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"旅"のはじまりはいつだって

テーン トーン ターン トーン

耳なじみのある羽田空港のアナウンスが響く。
北海道家族旅行、社会人になってからの出張、弾丸で訪れた香川のアートフェスのとき…。もう何十回も聞いているのに、今回はこの音が聞こえるたびに緊張が走った。



初めて訪れた国際線ターミナルで私は小刻みに震えていた。
これから1年間の世界一周旅をスタートするのだ。京急線の窓から目に焼きつけた東京の街、母がにぎってくれたおにぎりの味。ほんの数時間前の出来事を繰り返し思い出しては、興奮と不安で心が押しつぶされそうになった。誰でもない自分で決めた旅なのに、座ったベンチから動けないまま時間だけが過ぎてしまった。



腕をまくると時計の針は、いよいよ前に進まなくてはならない時間を指している。

ー弥立つ

"旅"のはじまりはきっといつだってこうなんだ。
ふーっと息を吐きながら心で唱えみる。


足にぐっと力をこめて立ち上がり、私は出国ゲートへと向っていった。

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