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【鑑賞】赤と白とロイヤルブルー

「結論から言えば、おまえは死ぬ」
そんなブラッド・ピットのネットミーム画像が頭の中に思い浮かびました。
この作品を他人に伝える場合にまず言っておきたいのは、この言葉に限ります。
「結論から言えば、おまえは死ぬ」

アメリカ大統領の息子×イギリスの王子様によるロマンチックコメディですが、LGBTQ作品だからといって「悲恋」「禁断の」みたいな見出しが躍り出るようなものではなく、当たり前にLGBTQがあり、当たり前のこととして受け入れられている社会が描かれています。
つまり、ハッピーエンドです。
とはいえ、古い体質を持つ王室の中では王子がゲイであるというのは前代未聞。
そこで王子の苦悩があるのですが、当事者ではない視聴者の私にしてみたらそれはこのカップルの愛を深めるためのスパイスなので、大変おいしくいただくことができました。

原作はベストセラー小説なのですが、原作者はこの作品を書き上げるために何万冊のBL作品を読んだのだろうかと思えるほど、BL作品のお約束や王道が散りばめられています。
険悪からのラブ発生、急に狭いロッカーに押し込められる展開、他人と仲良くしてるところを見てしまって嫉妬、関係自体への苦悩、やけに物分かりの良い友人などなど。
しかし王道展開というのは人々に好まれるから王道になったので、やはりこの作品で散りばめられた王道展開は見てて好ましい。
そして王道に次ぐ王道展開で、こっちがまだあの展開で萌えているというのに更なる萌えが追加されて溺れてしまう。
それが2時間続くので、見てる方は息も絶え絶えとなります。
故に「結論から言えば、おまえは死ぬ」となるのです。

だからと言って目新しいものがないかと言ったら、そうではない。
アメリカとイギリスという遠距離恋愛ながらも、どちらもセレブなのでプライベートジェットで気軽に行き来します。
平民と貴族のお付き合いだったら絶対出てくるであろう「プライベートジェットに驚いて恐縮する片割れ」みたいな描写は一切ありません。
プライベートジェットがあるのが当たり前なので。

現実社会ではまだ難しいところも、この作品の中ではいろんなものが当たり前のこととして受け入れられています。
冒頭で「アメリカ大統領の息子×イギリスの王子様」と書きましたが、アメリカ大統領と聞いて頭に思い浮かべたのは男性ではないでしょうか。
この作品ではアメリカ大統領は女性です。
けどそこをことさら大きく取り扱うことはなく、4年目の初の女性大統領はアメリカの中では「当たり前」になっています。
そして母として、息子から王子と付き合っていることを告白された時に何をするかと言えば、反対するのではなく性教育として「感染症対策ちゃんとしろ」というもの。
あまりにも先進的すぎて「ママー!」と叫んでしまいました。
そして前述の通り、LGBTQに対してフラットなのがアメリカ側で、主人公がバイセクシャルなのは友人も気にせず、家族も受け入れる。
なんという優しい世界……と感動に浸っているけど、イギリス王室は保守的で「国民が許さない」という思考。
先進的な社会で生きる人と保守的な世界で生きている人のカップルとして考えると、実は身近にも男女問わずいるのではないでしょうか。

そしてBL的王道展開でありそうな「地位も名誉も捨ててお前のために生きる」を外しているところがこの作品の良いところです。
生き方の核となるのは、アメリカ国民としての政治家でありイギリス国家の王子であること。
そこを曲げずに、どうしたら2人の愛を貫けるのかを苦悩するのが良い。
安易に責任を投げ出さないところが大変好ましい。

王道展開と、あえて王道を外すバランスの良さが素晴らしい作品でした。


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