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【識者の眼】「病院をサイバー攻撃の魔の手から守ってぇ〜‼」邉見公雄

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)
Web医事新報登録日: 2021-11-30

今回も本来ならコロナで判った事シリーズを来るべき第6波に備えて記そうと思っていたが、喫緊の腹立たしく非情なテーマが襲ってきたので前回と同じく割り込みさせた。

それは病院の電子カルテに対するサイバー攻撃。電子カルテをすべて暗号化して判読不能にするものである。サイバーテロ集団がランサムウェアというコンピュータウイルスを使ってアメリカ合衆国の石油パイプラインの会社から5億円とも言われる高額の身代金を奪取したのと同じ手口。

このターゲットとなったのは徳島県美馬郡つるぎ町立半田病院。つるぎ町は名前の通り四国第一(西日本第二)の高峰剣山の麓の吉野川畔の町である。何故こんな田舎にある小さな病院がと。ロシアンルーレットでたまたまか、弾道ミサイル的に狙い澄まされたのか、多分後者ではありえなく前者では……。

半田病院は、私が旧満州国から引き揚げ18歳まで育った実家から最も近い徳島県西部の地域中核病院で、徳島県立三好病院と2つしかないお産のできる病院なのだ。私の町の役場で町おこしをやってくれていた中学校同級生の娘さんが助産師として働いてくれている。叔母や従兄弟も看取っていただいた。亡くなった従兄弟の長男が事務長をしていたこともある。二重三重の縁のある病院である。

病院事業管理者の須藤泰史先生は地域医療の同志で、小生が立ち上げたNPO地域医療・介護研究会のコアな会員である前院長の沖津先生、元院長の三村先生も昔からの友人である。病院は外来を縮小し近隣の病院にお願いしたり、薬局に処方箋のコピーをお願いしたりして、カルテ復旧まで悪戦苦闘の毎日だ。

コロナ禍の中でもあり本当に腹立たしい。神も仏も無いのか。そもそも医療、特に病院は資本投資効率の低い非営利の事業である。利益率は1〜2%、公立病院は不採算もやるので±1%、6割が赤字である。何故そんなところを狙うのか? 保険会社がサイバー対策の保険も売り出したらしいが、ここはデジタル庁の初仕事として電子カルテの統一とサイバー対策とプライバシー保護を厚労省の三位一体の改革より迅速にお願いしたい。

防衛費で国防も重要とは思うが、マスクやガウン、エタノール、人工呼吸器と同じように電子カルテも地域住民を守る命綱である。昔医者になった頃、紙カルテを粗末に扱っていた同僚が先輩医師に「カルテは患者さんの生命と同じだ」とこっぴどく怒られていたのを思い出した。国には是非、地域住民を守る安全防御対策をお願いしたい。

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