『保護者からの質問に自信を持って答える!吃音Q&A』note連載 第3回:吃音の自然回復と気づき
エントリー編
3:吃音の自然回復と気づき
母親
一番知りたいことなのですが,吃音って治るものですか?
その疑問に答えるには,実際に66名の吃音児が始まって,どのくらいで治ったか調べた研究があります。
男児は3年で62%,女児は3年で79%が自然回復しました。
母親
自然回復とは「何もセラピーをしない」ということなのでしょうか?
吃音相談に来た人ですので,最低限の接し方は説明したとは思いますが,リッカムプログラム(解説はこちら)や間接療法などの積極的なセラピーをしていない場合が自然回復となります。
母親
この自然回復率のデータをよく見ると,1.5年以内の早期回復と,1.5年~3年までの遅期回復は同じくらいですね。
吃音って,始まって1~2カ月で治る子が多いと思っていましたが、意外にも1年以上続く子が多いのですね。
そうです。発症1年以内に8.1%しか治らないと言われています。
母親
1年以内にはたった8.1%しか治らないのですね・・・。
インターネットでは,少し子どもへの対応を変えると,治ったという書き込みがありました。
吃音の最大の特徴は,増えたり減ったりする吃音の波と言われる症状があることです(第2回参照)。そのインターネットの書き込みがあった時点では治ったように見えたけど,数日後にはまた吃音が始まるといったことはよくあります。
母親
わかりました。吃音はいったん始まるとなかなか治りにくいものなのですね。
本人が自分の吃音に気づかないうちは治る可能性がある。本人が自分の吃音に気づくと治らないという噂を聞いたことがあります。
子どもに吃音を気づかせないように吃音の話を避けていますが,その対応でよいのでしょうか?
吃音のある子どもがどのくらいの割合で自分の吃音に気づいているかの研究があります。2歳~7歳までの1,058名の吃音児の調査です。
3歳で60%を超え,5歳で80%,7歳で85%と,多くの吃音のある子は自分の吃音に気づいています。このように吃音に気づいている子でも,治る子はたくさんいます。
子どもの吃音を気づかせないことを第一の目標とするために,大人が吃音の話題を避けることで,子どもの困り感に寄り添えないことはあってはならないと思います。
母親
子どもを病院に連れて行くときに,吃音の話を聞かせるといけないと思っていたので,親だけ先に話を聞こうとしていました。
一緒でも悪影響はないのですね。
子どもと一緒に診察室に入ったほうが,子どもの状態に応じた説明が聞けますよ。
菊池良和(九州大学病院耳鼻咽喉科 助教)
続き(note連載第4回)はこちら
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