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地下鉄とチュロス

少しばかり英語に慣れたせいか、churroが名詞で複数形がchurrosになっているのにも関わらず、我々日本人がチュロスと呼んでいるのに違和感を覚える。かと言って、チュロスで思い出すのは東京ディズニランドで食べるフレーバーつきのものや、ミスタードーナツで食べる涙型のあれ。
メキシコでは朝食の定番メニューのチュロスも、ニューヨークでは立派なスナック(間食)として存在感がある。ホットドッグやプレッツェルがニューヨークを象徴する手軽なスナック(間食)として、チュロスもそれに近い存在な気がするのは、地下鉄でよく目にするからだろう。
ニューヨークの地下鉄では、ヒスパニック系の女性が手押し車を押して商売をしているのに出くわす。手押し車には、細長いチュロスとフルーツが山盛りに積まれていて、駅のホームや乗り換えの通路で通行人や観光客のおやつになっている。混雑した電車を降りてチュロスの手押し車を見ると、いろんな人種がいろんな理由で生きているニューヨークを感じ、愛おしくなる。味はすごくおいしいとは言えないが、忙しないニューヨークの地下鉄で食べる砂糖いっぱいのあまーいチュロスは、なんだかほっとするのだ。
たっぷり砂糖がかかったチュロスは3本で5ドル、茶色い紙袋に入れてくれ、みるみる油が染みてくる。フルーツを頼むと真っ赤なチリパウダーをフルーツが見えなくなるくらいかけてくれるが、実はこのスパイスはそんなに辛くない。
チリパウダーとは言うものの、辛さよりもしょっぱさとライムのさわやかな酸味が味の大半を占めて、食べやすい。メキシコ人が大好きなスパイスらしい。肉類、サラダ、フルーツはもちろんのこと、アイスや飲み物、何にかけてもおいしいメキシコの調味料Tajin(タヒン)のことは、いつかどこかで紹介したい。
よく通る道にチュロスを売るカフェを見つけてからは、脳みそが疲れているときにチュロスを買うようになった。
動物性の食材を使わないビーガン仕様かつグルテンフリー、と多様性に配慮されたニューヨークらしいチュロスは3本で8ドル。別売りのディップソースは、定番のチョコレートをはじめ、ラベンダーホワイトチョコレートという個性的な味も含め10種類以上ある。
いつもは袋から覗く3本のまっすぐなチュロスと目が合うところだが、ハート型に積まれたチュロスがぎゅうぎゅうと紙袋に入っていた。バレンタイン用だったかもしれない。ハート型がかわいくて嬉しくなった。あつあつの揚げたてチュロスを提供してくれるので、アイスにつけてもおいしい。
揚げた上で砂糖たっぷり、罪悪感もたっぷり。でも大都会ニューヨークで時折感じるイライラやストレスを、甘いものは全部解決してくれる。だから、たまにはこれもいいのだ。


El Churro
175 E Houston St, New York, NY 10002

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