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父のバターナイフ

父と毎年静岡県伊豆のクラフト展に行ってたのだけど、父は木工作品を買い求めることが多かった。なにか見つけては手にとって眺めていた。このバターナイフはそのひとつ。


最近、このバターナイフ、食器棚の中から取り出してよく使っている。パンにバターをぬるとき、ふしぎにさっとバターが溶けてぬりやすく、まんべんなく広がる。持っているときのあたたかさは何とも言えない。


バターケースといっしょに、ふつうのバターナイフが入っているけれど、それとは雲泥の差だ。ここまで道具でちがうのかと、感嘆する。


ふとおもう。父は、このバターナイフのよさを実感したのだろうか、と。買っても使わずほっとくとこがあるから。どうだろう。でもきっと、わたしが使うとよろこんでくれてる。いつもそう。入院中の父に伝わっていてほしい。


ところで、何の木でできているのだろう。Rとイニシャルが入っている。父はきっと作家さんと立ち話をして買ってきたとおもう。そんなことを含めて楽しみで行っていたクラフト展だった。毎年10月は特別だった。わたしは布作品へ向かうことが多かった。


道具は、こうやって引き継がれていく。世代を超えて。なにより、パンを焼いて食べるのが、以前より楽しくなった。


富士山


それでは、またお会いできますように。
ありがとうございました。






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