【書評リレーマラソン②】『解剖から理解する頚椎診療』―独自の考えを盛り込みながら,攻めの姿勢を崩していない魅力的な書
本書を読んで
本書は,これから頚椎診療を始める若手医師だけでなく, 経験豊富なシニア医師にとっても有益な成書である。
頚椎の成書というと,手術手技や術式選択,適応,周術期の注意など,難しいとされる手術を中心に詳述されていることが多い。本書にも,頚椎手術についての最近の知見を含む多くの情報がわかりやすく掲載されているので,頚椎外科に意欲的な若手脊椎外科医にとって有意義な書となっている。
ただ,それだけではなく,本書では外来で数多く遭遇する「頚部痛」「むち打ち損傷」「肩こり」についても,治療法を含めた多くの説明がなされている。また,最近のトピックとして議論の多い「首下がり症候群」についても詳しい記載があるので,既に第一線で活躍されているシニアの先生方にも有用な書であると考えられる。
本書は編者の述べる通り,エビデンスによる型にはまった説明にとらわれず,独自の考えを盛り込みながら攻めの姿勢を崩していないため,魅力的な書に仕上がっている。
私の頚椎診療
頚椎診療に限らず,診療行為にあたっては,種々の決定について「患者さんのため」になるかどうかを第一に意識しながら診療することが大切だと思っている。
自己の名誉欲,個人的な手術への希求あるいは忌避,医療機関や他の医師に対する気遣い,「あせり」など,診療を行っていく過程においてこれらの因子が作用するために診療の方向性が変わってしまうことはありうる。
しかし,一番に優先すべきことは,その方向が「患者さんのため」になっているかどうかを考慮することである。そんなことは当たり前なのだが,いろいろな周辺事情が「患者さんのために」を二の次,三の次にしてしまう可能性があるので注意を必要とする。「患者さんのために」という姿勢を守りながらあらゆる判断をし,診療を進めなければならない。
なお,そのことを可能にするためには,十分な知識や技術の修得という背景が必須であることは論を俟たない。
書籍概要
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