今井真実さんはどうやって人気料理家に? 「こうして私は料理家になった」イベントレポート
このたびnoteは、多くの料理家が活躍するWebメディア「アイスム」のご協力のもと、新イベント「こうして私は料理家になった」シリーズをスタートさせました。
人気の料理家を招き、これまでどのようにキャリアを築いてこられたのか、SNSの活用法やデビューのきっかけになったターニングポイントなどを詳細におうかがいします。シリーズをとおして聞き手を務めるのは、スープ作家の有賀薫さんです。
第一弾のゲストにお招きしたのは、2022年2月、3月に自著『毎日のあたらしい料理 いつもの食材に「驚き」をひとさじ』、『いい日だった、と眠れるように 私のための私のごはん』を出版された今井真実さん。
今井さんの書籍を担当した編集者3名にもご出演いただき、出版のオファーをした理由と、「編集者が魅了される著者」について聞いています。
このレポートでは、イベントの一部を抜粋してお届けします。くわしくは動画をご覧ください。
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ゲスト
料理家のキャリアは友だちのための料理教室から
──料理家として普段どのような活動をされているか教えてください。
今井 Webや雑誌からご依頼を受けてレシピをつくったり、毎日Twitterに自宅の献立を載せたり、1週間でどんなごはんをつくったかをnoteにまとめて掲載したりしています。
レシピの中でも、カルボナーラ、ベーコン、焼豚が特に人気が高いです。
──どうやって料理家になられたんですか。
今井 婚約して会社を辞め、「自分が無理のない範囲でできることってなんだろう? 」と考えていたときに、お友だちから「料理を教えてほしい」と言われたんです。それで、自宅で料理教室をはじめました。
人数がだんだん多くなったので、生徒さんの特性に合わせてグループわけをして、それぞれにあったレシピを教えるようにしたんです。小さなお子さんがいるグループには簡単にできるおかずを、別のグループにはおつまみを中心にするなど工夫しました。
──料理教室って今月のメニューをひとつ決めて、それを繰り返し教えるのが一般的。今井さんのやり方は大変そうですが、お料理のトレーニングにもなりそうですね。
今井 そうですね。このスタイルで10年ぐらい、料理教室を続けています。
おうちごはんのヒントになればとSNSを開始
──SNSをつかいはじめたきっかけは、なんだったんでしょうか?
今井 2020年のコロナウィルス感染症による自粛期間中に、「毎日家にこもって料理をするのがつらい」というみなさんの声を聞いたことです。自分ができることをしたいと思いました。それで、SNSでレシピを公開することに。
同年の3月にベーコンのレシピをnoteに書いたのが最初です。
──2020年以降、料理家のYouTuberがふえました。今井さんはnoteとTwitterをよく利用していると思いますが、YouTubeではなくこれらを中心にしようと思った理由を教えてください。
今井 はじめはTwitterに短いレシピを載せていたんです。そうしたら、ご覧になった方が「Twitterだと内容が流れていってしまうから、noteに残したらどうですか? 」と言ってくださって。それでnoteにレシピを書くようになりました。
3日にいっぺんぐらいの頻度で投稿していましたね。同時期に、「料理と毎日」というごはん日記もはじめました。Twitterはごはんのことのみを書き、日記は自由に表現する、といったように使い分けをしています。
noteやTwitterで発信していたレシピを編集者の方が見てくださって、レシピ本の出版にまでつながりました。
──SNSをつかう上で、意識していたことはありますか。
今井 「楽しい雰囲気でありたい」っていうのはずっとありました。ちょっとしたグチでも、後から見返したら「こんなこと書かない方がよかったな」と思うかもしれないので。
出版に至るまで
──ここからは、今井さんの著書を担当された編集者の方も交えてお話を進めます。まず今井さん、本を出版することになった経緯をお聞かせください。
今井 2020年の夏に、フリー編集者の林さんから「レシピの書籍化はお考えですか? 」と、noteに載せているメールアドレス宛に連絡がきました。
最初はなかなか出版までこぎつけられなかったんですが、翌年の夏にKADOKAWAの杉浦さんからも「本をつくりませんか」とメールいただいたので、林さんをご紹介して「一緒にやりましょう」ということになったんです。
同じ時期に、左右社の筒井さんが私の料理教室を訪ねて来られて。2冊ほぼ同時に企画がスタートしました。
──今井さんの本を出したいと思った理由はなんですか。
林 つかう食材は一般的なんですが、その組み合わせがすごく斬新だったり、工程が新しかったり、何かしらびっくりすることがあるところです。ほかの料理家さんとは違うなと思いました。
今井さんは、レシピを思いついたときのエピソードをnoteに書かれていて、その物語性にもすごく魅力を感じましたね。
杉浦 今井さんのレシピは「いいね」した瞬間から材料を買いに走り出したい衝動に駆られる(笑)。今井さんの文章の力が、ひとをそう思わせるんだと思います。
ほかにはないその今井さんの個性が、出版依頼の決め手になりました。SNSで人気の料理家さんはたくさんいますが、フォロワーが多い順に声をかける時代ではもうないですね。
筒井 私は今井さんのレシピで実際に料理をつくったんですが、手間がかからないのにすごくおいしくて驚きました。
それに、noteのタイトルのつけ方が独特で、この人は文才もありそうだなと。今井さんの夫である裕治さんが撮っている料理写真も、素敵だと思いましたね。
──これから料理家をめざす方に、メッセージをお願いします。
今井 いま、みなさん疲れてますよね。人間って、疲れているときこそちゃんとしたごはんが食べたくなると思うんです。
私は料理をとおして、疲れている人を少しでも楽にしてあげたいなと考えています。料理家として、自分のレシピを「だれに届けたいか」をしっかり考えるのは、大事なことかもしれません。
林 編集者は「売れる、売れない」で企画を考えるひともいますが、私は「このひとのことをもっとみんなに知ってもらいたい! 」という気持ちが強いです。
いま料理家をめざしたいと考えている方に、そういう編集者もたくさんいるということを知っていただけたらうれしいです。
筒井 編集者ってnoteをチェックしているひとが多いんですよ。今井さんのように、文章や素敵な写真など、料理にプラスアルファの強みがあると編集者などに見つけてもらいやすくなるかもしれません。
これからもまめにnoteを見ていきたいと思います。みなさんの新しいレシピ、たのしみにしています!
──編集者は「いい本をつくりたい」と思っているひとばかり。その「編集魂」を揺り動かして「このひとの本を出したい! 」と思わせるような料理家さんがいっぱい出てきてくれたらいいなと思います。
そのためには、料理家が熱量全開でレシピを出していくことも、大事なんだなと思いました。
本日はみなさん、どうもありがとうございました。
(敬称略)
ゲストプロフィール
料理家 今井真実さん
「つくったひとが嬉しくなる料理を」という考えのもと、雑誌やWeb媒体、企業広告など、多岐にわたるメディアでレシピ制作を担当。noteにつづるレシピやTwitterでの発信が注目を集める。
note / Twitter
聞き手プロフィール
スープ作家 有賀薫さん
ライターとして文章を書く仕事を続けるかたわら、2011年に息子を起こすためにスープをつくりはじめる。毎朝スープをつくり続けて10年。その日数は3500日以上に。
note / Twitter
今回の企画にご協力いただいたアイスムさんとnoteのコラボお題企画「#私のイチオシレシピ」は現在応募受付中(2022年4月15日まで)。採用されれば、あなたのレシピがWebメディア「アイスム」に掲載されるかもしれません。くわしくはこちらをご覧ください。
text by いとうめぐみ