスを展開しています。
今回はそんな私たちが取り組む「地域通貨」の推進事業についてお話できればと思います。
地域通貨?インキュベーション?村上?となっている方がほとんどだと思いますので自己紹介、チーム紹介をした上で地域通貨の取組みについて書いていければと思います。
インキュベーションチームの詳細については同じチームの三浦さんの記事がありますので、そちらをご覧ください
地域通貨とは?
「どうぶつの森」というテレビゲームをやったことはありますか?
このゲームの中では、果物や魚を獲って、これを巨大なタヌキが営む怪しいお店で売ると「ベル」という通貨をゲットできます。
そして、このベルは家具の購入や家のローンの返済に充てることができるのです。
しかし、ゲームという領域の外では「ベル」は使う事ができません。ニンテンドースイッチを持って近所のコンビニに行っても、ゲーム内の「ベル」ではおにぎりもお茶も買えませんし、当然家のローンの返済もできません。
また、皆さんご存知「人生ゲーム」でも独自の通貨「ドル」が登場します。
「ドル」といっても、これをたくさん集めたところで、アメリカでも日本でも何も買えません。カラフルなお札(おさつ)が集まれば「人生ゲーム」では豪邸が買えても、ゲームの外では何も買えないのです。
そういえば去年、お店で働いていた時、人生ゲームのお金を自動支払機に詰まらせたお客さまがいて困ったことがありましたが、当然、それでは何も買えないのでエラーになります。
これが地域通貨です。
地域通貨とは一般に「特定の地域に限定して利用できる通貨」と定義されます。「ベル」は「どうぶつの森」というゲーム内に限定して利用できる地域通貨ですし、「ドル」も「人生ゲーム」のボード上という地域に限定して利用できる地域通貨の一種と言えるのです。
私たちはQUALITY HOKKAIDO一般社団法人に参加し、北海道で利用できる地域通貨の導入を、多くの道内企業の皆さんとともに目指しています。
仕組みは「ベル」や「ドル」と変わりません。北海道の中に限って利用できる通貨を作ろうと活動しているのであり、ゲーム機から北海道に、ボードから北海道に、エリアが広がっているにすぎません。
なぜ地域通貨なのか
ところで、北海道が抱える大きな問題のひとつにお金の流出があります。
どういうことでしょうか。
北海道は道外にジャガイモや牛乳、ホタテといった沢山の物を売っています。観光客も大勢やってきて、北海道の物を買っていきます。外に物を売ったり、外から来た人が道内で物を買えば、道内にはたくさんのお金が集まります。実は北海道は、多くのお金を道外から集めているのです。
しかし、実はそれと同じくらい、道外へ投資をしています。通販で道外から物を買ったり、道外に買い物に出かけたり。
道外の物を買うということは、支払いのために道外にお金が出ていくということと同じです。利益は当然、道外の会社のものになります。こうして、多くのお金が道外に出てしまっています。せっかく外から集めたお金が、外にそのまま出ていくので、北海道全体ではなかなか豊かにならないのです。
いつまでたってもお金が貯まらずに外に流れ出てしまうこの現象は、専門的には「穴のあいたバケツ(漏れバケツ)理論」とも呼ばれ、地方衰退の原因と言われています。
お金の集まるところには仕事が生まれ、仕事のあるところには人が集まります。逆に言えば、お金が出ていく場所からは仕事が出ていき、仕事が出ていけば人が出ていく。地方の衰退はこうした悪循環から起こるのです。
地域通貨はこうした問題への切り札として注目されています。
理由は簡単。地域通貨は絶対に流出しないからです。「ベル」はゲーム機から流出しません。必ず、どうぶつの森の世界だけで使われます。人生ゲームの「ドル」もゲームの世界だけで使われます。同じように、北海道の地域通貨も北海道の中だけで使われ、外には出ていかない。地域通貨という水は、バケツから流れ出ることなく貯まっていくのです。
非常にシンプルですが、私たちが地域通貨を推進する理由のひとつは、ここにあります。
北海道で生み出されるお金や、北海道に入ってくるお金を地域通貨に変換し、北海道の中で使い、そのお金をもとにより良い北海道をつくり、より多くのお金を集める。
この好循環が実現されれば、北海道には多くのお金が集まり、私たちの生活はもっと豊かになります。仕事も生まれ、人も集まるでしょう。
壮大な話ですが、目指す姿はそこにあります。
地域通貨が抱える課題
もちろん、課題も多くあります。
ひとつは、いかに普及させるかという課題です。
北海道民は日本、あるいは世界の中でも最も郷土愛が強いと言われています。地域通貨が浸透しやすい環境だとも言えますが、一方で、使う側からすれば、北海道でしか使えない地域通貨は不便とも言えます。どうすれば喜んで円ではなく地域通貨を使ってもらえるのか。どうすれば普及するのか。これは重要なテーマでしょう。
ふたつ目は、いかに取り組みを継続するかという課題です。
これまで、多くの地域通貨が生まれては消えて行きました。地域通貨をただ発行し、使ってもらうだけでは、発行する側には何も利益がないからです。地域通貨が普及して、北海道が豊かになり、消費が活発になったり、人が集まるようになれば、道内を拠点に活動する企業にとっては大きな利益になります。しかし、最初はそううまく行くわけではないので、地域通貨の継続性は課題になってくるはずです。
QUALITY HOKKAIDO一般社団法人では具体的な地域通貨の仕組みだけでなく、こうしたテーマについても議論が進められています。
地域通貨を通して目指す社会
最後にもう一つ。
これまで、地域通貨は北海道発展の切り札だというお話をしてきました。ただ、地域通貨にはもうひとつの可能性があると思っています。それは地域通貨がお金のイメージや概念を転換するのではないかという可能性です。
「おぬしもワルよのぅ」「いえいえお代官様ほどでは」というセリフに代表されるように、私たちがお金を受け渡すという行為に持っているイメージは決して良いものではありません。小さいころ、お手伝いをしておこづかいをもらった時には、何も感じていなかったのに、私たちは、いつのまにかお金に対して「生々しい」イメージを持っているのです。
地域通貨はこうした生々しいイメージを持たないお金として世に出回る可能性を秘めています。
地域の除雪といった地域貢献をしてくれた人に対してお金でお礼の気持ちを伝える。
素敵な接客態度だったレストランの店員さんにお金でお礼の気持ちを伝える。
「現ナマ」だと生々しいけれど、地域のために作られた地域通貨だと少し抵抗感が減ります。
他にも、今のお金は、使うと自分の財産が減るような気がして、ちょっと買うのを躊躇しちゃうという場面もあります。
でも、地域通貨を使うことで北海道のためになる。そう思えば、今よりもお金を使おうという気になりやすいかもしれません。
こうした意味で、地域通貨は、お金のイメージを「喜んで使うもの」に変える可能性があるのです。
ここら辺の詳しいお話や、QUALITY HOKKAIDO一般社団法人の取り組みの詳細については、また次の記事でお話ししたいと思います。
長くなりました。また次回お会いしましょう!