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「エシカルフード基準」セッション対話録 第3回

エシカルフード基準プレセッション(2021年7月1日10-13時)

「エシカルフードの基準を検討する」
参加メンバー:五十音順
井出留美さん
蟹江憲史さん
河口眞理子さん
佐々木ひろこさん
須賀智子さん
中西悦子さん
平井巧さん
藤田香さん
藤田友紀子さん
ぺオ・エクベリさん
森枝幹さん
山本謙治さん
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー


(瀧田)
いよいよ本日からエシカルフードを規定する項目を具体的に考える基準づくりをはじめていきます。皆さんとは個別にコミュニケーションをとらせていただいていますが、今日は皆さん揃ってお集まりいただき対話ができるということで、とても楽しみでワクワクしています。

改めて『エシカルフードアクションスコア』のご説明と、今日のセッションの位置付け、今後の流れをご説明させていただき、その後ファシリテートをフューチャーセッションズの芝池さんにバトンタッチしたいと思います。
まずは資料を共有します。

(資料共有)
本日は『エシカルフードの基準』作りのプレセッションとなります。
改めて『エシカルフードアクションスコア』の説明をします。
持続可能な社会を実現するためには「毎日の食、毎日の買い物から、エシカルを考えてみる。"ちょっといいもの"を選ぶ目をもつ生活者になる。」ことが大切だと考えます。
日々エシカル消費への意識を持ち続け、行動をとり続けなければいけないということではなく、普段の生活の中でより良い消費行動を選択すること、世界に対して少しでもよい選択を行う生活者が一人でも増えていくことを目指しています。
そんなひとりひとりのエシカルに向けたアクションがやがて大きなソーシャルインパクトとなるよう、またそのより良い消費行動のきっかけやモチベーションにつなげるため『エシカルフードアクションスコア』を提供したいと思っています。
あくまでも公共の認証ではなく、エシカルフードを推薦するためのTカードのスコアという位置付けです。
ゆくゆくはマルチステークホルダーの皆さんにも使ってもらい、共に消費の潮流を変えることにチャレンジしたいと考えています。

(構成要素)
お買い物の履歴、その方の知識や姿勢が分かるアンケート、エシカルフードラボ内でのアクション、これら3つを加点積み上げ式のスコアとして位置づけます。ボイコットの考え方は取り入れず、積極的な購買の考え方のみを対象とすることも大切なポイントです。

エシカルフードを確認するための基準を皆さんとセッションで決めていき、その基準を元にメーカーさんのご協力を得て対象SKUに落とし込んでいきたいと考えています。SKUは、加工食品とキッチン周りの用品。エシカルフードというとまず生鮮食品を思い浮かべると思いますが、日本では生鮮食品の商品マスターが整備されていない現状がありますので、まずはここからはじめます。

(活用スキーム)
エシカルフードの基準を満たした商品を購入すると、お客さまであるT会員に『エシカルフードアクションスコア』が付与される仕組みです。商品にスコアが付与されるわけではなく、商品に対してはエシカルであるかというフラグがつくだけとなります。その商品を買ったお客さまに購買履歴をもとに集計したスコアがつくことになります。

3月に「エシカルフードってなに?」という大きなスコープから対話するセッションを行いましたが、本日は基準づくりのプレセッションです。いよいよ基準を形づくっていきます。具体的な基準が定義された時に、その項目をどれくらい満たしたらエシカルとするのかのしきい値を決めていくことになります。基準についてはいろいろな専門領域をお持ちの有識者の皆さんとのセッションで決めていきますが、しきい値は日本の現状に合わせて考える必要があるので、メーカーや流通の皆さんにもセッションに参加していただきます。

メーカーさんのご協力を得て対象SKUに落とし込んでいく流れを考えていますが、本当に実現可能なのか?食品メーカーの皆さんにヒアリングをさせてもらっている中で大きな課題が3つ見えてきました。
1 エシカルの市場が小さい。消費者が動くイメージが持てない
2 自ら自社商品をエシカルとは謳いづらい(FACTベースのコミュニケーション)
3 推進団体である「Tカードみんなのエシカルフードラボ」に中立性をもたせたい

それぞれについて、解決できる方向性を模索したいと考えています。世の中にある食品メーカーすべてと協働する世界の実現は難しいと思いますので、ロードマップとしては、まずは消費者が動くイメージの可視化のために実証実験的なスモールスタート企画から始めたいと考えています。その中で消費者やメーカーの皆さんとの協働、共創を大きくしていき、『エシカルフードアクションスコア』の実現に近づけていくロードマップを考えています。

(定義セッションのふりかえり)
エシカルフードの定義のセッションを3月にしましたが、大きくいうと2つの共通認識が明らかになりました。

1つ目は定義です。「人」「環境」「動物」に配慮しているべきであるということ。
そして、それだけではなく、行動も合わせて考えるということ。「売り方」「買い方」「作り方」においてそれぞれがエシカルな行動をしなくてはならない。ということ。

本日の基準プレセッションでは、具体的に基準を作っていくことになりますので、議論を進めるために事務局にて山本さん、佐々木さん、藤田友紀子さんの協力をいただきながら、イギリスのエシカルコンシューマーとの連携の中で培われた知見をもとに、ドラフトを作成しました。

本日は、このドラフトをベースに皆さんの多様な観点をいただきたいというのが目的です。今後、プレセッションで出た多様な観点をドラフトに反映しエシカルコンシューマーからもアドバイスをいただきたいと考えています。エシカルフードの項目、それに対する基準を事務局で精緻化していき、8月中には皆さんにメールにて送付し、目を通していただき、項目や基準に対して「この項目は2022年度必ず満たすのか」「将来的に満たせばいいのか」「そもそもなくてもいいのか」等のフィードバックをお願いしたいと思います。それをもとに、事務局のほうで論点整理をし、改めて皆さんの意見を含めてエシカコンシューマーにアドバイスをいただき、基準づくりの本セッションを開催する予定です。整理した論点について対話するセッションについては9月中旬くらいには開催できたらと思っています。
それでは、ここからは芝池さんにバトンタッチします。

(芝池)
よろしくお願いします。画面共有します。今、瀧田さんから全体像に関して説明がありました。私からは、今日この3時間の時間の使い方について共有します。目的としては、エシカルフードの項目と基準決めで、ドラフトを共有し、フィードバックを得ることです。

事務局で作ったドラフトは、日本の現状を考えるとハードルが高すぎるというのもあるかもしれません。瀧田さんのお話にあったとおり、「どれは入れて、どれは入れない」というセッションは次回以降に行います。今日はまず、ベストな項目リストをつくることをしたいと思います。どんどん排除するというより、今ある項目に対して足りない観点を補うことに焦点をおいていただくといいかと思っています。

ドラフトの説明については、山本さん、佐々木さん、藤田友紀子さんにバトンタッチをします。まずは、このドラフトの参考にしているエシカルコンシューマーについて、参考にする意図を山本さんに説明してもらい、理解を深め、フィードバックをいただければと思います。

ドラフトは大きく「企業評価」「フード評価」の2つに分かれていて、その中でも大項目、中項目など項目がブレイクダウンされています。かなりボリュームが多いが、抜け漏れがないようにフィードバックをいただければと思います。

ここまでの進め方での確認、ご質問がある方はいますか?もし手元にドラフトが出てこないという方にはチャットでも送ります。では、山本さんにバトンタッチします。

(山本さん)
株式会社グッドテーブルの山本です。事務局からエシカルフード基準のドラフトを作ってほしいということでやっておりました。お手元に32ページの文書があると思います。これについて話します。表を見ていただくと、「企業評価」「フード評価」があります。これは、こういう基準を考える際のお手本があるよねということで、私が7年ほどかかわっているイギリスのエシカルコンシューマーという雑誌でありリサーチアソシエーションが持っている企業を評価する基準のベースとなっているものを日本語に訳したものです。それが「企業評価」です。

そして「フード評価」は、私、藤田さん、佐々木さんで作成したもの。それを説明していきます。あらかじめ申し上げますが、32ページをそのまんま基準にするとどこの企業も協力してくれないということになると思います、それほど項目が多岐にわたっています。多いところから減らしていくというのが重要なポイントです。まずその前にエシカルコンシューマーとは何をしているところかを説明したいと思います。

(画面共有)
エシカルコンシューマーという雑誌があると思ってください。これは2009年に出たもの。1987年に設立された組織で、当時学生で市民運動家的な活動をしていたロブハリスン、ジェーン、コールの3人で設立されました。それぞれが得意分野を持っていてロブは人権、ジェーンは動物愛護関係、コールは環境問題に関心があり、その3人が雑誌を作りました。

当時は、倫理的でない企業や商品が結構出回っており、それに対して告発がされていた時期で、そうした商品を排除しようという動きで「ボイコット」「バイコット」がなされていました。ボイコットはこういう商品は買わない、バイコットは、その逆、購買する。この運動がパワーを持ち始めていました。でも、その活動を正確に行うためには「本当にこの商品はボイコットするべきなのか、バイコットすべきか」を共有されていないといけない。当時から、グリーンウォッシュのような形で、「僕の商品はいい商品だ」というものが出てきたので、市民がそれに対して見抜くことができないといけないのでそのためのメディアとしてエシカルコンシューマーが創刊されました。

今は、雑誌は電子媒体になっていて、メインはウェブサイト。エシカルコンシューマーリサーチアソシエーションは、この雑誌を発刊、コンサル業を行っています。エクラという形で略されていてマンチェスターの住宅街、環境であるとか、エコロジー関係のNPO、NGOが優先的に入れる市の建物の中にあります。ロブハリスンは現在も中心にいる人物です。

エシックスコアという基準でさまざまに評価します。今見ているスライドは、トップオブザフードチェーン。小売業者はフードチェーンの頂点におり、さまざまな商品を買って消費者に届ける。小売業者が倫理的でなければならないということで、この特集号では、小売チェーンをランキングしていました。これを見ると、左側にブランド(スーパーなど)があります。1位にきているのは「マークスアンドスペンサー」。イギリスの高級ラインのスーパー。高級だけどもちょっとカジュアルなラインを展開している。2番はco-op。下位には、アスダやテスコ(イオンのような大型チェーン)。上の段の横軸がエシックスコア。環境、動物、人間、政治、プラスαという形でさまざまに評価し、この評価項目で点数がつけられ、それによってランキングしています。

現在はこれがもっと高度化し、ウェブサイトの中から、フードアンドドリンクのソフトドリンクカテゴリを見ると、どういったエシカルなイシューが定義されているかが書かれています。スコアテーブルがあり、ランキングが出ていますがコーラやペプシが下のほうです。ウエブならではでいうと、人によっては「環境問題だけで見るとどこがトップなの?」「アニマルウェルフェアに関してはどこが熱心?」という調べ方でも、ランキングが検索できるようになっていて、ウェブ版は、人物、人権に対してどこなの? といったことでランキングを見ることもできます。これがエシックスコアです。

というようなことをやっている団体で、エシカルコンシューマー自体は、出版だけではなく、コンサル活動をしています。おもしろいことにランキングの下位に入っている企業は、名誉毀損と裁判を起こすこともあるらしいのですが、多くは「じゃ、うちはどうやったら上位になるの? コンサルしてよ」と言ってきたりするそうです。そういった企業へのコンサル、もしくは国連機関、一国の政府からの依頼によるフィーが大きいです。それだけではなく、日本と違ってイギリスは、倫理的なキャンペーン活動をする団体への補助金があります。チャリティ団体で企業からの寄付でなりたっています。企業はチャリティ団体に寄付をすると税金が免除されるから喜んで寄付し、そのチャリティ団体が、倫理的なキャンペーンをするところに予算をつける。そういった団体から寄付をもらうという仕組みが社会的にあります。日本ではそういうことがないので倫理的消費が広がらないというのもあります。これがエシカルコンシューマーリサーチアソシエーションです。

それではいよいよ基準の説明に移ります。いまお話したエシックスコアをベースとした企業を評価する仕組みが最初にありそれを日本語訳したのが、配ったものです。まずは環境、動物、人に対する配慮、そして政治というところについて話します。

環境については、環境負荷に関する報告がなされているかということ。気候変動、汚染有毒物質、生物の生息資源に対してどのような姿勢をとっているか。パームオイルに対しての評価。

そして動物実験をしているかどうか。欧米では批判的なテーマ。特に化粧品や日用品に対して批判的。アニマルライツといったところ。人間は、人権では労働者の権利、サプライチェーンでは、何段階にも深くなっていくけど、先の先の人権問題が管理されているか。または、無責任なマーケティングがされていないか。「うちの商品はいい商品ですよ」といって、まだまだ感受性が強い子どもたちに対して、体に悪いのにいい商品だと刷り込むようなことをしていないか。軍事的なところの供与がないかといった評価。議論がある科学技術の使用、原子力、遺伝子組み換え、ゲノム編集などの使用状況を評価。ボイコットの呼びかけがあった企業かどうか。政治的には、政治献金。日本では秋田フーズという卵の会社がアニマルウエルフェアの基準を厳しくしないでくれといってお金を払ったという事実がある。スキャンダルになっていること。こういった評価をします。

また反社会的財務活動がないか。財務的な形で不正をしていないかの評価は厳しい。タックスヘイブンの活用がないかも基準としてある。地域に税金をおさめているか。アマゾン、アップルを批判している。

これはイギリスで生まれ、ヨーロッパに広まった基準。そこで社会問題化したことが盛り込まれているので、日本人からみると「なんのこと?」というのもあります。

(環境報告)
まずは、中小企業であることが条件のひとつにあります。というのもイギリスでは、地場産業、ローカル産業(中小企業)であることが重要な観点で大企業、多国籍企業というのは、自分の国に税金を落とさない、税金払わない活動をして貢献をしてくれないということで、地場産業に対して補助を出すという認識があります。これは、日本ではどう見たらいいか? また、企業で環境的および社会的代替品を提供しているということがひとつです。

この先は、環境報告に対してきちんと公表しているかどうか。更新されているか。公表されているレポートに根拠が示されているかなどです。

ご覧の通、減点方式。14点から減点するための部分が多い。中には、情報公開がされているといったポジティブな項目もあります。

(気候変動)
気候変動分野で批判されている企業との融資や投資などの関係がないか。新しい道路の建設に融資などがないか。炭素排出管理及びレポートについては、エシカルコンシューマーが別途評価をつくっているのでそれをみて評価します。過去の事件に関して情報公開をしているかどうか、批判を受けたことにどう対応しているか。ミスリードな表記、グリーンウォッシングをしていないかどうか、といったところに関しての基準があります。

(汚染と有毒物質)
医療廃棄物用でない焼却炉の建設および運用。ヨーロッパでは、医療廃棄物、重要な伝染性物質をふいたものであるとかを焼却する施設は、完全に燃やしきるとか、密閉されるべきとか厳密な規定がある、そういったハイスペックな焼却炉をつくるのは自治体が嫌がる。なので、民間スペックの焼却炉でそういったものを燃やす実態がある、それが社会問題化されました。日本では問題視されているか?はあります。その他は疑問がないかと。殺虫剤、除草剤を使用しているかどうかなども問われています。

(生物の生息域と資源)
絶滅危惧種の影響への批判がないか。木材の調達ポリシーの評価基準があるか。木材の森林認証であるFSC認証のものを使っているかどうか。持続可能ではない林業に関与していないか。といった話がメインです。

(パームオイル)
パーム椰子をつくるのに環境破壊が行われ、人権問題に繋がっている。パームオイルは認証を受けたものを使用すべきという運動が欧米で行われている。これに対しても別途評価があるので、そこでどう評価されているかが基準となる。日本の評価基準も考えなければと思っています。

(動物実験)
動物実験を行なっていないか。もしくはそういった企業の商品を購入していないかが評価されます。実験目的の動物を供給していないかとか。食品メーカーでは考えにくいが、大企業の場合、別部門で行なっている可能性がある。あと、わかりにくいのはフィクストカットオフデイト。欧米では、化粧品や日用品で動物実験を行なってはいけないと決められている。2017年。そこから先に使ってはいけないとなっているが、罰則がないため、独自で動物実験を続けている企業もある。仕方ないから5年間は行うなどルールを自ら設定している。ルールも設定していない企業もあるので、それを評価基準にしています。

(工業畜産)
工業的畜産がされていないかということを、養殖、毛皮、食肉、養鶏の分野で評価されます。

(動物の権利)
家畜だけでなく、ペットも含めて。理解がしにくいところでは、「企業として酪農を行なっている」というのがネガティブなのかポジティブなのかわからない。畜産をやる、集約的、工業的な畜産を批判しているのだと思う。食肉処理場を所有しているということもネガティブ。家畜飼料を供給しているという基準があるが、日本の製粉企業には家畜飼料を供給しているところもあるのですが、それがよくないとされるのか? こういったところも日本と欧米では基準が違うと思います。

(人権)
先住民への権利の侵害がないか。すべての製品がフェアトレードかどうか。ジェンダー問題、年齢、性別、信条、障害、階級にもとづく差別が行われていないか。この辺は議論の余地がたくさんある。例えば、企業が公民権を侵害するようなアクションに関与していないか。関連会社が抑圧的な体制におけるIDカードを強要することに関与していないかが評価される。労働者の権利問題とか。労働者の権利問題とサプライチェーンマネジメントも別途3ページある。ここで重要なのは、労働者の権利は守りましょうと言うと自社や関連会社の労働者を指すけど、ここではサプライチェーン、ある企業が仕入れをしている仕入れ先企業、その前にある生産者といったところまでもきちんと管理をしましょうとされていること。倫理的な配慮がなされているかが評価される。6つの重要指標。強制労働の使用の禁止、団結の自由、生活賃金の支払い、週48時間の労働時間と12時間の超過勤務に限定(日本では抵触するところがたくさんあるかも)、児童労働の撤廃、人権、性別などによる差別がない。この指標が何段階かにわたる取引先にわたってできているかが評価される。あとは、労働組合が認められているかなどが評価になってきます。

(無責任なマーケティング)
子どもに対するお菓子、清涼飲料水など砂糖をたくさんつかった商品。今イギリスでは子どもの肥満が問題になっている。これに関しては立法して、20時以降にならないとそういった商品のCMを流してはいけないという法律になっている。それを無視するのが無責任なマーケティングといわれる。スーパーマーケットのレジに近づけばつくほど、ガム、ラムネが陳列される。それも無責任なマーケティングとなる。タバコ産業への関与していないかというところもあります。

(軍事供与)
軍事にかかわるようなことが行われていないか。一般メーカーだと考えにくいが、ミサイルへ製造、供給にかかわっていないかとなると、例えば関連会社が軍事開発をしている食品企業は日本にもある。それが問題視される。どう考えていくか。

(議論のある科学技術の利用)
遺伝子組み換え、クローンに関係していないか。スタンスが違う。EUは、遺伝子組み換え禁止。動物に対して、家畜に成長ホルモン投与を禁止。アメリカは、GMは認められている。政府としてはOK。成長ホルモンの投与も是とされる。ヨーロッパはステロイドホルモンを投与したアメリカのビーフや乳製品を輸入できない。日本はこういうテーマは、アメリカよりの政策展開をしている。これを、どこまで入れるのか? 原子力もどう考えるか。

(ボイコットの呼びかけ)
ボイコットされている企業に関係していないか、自社がボイコットを受けていないか。日本ではボイコットしない国民性ではありますが。

(政治活動)
ビルダーバーグ会議のメンバーといった、ロビー活動を行う団体と密接にかかわっていて、利益供与、自分たちにメリットにある政策誘導をしていないかを評価。この場合は、欧米のロビー活動の項目が多いのでデータ部分に網掛けしている。政治活動で重要なのは、左翼、右翼への政治献金がされていないか。反社会的な財務活動をしていないか。ギャンブル製品についてなど。

(税務活動)
租税回避やタックスヘイブンの活用をしていないか。これに関してもエシカルコンシューマーのランキングが別途ある。その中でどう評価されているかが基準となっています。

以上が、エシカルコンシューマーの基準。基本的に企業評価です。この先にフードカテゴリー、トイレタリー、家、といった項目が商品やサービスに対する評価基準になっている。それにおいては、どの部分が基準になっているかは公開されていません。

この中で食品をどう評価するかを考えなくてはいけない。その部分のドラフトを、サステナブルシーフードの佐々木さんと、『こだわりや』で倫理的な商品を扱う藤田さんと一緒に作りました。

調達(原材料、調味料、包材の調達基準における倫理的配慮)
製造(食品製造段階での倫理的な配慮)
廃棄物(企業経営および食品製造段階で排出される廃棄物に関する倫理的配慮)
ロジスティクス(調達から製造、出荷、配送にいたる物流プロセスにおける倫理的配慮)
表示(食品表示や記載情報に関する倫理的配慮)
地域・コミュニティへの貢献(企業の立地する地域・または特定のコミュニティに対する倫理的配慮と貢献)

この6の「フード評価」をつくりました。エシカルコンシューマーは減点方式だったけど、われわれはプラス方式、加点方式のほうがいいだろうと思うので、当てはまっていればプラスになると考えていただければ。

(調達カテゴリ)
ここが肝になります。

1まず倫理的な調達基準を明文化した方針を有しているかどうか。

2倫理的な生産、調達基準をもつ生産者、サプライヤから調達しているか。調達先にも配慮があるかを見る

3調達する食材のフードマイルに配慮しているか。国産、隣県、ローカルな地域から調達しているか。

4倫理的認証を有する製品を積極的に使用しているか。認証、サーティフィケーションを重視しているかが重要。

5オーガニック製品を調達しているか。

6フェアトレード商品を調達しているか。

認証があるだけでなく、認証を取っていないけど準ずることをやっているよ、といったグレードをつけています。ここら辺は、重要で、第三者認証がいちばん上、次に、第三者ではないけど自社でフェアトレードとかオーガニック、有機とかをうたっている場合もあって、たとえば無印良品のオーガニックコットンは第三者認証を受けたものではなく自社で管理機関をつくって自分たちでサーティファイをやっています。それは、第三者認証機関にお金を払うのはもったいないので、そのお金を生産者に還元したほうがいいという考え方だと言っています。ただ、そうすると無印良品の表明を信じるしかないので、やっぱり第三者認証が上、その次に第二者、その下に認証はないけど倫理的に調達していると言っているところがきています。

7環境・倫理に配慮した畜産物を調達している。

施設や使用環境が整えられているか、ここではアニマルウエルフェアに基づいた施設や使用環境が整えられているか。そして品種、在来種、日本でつくられた品種、国産の品種を利用して、種の多様性の保持につとめているか。飼料において動物本来の要求思考にあった飼料が給餌されているか。グラスフェッドに近いかどうかなど。医薬品、成長目的にホルモンや抗生剤を投与していないか。繁殖管理、アニマルウエルフェアにもとづいた繁殖管理がなされているか。育て方においては、飼養管理、欧米レベルにのっとったアニマルウエルフェア基準に準拠した飼養がなされているか。欧米レベルというのは高い。欧米レベルか、日本国のアニマルウエルフェアは低いのでそこにのっとっているか、もしくは何もやっていないかの3段階。重複するけど、認証に関してはオーガニック認証、アニマルウエルフェア認証製品を飼養しているか。自社基準をもつ製品を飼養しているか。

8水産物に関しては、佐々木さんにご登場いただこうと思います。

(佐々木)
水産物に関しては私のほうで作成させていただきました。水産物は、天然魚、養殖魚に分けられます。ワイルドと栽培種になるので基準も全く違うものが必要です。

(天然魚)
天然魚に関してはまず、ステークホルダーがかかわらない第三者機関がエコ認証をだしている製品。その認証も国際的に評価されているもの。日本で流通しているワイルド、天然魚の認証は2つしかないです。MSCとRFM(アラスカに限った認証、ものすごく高い基準)のみ。二者認証に関しては、今回の水産物の基準としては設定していません。日本の独自の認証でMELというものがあり、これは漁業のある団体が出している二者認証ですが、評価にブラックボックスのようなところが多々あり、GSSI(水産物認証に対する国際認証機関)登録継続が危ぶまれていることもあってここには入れていません。それから、認証の次にグレードの高いものとして、漁業の持続可能性を高める取り組み(FIP)がありまして、これによりMSCの認証を目指して取り組んでいる生産者の製品を優先しているかどうか。

これらの公的なプログラムに参加しているもの以外に、認証はないけど配慮を行なっている対象項目として資源評価。例えば客観的なデータをもとにタラやサケの製品をつくる際に、原料の水産物持続性を確認しているか、枯渇に向かっているものを使っていないかどうかです。あとは、認証システムがあるかどうかは別として、ガバメントとか国際的なシステムのもとに資源管理されているか。まったく管理の外にあり何をやってもいいような状況にある水産物でないかどうかということです。あとプラス要因で、規格外、未利用の魚(水揚げされるけど使われずに廃棄されているもの、鮮度落ちが早いもの、規格が揃っていない、そういう理由で未利用になっている魚)の利用に積極的に取り組んでいるか。また幼魚や産卵期にとってしまっていないか。卵を産む前や産卵期にとってしまうと卵が生まれず先につながらないので、それらをできるだけ使用しないということをプラス要因としていれています。

あと、IUU水産物。これは国際的にも問題になっています。違法漁業、つまり法のもとになされていない漁業で獲られていたり、無報告、つまり本来は管理のもとにあるはずが、一切報告を行わず、漁をしたことを隠して獲られていたり、無規制つまり規制がない漁業でとられていたり。そういった水産物でないかどうか。これがないと国際的に輸出しようとしたときには問題になってきています。あとはトレーサビリティ。生産者の顔が見える水産物であるか。生産現場までの履歴を追跡できるかどうか、それに取り組んでいるとプラス要因になります。

(養殖魚)
逆に養殖魚の場合は、畜産物や農業の考え方にも近いです。天然とは違い作り出す漁業なので別途の評価基準を設けています。国際基準のASC、BAP、グローバルギャップの3種類の認証を受けた製品を優先しているか。あとはFIPと同様、持続可能性改善に取り組む(AIP)生産者がいるのでこれらの製品を優先しているか。

あと認証はないけど、まず卵から孵化させる完全養殖水産物。天然幼魚をとって蓄養すると、結局天然の資源を利用しているのとかわらないからです。完全養殖はものすごく少ないですが、そうであればプラス要因にしたい。稚魚を使う場合は、それらの魚種の持続可能性を確認しているかどうか。それから飼料。フィッシュミールつまりサバ、アジ、イワシを加工したものを餌として与えるわけですが、その飼料が乱獲されているものであると天然資源の浪費になるので、このような餌を使っていないことを確認しているかどうか。そして化学物質、医薬品をできるだけ低減しているかどうか。あとは、環境問題、水質モニタリングをはじめ、環境への影響を抑えられているか。養殖場というのは、えさの残りや糞尿によって水質がかなり悪化していることがあるからです。これらを確認しているかどうか。トレーサビリティは先ほどと同じです。以上です。

(山本)
佐々木さんというスペシャリストが入っているので、水産物が分厚くなっています。本当はこのレベルの話を農産物、畜産物にも展開していくのがいいと考えます。

9持続可能性と環境に配慮した包材を使用していること

10安定した契約取引を行う調達の割合が高いこと。これはサプライチェーンの話にも通ずるけど、スポット取引ばかりやるのはよろしくない。生産者や団体に対してきちんとこの価格で1年間買えますといったことを示している企業はエシカルであると評価できます。

11倫理的に配慮された畜産物を調達しているか。この辺はオーガニック的な生産がされているかどうかの話になります。

(製造)
ここは、藤田友紀子さんにお力を借りました。藤田さんお願いします。

(藤田友紀子)
はい、こだわりやの藤田です。製造のカテゴリの部分で、内容を絞らせていただきました。大きい項目としては10項目。その中でもおおまかに4つ。製造というのは人、周囲の環境を含むことから原料においては調達に準じている、の4つです。

1原材料の保管における環境的配慮

計画的な利用、管理システム、こちらはロジスティックにかかわる。保管に過剰なエネルギーを使いすぎないとか長期滞留せず、有効活用しているかどうか。

2原料の使用方法(調達以外)における環境的配慮

製造工程において。原材料の洗浄をどうしているか。電力において再生可能エネルギーを使っているかどうか。洗浄に関して、環境に負荷をかけていないか。あとは原料に関して化学合成添加物の使用を低減し、食品をいかした製造を推進しているか。ここはすごく大きい部分。また、動物実験では、製造工程に動物実験が入るのか、また化学合成物質を製造する段階で動物実験が入るのか、そこに関しては食品の製造ではなく前段階で使われているかを食品メーカーがどこまで把握できるかは難しいところなので、トレーサビリティに関しては論議の必要があります。また、電力の環境配慮ですが、動力として再生可能エネルギーを使っているか、化石燃料に依存しないというところ、またラインの中で電力を使用しないところ。空調冷蔵、冷凍、室内の照明メイド、使用時間に関してどれだけ配慮しているか。割合として何%以上にするべきかも論議すべきだと思います。

3 内外に関する環境的配慮。製造にかかわるかどうかは人への配慮も。作業する人の健康面、衛生面がどれだけ配慮されているか。設備機器のメンテナンスを行い、作業記録を共有化されているか。設備危機の清掃を行い、使用エネルギーの節減に努めているか。または、それ以上に会社内での技術や知的財産の保護、活用が倫理的に守られているか。という部分。

または、外に向けては、7sが徹底共有されているか、周辺の大気汚染に関する規制、排水、排出物に関して処理がされているか。リサイクル循環がされているか。廃棄の際に、有害生物の、製造工程のなかではいろいろな動物が入ってくる可能性があるので、生物多様性に配慮がなされているかというところになってきます。

最後にトレーサビリティ、不用品に関して。

ここはひとくくり。食品ロスや廃棄物に準ずる。製造した商品の送状、納品などの記録が内外に共有されているか。または製造トラブル不良品排出時にきちんと回収が行われているか、情報開示ながされているか。販売後、開示したうえでリユース、リサイクルの取り組みがなされているか。これは廃棄物につながるので、廃棄物に準ずるかどうか確認が必要だと思います。製造に関しては以上です。

(山本)
はい、ありがとうございます。

(廃棄物)
フードロス、廃棄物に関する配慮。ここは、本当は井出さんに入ってもらいたいです。あとでまたお話をさせてください。食品廃棄の明文化ルールがある。方針が従業員に共有されている、食品廃棄に関する数値を共有している、食品廃棄を削減する(リデュース)取り組みがなされている、リユース、リサイクルの取り組みがなされていること。廃棄の分別ルールが組織内で共有されている、モニタリングの仕組みが構築されている。カトラリーなど生分解性の素材を使用した資材を使っている、プラスチック削減、使い捨て製品削減、リターナブル容器の利用推進、こういったことが評価の基準になっています。

(ロジスティクス)
物流。商品受け入れ時に環境的配慮がなされているか。段ボール納品を削減、コンテナ利用推進、過剰梱包、過剰なエネルギーを要する冷蔵、保管システムの削減、在庫が長期間保管して無駄な電力がないかという話。配送時に再生可能エネルギーを使用しているか、輸送時にアイドリングストップなどを行なっているか、フードマイルを意識した物流システムを選択しているか。

(表示)
適正表示に関する倫理的配慮がなされているか。これも藤田さんにお願いしてよろしいでしょうか。

(藤田友紀子)
適正表示に関する倫理的配慮。無責任なマーケティングに即した表示をしていない、カロリーアレルゲンの不当表示がない。認証マークの表示がてきせいな表示ガイドラインに沿っています。この部分は、先日の議論でもあったが、認証マークの適正がなされていないと違法なので、ここは必要かどうか議論です。カロリーアレルゲン、栄養表示も法律で決められていることなので常識的なことかと。健康的な食生活の観点から、理想的な摂取方法の表記がある。これも先ほどの山本さんの話から、子供へのいろいろな表示、促しですとか、配慮表現がどうかというところで倫理的な配慮なされているかは必要。最後に、今では食生活の多様なスタイルから、生活スタイルの多様性があり、ベジタリアン、ビーガン、アレルギー、障害、宗教、食の嗜好が多様化されているので、こういったことに配慮した表示が必要です。以上です。

(山本)
これに加え、我々の内部のセッションで、添加物をどう考えるべきか。日本では、食品安全委員会というのがあって、添加物として認められているものはその使用分量、パーセンテージが守られているかぎりは安全であるというのが政府、国の公式な見解。それに叶った使い方をしているのであれば毒にはならない。使ってかまわないというのが日本の考え方。一方で、化学物質過敏症など、微量の添加物に鋭敏に反応してしまう人がいると言う声もある。一方で、添加物表示の制度が変わってきている。添加物表示を厳密にしなくてもいい抜け道もあると市民団体が指摘しているケースもある。そうしたことをどう考えるか。エシカルフードラボでは、どこまでやるかの話になる。この辺については議論しましょう。

(佐々木)
山本さん。それは抗生物質の使い方、化学物質の使い方、養殖、畜産、農薬も同じ考え方だと思います。

(山本)
はい。ですからこれは表示の問題だけでなくいま佐々木さんがおっしゃったようにこの前段階で話が出てくる可能性がもちろんあるので議論したいと思います。

(地域、コミュニティへの貢献)
当該組織が立脚する地域への貢献を実施しているかどうか。社会貢献活動、地域以外に対しても社会貢献がなされているか。自分の本業での儲けを還元しているということであれば倫理的に評価しようというところ。

というところで、ドラフトを作成しました。お話ししたように、エシカルコンシューマーの基準というのが、企業そのものを評価するベースとなり、その企業がつくった食品をどう評価するかが、我々が作ったエシカルフード基準のドラフトということになります。ここからは、それぞれのスペシャリティを活用していただいて、ここはこうしたほうがいい、ああしたほうがいいという議論をしていきたいと思います。

(芝池)
山本さん、佐々木さん、藤田友紀子さん、ありがとうございました。みなさんも長くなりましたがありがとうございます。実は、蟹江さんだけ11時30分に退出しないといけないと伺っていますので、まず蟹江さん何かありますでしょうか。かなり項目が多かったのですが、こういう観点が抜けている、こういう項目が抜けている、といった不足を補う観点、議論をするところ、あきらかに抜いていいのではというところをフィードバックください。

(蟹江)
大変包括的なものをいただきありがとうございました。どう評価するか。全部入れていくと多すぎると思うし、何をどう重みづけをするかも大事。いや本当に包括的に入っていると思うけど、包括的すぎてこれを全部とって100項目とって100点満点としてひとつ1点として、何点かとするのか。それとも調達が大事なので調達を重みづけするのかというところを決めていくのが難しいという印象を受けました。そのあたりお考えを伺いたいと思います。

(芝池)
まずは包括的なリストをつくったところで、何を特に重視すべきかはバックグラウンドによっても変わってくると思うので、次回までにこのドラフトをブラッシュアップしたものをみなさんにお送りし、「これは必ず入れる項目」「これはなくてもいいが、あるとベター」などの評価を皆さんにしていただいて、それを事務局で集約し、どこが共通しているか、違いがあるかを可視化して、実際にどう重みづけをするか議論していきたいと考えています。

(蟹江)
なるほど。その時に、いろいろなサステナビリティの基準があります。そういうものをある程度参考にして、特に分野ごとに抜け落ちがないかとか、バランスが悪いとかを、今あるもののばらつきを見ながら見て行ったら参考になるのでいいかなと思いました。あとは、具体的に1つの項目を「やっているやっていない」で1点、0点とつけられればいいけど、中途半端なものがあったりします。フェアトレード認証をとっているかとっていないか。MUJIみたいに自分たちでやっている。それは中間に位置するかもしれないし、かなり精度の高いものになっているかもしない。そこは「えいや!」でやってしまうのもひとつの手だけど、できるだけ客観的に評価したほうがいいと思います。

(芝池)
瀧田さんに確認です。点数付のところでは、1、2、3点というふうに点数を変えていくのは難しいので、項目に対して「満たしている、満たしていない」で、その◯の数がどれだけあるといいか。しきい値の判断をしていく方針だったかと理解しているが、齟齬はないですか?

(瀧田)
そうですね。ただ、今のお話のように具体的に項目とそれに対する基準をどうつくっていくかや、次回以降のセッションでの皆さんの重み付けによって、もしかしたら◯の数が何個以上という考え方よりも、点数という考え方が出てこないとも限らないと思っています。ただ当初は、項目に対して満たした数でしきい値を決めて、◯何個以上がエシカルフードか決めていきたいと思っていました。

(芝池)
背景としては、点数付が難しいです。細かい点数付までをメーカーの人にお願いするか、事務局で点数づけるのが難しいので現実的なのは◯つけと思いました。瀧田さんの補足では、場合によっては点数つけも可能性としてはあるということです。

(藤田香)
ちなみに◯×をつけるのは、企業さん自らが行うのでしょうか?

(瀧田)
この項目に対して公開されている情報というのが少なく、企業の中にしかない情報が様々あります。この前提においてメーカーさんに採点頂きたいと考えていますが、作業負荷などもありハードルは高いと思います。

(藤田香)
メーカーによっては甘くつけるところと、辛くつけるところがあるだろうと思います。認証とかだとわかりやすいけど、認証を取っていないけど自社の基準で持続可能な調達としてやっているかどうかというものを、A社とB社でレベル感が違うと公平性が担保されないのではないでしょうか?

(瀧田)
仰るとおりです。そのご意見はメーカーさんからも出てきていて、真面目にやったメーカーが損をするようなことにならないのか、そこはかなり難しい点です。項目それに対する具体的な基準をどう具体的に設けていくのか。認証のところ、自社で宣言しているところをどう捉えていくのかなど課題はあると思っています。

(河口)
それに関して。先ほどの説明を聞いていて、食品会社の担当者は、これを観たら気が遠くなると思います。サステナビリティの勉強会でもSDGsをやらなくちゃいけないのは大変だ、という話になるくらいだから。日本の他の産業に比べても、食品会社のCSR<SDGsの取り組みはまだまだ遅れていると思います。

データがないのは、企業がそもそもその必要性を知らないし、情報を持っていないと思います。そういうところがほとんど。GRI、グローバルリボーティングイニシアチブのCSR報告書のガイドラインは最書2000年にできていますが。それはステークホルダーが開示を望むCSRの情報を網羅してて作ったら、非常に長いリストになっていました。皆で議論して「これもあれもあったほうがいいね」というのはそうなのですが、最終的にはそのリストはわかりやすく整理されました。GRIではコア指標、セカンダリ指標を分けていた。コアは必須項目、セカンダリは「魚をつくっているところはここだけ」とか、段階を経て評価できるような仕組みになっています。
なので、評価の方法として、初心者コース、中級者、上級者となれるように、段階をつくってあげる。必ず達成したいコア指標をつくり、そこが達成できていないところは申し訳ないけれど。しかし、そこができているところはセカンダリ指標を評価。そしてそれをまとめてエシカル度3、2、1というふうにするといいかも知れません。コアだけできているところは、まあエシカル。これは例えば2年、3年で改訂していくとして、今ならエシカルとされているところが、今後世の中的に当たり前になったらエシカルでもなんでもないといって外していく。こういうことはエコマークとかでもやってきました。シェアが何割以上になったらエコじゃないから外そうということをやってきたのでそういう設計を入れることを前提に何を選ぶのかとした方がいいと思います。

(芝池)
蟹江さんがもうすぐ退出ですので、一言ありますか。

(蟹江)
はい、今の話を深めていけばいいと思うけど、どういうふうに評価するか。基本コーナー、応用コーナーというように。業種によっても違うところがあるので、業種別と一般で出したほうがいいのかなとは思いました。あとは、どれだけカバーしているかというのはいろいろ基準をつくって、32ページの中で分かれているものは包括的だけど重なっているものあるので。これ、項目今いくつありますか?

(芝池)
企業と食品のところで重なりはあります。

(ペオ)
300以上ありますね。ヨーロッパでは普通だけど。

(蟹江)
ちょっときついなと思います。

(芝池)
蟹江先生、では良きタイミングで。ありがとうございました。ここで5分ほど休憩しましょうか。

(芝池)
共有した項目、全体に対して評価の仕方に関して意見と感想をもってくださっていると思うので、どう感じたかを共有するところからスタートしましょう。
(ペオ)
まず、チーム山本さんたちの説明が本当にすばらしかった。Very good! ありがたい。簡単に計算したら項目は300以上はあった。今日の参加者の一部にとって、一般の人にとっては、びっくりするものだろうけど参加者の一部はわかっていたとは思うし、ヨーロッパ人の私にとっても当たり前。ヨーロッパでは本当に普通。サステナビリティやエシカルの世界に関する運転免許のようなもの。以前にも説明したけど弊社は非常にめずらしい日本の少ない会社としてFSC認証をとっている。200の基準があり、これをクリアしなくちゃいけない。だからエコラベルとかにおいては普通。エシカルコンシューマーリストと同じように。

でも次に覚えてほしいのは、1年で300をつくったわけではないということ。1987年にスタートし、30年以上前から段階的に慣れながら、達成目標はあったと思うけど、最初は少ないポイントから、進化を通して段階的に。河口さんがおっしゃっていたとおり、慣れながら厳しくしていく。理由は2つ。

1つは最初からすべて知っているわけではない。人間として学び途中。日本人、ヨーロッパ人として。

もうひとつは、最初から厳しくすると熱心なところしか入ってこられない。多くの人が参加して入ってこられるも目標。だから大きな船に乗るために多くの人が入ってきやすい、でも包括的なポイントをする。私の提案は、いつか追いつきたい目標にするというものです。

最初の1年は30ポイントとか。1/10、来年は50項目にするなど再来年は100とか。そうすると入りやすいし、コントロールしやすい。こういうことをやると「再生可能エネルギーできてないのにどうしてポイントもらうの?」とか批判がくる。そういった批判がくるけど、実際は「三年以内に入れる予定です」など答えやすい。だから私はこれ、みなさんで大きく考えるとこうしたらいいと思う。

でもすばらしい説明で、希望がある。社内の人間も、「これできたら最高!」とドラフト見て言っていた。長期的には追いついたほうがいい目標であると私たちも話せました。

(芝池)
ありがとうございます。どのように進化していくかという道筋をデザインしていけるかということはひとつ大きな論点なので、詳しく話せればと思います。

(河口)
今、ペオさんがおっしゃっていたように、やる気を出させるのがこの仕組みのポイントで、「それじゃだめじゃん」とバッテンをつけることが目的ではなく、やる気を起こさせて成長しようという仕組みなので、コンセプトや気合いがあるだけでも○としようということです。

欧米のやり方は、ペオさんがおっしゃっていたように「方針がありますか」「体制がありますか」「目標がありますか」というところから。「足元0から始めないと3年後に10とか20にまできないじゃないか」というやり方です。日本の場合は、50ができた段階で「はい、私できてます」というのがやり方なのでできるまで黙っているというのが日本のやり方なんです。それだと大変なので、「3年くらいでこのくらいまでやります」という、やる気があるようなところから評価して3年後できていなければ落とす。できていたらもっと評価するというように、育てていける仕組みになるといいと思います。

それから、今日出していただいた指標というのは、時代を経て精緻化されていったということがCSRを90年代から見ている人にはわかるけど、今一気に横並びに出てきたものを見ると気が遠くなると思います。なので、300の指標は大事だけどその濃淡を考える。全部どこかに置いておくけど、濃淡の「濃のところはここ」と見せてあげないと。歴史的な経緯とか、最初はここからきて、だんだん広がっていくというのを見せてあげる。大きな幹の太い部分を見せてあげて、そこから派生して枝の部分がこうできるというように、第一段階、第二段階、第三段階というように項目を色分けできるといいと思います。

それから欧米の会社はやっているということですが、実は日本の食品会社も「安全」という面ではこういうことをすごくやっています。指標は違うけど、「たくさんクリアしなきゃいけないものをクリアする」というのは慣れています。頭にそこさえ入ればいいと思う。それから食品ではないけど、グリーン購入法というのが日本にはあって、官庁に対してグリーン製品の購入が義務化されています。紙ひとつとっても数十項目くらい基準があり、またボールペンとか文具などにもエコ基準があるというのは認識してもらいたいです。これは食品ではないけど、日本でやる場合の参考になると思うので。また、オリンピックでサステナブル調達基準というのがある。これをひとつのベンチマークというか、オリンピックではこういう基準をつくっている、「これがひとつコンセンサスを得た食のあり方ですね」というのを見せて、セットで基準の濃淡をつくるという組み合わせがいいかなと思いました。

(芝池)
グリーン購入ネットワーク、オリンピックのサステナブル調達基準というのも参考にするといいのではというところですね。

(藤田香)
今まさに河口さんがおっしゃっていたグリーン購入、オリンピックはたしかにそうです。いわれてみれば、農畜水産、パーム油、紙の調達基準があって、一個一個が5項目くらい。細かく見ていくと問題はあるけど、一個5項目くらいでそんな多くもないし、最初の一歩として包括的に見るのは役立つかと思いました。

(芝池)
メーカーがどう評価するかのご指摘いただきましたが、気になるところはありますか?

(藤田香)
最初の一歩が細かく分かれてしまうと公平性に差がでるけど、例えば「持続可能な調達方針をつくっていますか?」といったレベル感でスタートすれば、わりと公平に◯×をつけられるのかなと思いました。

(ペオ)
あとは、認証されている食品は優先したほうがいい。それらはすでに数百の基準をクリアしているから。目安として。現状ある認証をクリアしているということは、運転免許証と同じでその基準がしっかりしているから、すでに免許を持っているのと同じこと。安全。教育者になれることが大事といわれるスウェーデンでは企業が教育者になれることが大事といわれる。認証をポジティブにプッシュできる社会をと、思います。

(河口)
認証を取っているものは相互乗り入れみたいなイメージ。認証の比率を何年までにあげたいと目標をもっているところもあれば、がんばって認証を取ったけど担当者が変わるとなくなるという会社もあります。認証もっていれば相互乗り入れでもいいけど、別途会社の取り組みとしてちゃんとしているかは、裏でおさえておく必要がありますね。

(芝池)
それがエシカルコンシューマーでの企業基準にあたるところなんでしょうかね。

(藤田香)
たしかに認証は絶対に大事だと思うけど、私が企業と話をした感じでは、花王、不二製油、積水ハウスなどは全商品を認証で賄うのは難しいです。例えば、何年後までに100%にしますと言いつつ現在認証のとれていないものをどうするか。自分たちの基準をもって信頼できるところから調達したりトレーサビリティを調査したりしている。無印みたいに、自分たちの基準をもってやっているところが抜け落ちないように、やっていないよねとならないよう見ていく必要があると思います。
(ペオ)
例えばだけど、第三者認証を3点、社内認証を1点とかやっていけばいいバランス。

(河口)
たとえばRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証を買いたくてもまだパーム油の2割しかないので、まだ買えないという会社も多くあります。不二製油では、自分たちでトレーサビリティを確保してサステナブルと確かめています。る。RSPOは農家さんに認証をとってもらわなくちゃいけないので、実態をちゃんとするだけとはまた違うハードルがあります。トレーサビリティも単にトレースするだけでなく、そこで児童労働などの問題があるのを知ったら、そこで必ず対話をして変えていく。トレーサブルというのは、そういうのがあったらやるということになっていく。まずはトレーサビリティの確保は重要、その上で自分の会社として何をやっているか。認証がゴールドとすると、シルバー、銅は違う点を評価するというような濃淡がつけられるといいですね。

(ペオ)
SDGsでも169ポイントある。認証システムが含まれないフードロスとか、食品廃棄はここの中に入っているのでそこをポイント化するとか。

(芝池)
ありがとうございます。みなさんの中でメーカー側に近いのは中西さんだと思いますが、ちょっと視点を変えて、コメントいただけますか。

(中西)
メーカー側の独自基準という話です。有機的なものは生産元のサイズがない中で、企業側の評価でベターコットンとかが作られます。より楽な基準のほうに流れていく。より良い基準に向かわせたくて動いたけど、ソイコットンや有機の面積が増えていないというところもあります。だから自ら活動を広げていくということになるのですがそれがポジティブな基準でしっかりやっているところもあれば、業界基準とかで(森林などは多い)違法的な方法に流れてしまうこともあります。自社基準をどう評価するかについては大変だと思う。いいほうも悪い方もどちらもありますね。

重み付の話は重要。重み付けも、点数になると批判されている心理状況になりがちなので、これで社会の状態を良くする表現をすることは重要ポイントだと思います。うそをついてでも評価をよく見せるということではなく、自社の見直しにうまく使ってくださいということでアップデートしていく。自社でやるには加工食品にしても本当にいろいろあるので、自社では難しいところをこのスコアを基準にしていただき、ご自身たちで学んでいただくという機能があるといいんじゃないかと思いました。

(芝池)
ありがとうございます。森枝さんもどちらかというと使う側の立場になるかと思います。

(森枝)
そうですね。タイ料理屋や調味料販売など色々やっていますが、ただでさえカロリー計算やアレルギー表示を当たり前ですがやらないといけないです。そういうものにかかる人件費やコストはばかにならないので当たり前のことをやるだけでも、ある程度かかります。ひとつひとつの商品のデータがあり、そこに加えて、ひとつひとつの原料がエシカルであるかどうか。仕入れ先が同じでも今回の野菜の産地が違うから、もう一度全て調べなおすとか、ひとつひとつの商品全部にやるとなると作業として莫大です。現状求められる資料だけでもたくさんあるのに、そこにプラスでこれをやらなくてはいけないとなると、痺れると思いました。

社食のレストランをやっているときは近いものをと思っていたけど、千円のランチに落とし込むことや、消費者、小さい企業の労力を考えると、自分でやるのはしんどいと思います。大切なのはわかっているけど、仕事に落とし込むことを考えるとゾッとします。今伺った項目に「週48時間労働、プラス12時間」というのがありましたが、それを遵守しエシカルな基準をクリアした商品を、いくらで販売するのか、があると思います。

(ペオ)
だからこそ、第三者の認証システムがあってそこを任せる。その運営費を払うということになるのだと思います。

(森枝)
それはわかります。でもそのためには、商品の価格に上乗せしなくちゃいけません。同じような商品を半分くらいの値段で売る人がいるなら、安く売りたい気持ちになります。自社の制度をつくるというのもわかりますが、精神が分裂しそうです。

(芝池)
生々しい感想をありがとうございます。たしかに、使う側が「どよーん」となるのではなく、やる気を出して「一緒に成長していこう」と思えるような基準にしないといけないですね。

(森枝)
世の中の雰囲気もそうだし、シェフも五年前とかよりは興味を持ち始めているというのはあります。がんばらないと。

(河口)
いまの話を聞いていて思いましたけど、日本は潔癖性なのでやっぱり100%を求めてしまう。スパイスの一部だけでも違ったらこれだめとか。でもそんなことやっていたら回らないというのも現実的にあるので、FSCという紙の認証では、最初は「認証されたものを2割使っていたらOK」とかでした。

3.11のときには「5%じゃだめですかプロジェクト」をやりました。それは、福島でとれたオーガニックコットンのTシャツを販売するもので、そこで使われている福島のコットンは全体の5%。そのコットン自体は100%オーガニックではあるけど、全部福島産で作ったら一枚2万円になってしまう。しかし福島のオーガニックコットンTシャツという話をすると100%それを使っている普通思い込んでしまう。でも5%入るだけでもマーケットが広がり、それが認知されたら10、20%と広げていけたらいいと思いますがそういうプロセスが日本人はすごく苦手で0か100かで考えてしまう。

そこはペオさんが言っていたことや森枝さんのお話を考えると、少しでもいいから始めて広げてPDCAを回していく仕組みで、敷居は低いからと伝える。その代わりだんだんと改善していくということをしっかりわかるような立て付けをつくる。いちばん最初はそれが大事。ボタンの掛け違いのないように。

(ペオ)
あとは、もうすでにやっているところが有利になるようにはしたほうがいい。段階的にすると、自信がつくと思います。

(佐々木)
先ほど山本さんがおっしゃっていたように、ヨーロッパの基準は減点方式、今回作ったのは加点方式です。極論をいえば、全部目を通さなくても「これをやってるから◯」だけでもいい。とくに小さいところは、すべてをチェックすることは無理かもしれないけど、「少なくともうちの認識はこれ」というくらいの企業がここに入ってこられるようにしたいと思いました。

(平井)
みなさんのお話に共感して聞いていました。とくに河口さんの「企業が減点方式に見られる仕組みにのっかるのは、萎縮してしまう」というのはその通りだと思います。

側転ができる人がバク転をできるようになるスゴさもあるけど、今まで前転さえできなかったような人が、ぎこちないけど前転できるようになった成長もすばらしいと思います。そういう企業を消費者って応援したい。日本は潔癖症という意見もあったけど、がんばっている企業を応援したいという文化もあります。そこで「やっと前転できるようになった」という企業を応援できる仕組みがあるといいなと思う。海外のそういう事例、応援したくなる事例とかはないでしょうか?

(河口)
もう、エントリーしただけでも「すごい!」となるといいですね。「エントリーしてくれた企業」を「ありがとう!」と褒める。その先に厳しい競争はあるけど、ここはエントリーしてくれた企業ですと。エシカルのマインドがないとそもそもエントリーもしないから、エントリーしただけでもありがとうと、褒めてくれるといい。そのあとは「行きはよいよい」だけど。

(中西)
それ、すごく賛成です。ファーストステップを「おー!」とみんなで拍手してあげること。弊社ではうちの卸先の企業さんに、省エネに切り替えていただくという働きをしています。その中で、最初は始めるまでに時間かかるけど、数社そこからカーボンニュートラルの取り組みをすごい勢いで進める企業もある。今までやっていなかったけどそういう部署をつくって取り組むようになったとか。そういうところは、何もしなくても、うちよりすばらしいことに取り組むようになる。そのファーストステップをあえて意識付して進めるのはすごくいいと思います。

(ペオ)
環境報告があるかどうかという基準のひとつもあった。グリーン電力部があるかとか。「とにかく参加します!」があるといい。ハイブリッドシステムだといいかも。ヨーロッパのものと、日本はスタンプとか割引カードとかポイントを得ることを喜ぶから、グループメンタリティの良さもある。その両方。

(藤田香)
参加することがインセンティブになるのが第一歩にはいいですね。SBTイニシアチブ、TCFDコンソーシアムに参加しました、もちろんウォッシュじゃだめなので参加した以上は何年以内にというのはあるけど、エシカルフードコンソーシアムに参加しました。「何年以内にポイントをあげ、消費者にわかりやすく表示していきます」と意思表示することが、ニュースリリースになるくらいになるといい。そうすると、みんな喜んで参加する。会社としてもリリースを出そうとなると、美しいと思います。

(瀧田)
『エシカルフードアクションスコア』というのは、いきなりはスタートできないと思いますので、賛同者を集めてスモールスタートから始めたいと思っています。例えば「#エシカルフード同盟」というコンセプトで、いつもは競合同士かもしれないけど、手をとりあってエシカルを推進するという枠組みをつくっていきながら、参加する企業の皆さんも増えていき、ある程度の規模になったら『エシカルフードアクションスコア』のβ版になるような進め方を考えています。

そのとき課題となるのが、ある企業の方から指摘されたのですが、「自社の製品を自らエシカルと言うことはできない、したくない」ということがあります。エントリーをしてもらって、そこからひとつひとつの項目を考えよう、満たしていこうということなのですが、企業的にはファクトはいえるけど、そのファクトを総合してエシカルということは自らなかなか言えない。もしくはエシカルを宣言することは、自社内にそうでない商品もある中で謳いづらいというところがあると聞きます。ペオさん、どういうステップでスウェーデンは今のような状態になりましたか?

(ペオ)
やはり、当初は曖昧な入口があった。ホテルのエシカル認証も、朝ごはんの5%だけエシカルなら残りはそうではないものでも認定されていた。その次は、1、2年ごとにハードルを高くする。1回目は100の基準で、5年で2倍になった。やわらかいところでスタートしたら、高い目的も一緒に出す。ここまでは行きたいというところも出す。これは山本さんの意見も聞きたいと思います。

(山本)
最初からやわらかくなってはいけないけど、間口は広くなくちゃいけないということで、段階をつくるのがいいと思う。大手企業が自らエシカルといいたくないという現状がある。日本の組織は声を大きくいいことと言いたがらないというところですね。
僕はイギリスの「サステナブルフィッシュシティ」というプロジェクトについて論文に書きました。これは、ロンドンオリンピックが行われた時に、レストラン、ケータリング企業に、サステナブルフィッシュ、MSC、ASC認証のものとかを使ってもらおうと取り組んだ事例でした。「シティ」だから、ロンドン、マンチェスターとか市ごとに認定される。企業がMSC、ASC認証を使っている比率が高まっていたら、そのシティはサステナブルだと認定する。市に対しての認定です。その仕組みがすばらしい。

レストランやケータリング業者が自分で使っていますと宣言するだけでなく、ロンドンならロンドンのNPOなどエシカルのキャンペーナー組織、熱心な組織が、「うちの市はこんなんにサステナブルフィッシュを使っている」と言えるようにした。メーカーやレストランが「私たちやってます」だけでなく、自薦だけでなく他薦する。「あのレストランやってるよ」というので声を上げられるようにした。サステインという大きな組織がやったプロジェクトなんだけど、ローカルな組織が推薦するそれらを拾って、市を評価するということをやりました。最初はあまりプロジェクトに登録するところが少なかったけど、今は20以上の市が「うちはサステナブルフィッシュシティだ」と名乗りをあげている。

先ほど瀧田さんがいっていた「大手企業が自分で言いにくい」ということなら、他に言ってもらえばいいという話になります。誰がどういうふうに声をあげるかルールをつくる必要はありますが。

(河口)
あとはグローバルコンパクト、CSRのネットワーク。PRIはESG投資のネットワーク。グローバルコンパクトには10原則があり、これに賛同したCEOがサインして国連に送る。PRIは6原則。金融機関がESG投資をやっていくための6原則がある。

これらは、当初これができたときには、賛同して署名して送るだけでOKだったのが、だんだんと署名機関に対しレポート提出を義務付ける、できていないと除名にするようにする。そうやって少しずつハードルを上げていく。最初はただでサインするだけだったけど、実際何年かやっていって実態を促すためにハードルをあげる。

自分たちでエシカルと言うのは嫌だというのもわかる。価値判断が入ってきてしまう。PRIもそういう言葉を抜いている。「われわれは環境社会ガバダンスの観点を投資の中に入れると、自分たちのパフォーマンスがあげられると確信している。それがまわりまわって社会にいい影響をおよぼせる」という言い方にしている。「すごいいいことやっているでしょう!」というノリではなく、自分たちのため。財務状況のほかにそういう環境とかみるよとか、自分のパフォーマンスがよくなったとか。その結果として企業にはたらきかけもするから、世の中もよくなった。という控えめな表現になっています。

グローバルコンパクトに関しては、10原則。人権、労働はの原則は世界人権宣言やILOの原則からもってきて並べて、事業の中にこれを入れていきますわと非常に淡々としている。サステナビリティのこういう観点をサプライチェーンから考えていきます。環境のこともあるし、労働のこともあるし、そういうところでグローバルコンパクトの10の原則を借りてもいいと思う。それで自分たちがサステナブルな食を提供するためにがんばっていきます。とするとか。「エシカルでいいことやっているでしょ」ではないスタイル。

エシカルフードラボの原則に賛同してもらうことになると思いますが、賛同したのを見て第三者が「エシカルフードラボをやっているってエシカルだよね」とまわりに言ってもらう。とすると、参加しやすいかなと思いました。

(須賀)
たたき台をありがとうございます。エンドユーザーである消費者の啓発、市民教育につなげていくことなのだと考えます。もともと瀧田さんのご説明にあったように、消費者がどう動くのか可視化していきたいというのがあったので、正しい理解と共感を得て、企業のモチベーションにつながる応援を得て、最終的には一緒に育んでいくスコアになるといい。その視点でいくと、わかりやすさが重要。企業はこういう努力をしているから、これがよい買い方、食べ方になるんだなというのが、わかりやすいといいです。

ハードルを下げて入りやすくしていくのはもちろん重要ですが、サプライチェーンのプロセスの中で、「バランスよくがんばっている」という視点もあっていい。エシカルな企業活動を推進していくうえで、サステナビリティ戦略のなかで、極端な言い方をすると「調達だけがんばる」というのはないと思います。そのあたりがバランスよく、他社比較というより自社で、昨年前より全体のバランスをうまく底上げできたとか、自社の中でわかるようスコアリングできるといい。消費者サイドでいうと、有機の大豆を使った豆腐でも消泡剤をたっぷり使っている製品もある。最終的に消費者をだまさない、理解をうながしていく、共感も促していくというところで、全体のバランス感に加点があるといいなと思いました。

(芝池)
くまなくがんばる。と、そこでプラスになるといった取り組みということですね。井出さんのお声も聞きたいと思います。

(井出)
ありがとうございます。最近、スキンケア商品でサステナブルな商品がないか、試しているのですが、その中でSHIROという、北海道の、がごめ昆布を使った化粧水や酒粕とか、おもしろいやり方をしています。一回買っただけでホワイトステージに上がり、そこから購入金額に応じてシルバー、ゴールドと上がっていく。スコアリングだと、100点中2点となると日本人のメンタリティに合わない。そこで低い企業でも、○◯ステージといった呼び方で、企業が誇りに思えるプライドを思えるような。初心者だけどなんとかステージとかするといいと思います。

私は食品メーカーにいましたが、品質管理の部分では何度も監査が入る。BRCというイギリスの監査、本社からも入る。項目数は多いですけど、その部門の人は、それに慣れている。だから、会社のどの部署の人がこれを評価するのかは気になりました。

あとは、評価項目を日本基準にするのか、世界基準にするのか。たとえば日本は食品ごみなどを燃やせばいいと思っている。リサイクルコンポスト率は、OCED加盟国で最下位レベル。日本はそれで良しとしているところがある。廃棄物のところで、リサイクルの取り組み。サーマルリサイクルをリサイクルに入れているところも多い。でもそれは世界基準ではない。そう考えると項目を増やすのではなく、リサイクルの中でも深堀りするかどうか。

納入のところでも、メーカーにとって、納入業者は下に位置しがちです。ハラスメント、価格の値引きや作業の強要をしていないかといった項目も必要。リサイクルに関しては法律があるので、そういったものをいれたほうがいい。容器包装でプラを減らすとあるけど、プラが悪いのではなく使い捨てが問題。プラでなく紙を使えばということではなく、資源の使い方を減らさなくては、というところもある。生分解性といっても海では分解されないとか。そういうところをどこまで深掘りするか。その辺、世界基準にするのか、日本の「これくらいでいいよね」というところにするのか。

私は、間口を広げたほうがいいと思います。京都市で食べ残し0認証制度がある。8項目しかないから一気に800、900店舗が参加して広がっていったので、間口を広げるマインドと、世界基準にどれくらい日本が近づけるかという、両方の視点が大切だと思います。

(芝池)
リサイクル関連に関しては精緻化パートでぜひ井出さんにも入っていただきたいと思います。
(山本)
必須でしょう。逃しませんよ、井出さん。

(瀧田)
みなさん仰っていたように、目指すところは高くとすると国際的な枠組みの中での議論になると思います。ただステップとしては、日本がエシカル先進国より20年遅れているという現状からすると間口は広く、ステップを細かく刻んでいけるような進み方がいいのだと思います。ただ全体像で見ると日本にしかない独自の基準ではなく、先進国が歴史の中で示してきたものがあると思うので、そこは示すことが大切だと考えます。

(ペオ)
Very good。しかも迷ったら、いま世界がコンセンサスをとっているSDGsの169のターゲットをチェックすればいい。そこでグローバル的に正しいかをガイドラインにできる。日本での入口、でも基準は国際的というのがいい流れになると思います。

(河口)
日本生協連では「日生協COOP責任ある調達方針」がある。環境に配慮しましょう、人権に配慮しましょう、MSC買いましょう、など抽象的な文言ではあるけど、こういうものも参考にされるといい。エシカルに関心がある人は生協にも関心がある層だと思うので、まったく違う言語というより連携ができるといいと思いました。とくにCOOP生協、会員、宅配など単なる小売りと消費者というだけの関係ではないのでやれることもすごい。関心があるようなら担当の方をご紹介します。共通言語をもって進むといい。Tカードで買ったものが生協ではこうでつながっていたという話になるといいかも。

(ペオ)
共通言語はあるといいですね。

(芝池)
今日皆さんからフィードバックいただいて、評価の方向性がよりクリアになりました。加点方式がいいというのはひとつ。段階的に上がっていける仕組みが必要。段階の付け方がポイントになるということですね。次回は、優先順位づけ、重みづけをしようと考えていました。今すぐ満たすもの、今すぐは難しいけど将来的に満たすもの、など、次回までに考えを整理していただき、論点を整理したいと思います。段階の付け方、河口さんからはコア、セカンダリという話がありましたが、どうやって段階をつけたらいいか。ご意見ある方がいらっしゃったら伺って、次回に反映させたいと思います。どういうふうに段階をデザインするといいか、重み付の仕方をどう考えてもらったらいいか。
ひとつは時間軸。もし他にあれば。

(中西)
項目を増やすというより、中身について、日本ではどこまでやったらいいかという議論が必要なポイントだと思うので、議論したい項目を次回までに集めるのが良いかと思いました。

(芝池)
そもそも優先づけする前に、項目の詳細、先ほどのリサイクルのように議論をして認識や言葉の定義を揃えないといけないものがありますね。

(中西)
そうですね、表示のところなども議論しなくちゃいけない。日本の場合はあると思う。それをどこに設定してというのを合わせておいたほうがいいかもしれません。

(芝池)
うまくまとめられるように事務局でがんばります。

(山本)
エクセルのデータに備考欄をつくっています。例えば新しく項目を作ってもらってもいいし、議論を深めるにしても重み付するにしても、重要に思っているのはこれだというところをつけてもらう。僕らがつくったところに、重要度が高いものはここ、というのをつけて、優先度高いとかをマッピングすると見えてくるものがあります。会話でやっていくとまとまらないというのがあるので、次回はマイルストーンを決めてやっていくのがいいのではと思います。

(芝池)
ドラフトが完成する前の段階でつけられるのでは? ということですよね。どこに関心をもっているかを可視化して、わかりやすく、議論もしやすいということですよね。

(山本)
そうですね。もしかしたらあとはこの項目にないものを新しく追加しなくてはいけないというときにはドラフトベースだとあれだけど。なんらかの形でメモをいただくようにすればいいかと。

(芝池)
今日みなさんのお話を伺っていると、項目で圧倒的に不足して問題であるというところはなさそうですね。今のドラフトをベースにブラッシュアップする方法で問題ないかと思いました。

(山本)
何を重要視するかは皆さんにいただく必要がありますね。

(瀧田)
今伺っていて、現時点でいただいてもよさそうです。追加項目というよりは、議論を深めていく方向性。もしくはこの項目をどうステークホルダーにコミュニケーションしていくのかが論点になると思う。現時点のドラフトで、皆さんそれぞれ専門分野も踏まえて重要視するところを先にいただいたほうがよさそういう印象があります。本日のプレセッションを踏まえて、ドラフトに対してそれぞれの観点での重要なものを先に頂く方が良いと思いました。

(山本)
いいと思います。生協の基準がある、大地を守る会、らでぃっしゅぼーやとか、そういうところを知っている人に記入してほしいという思いもあります。

(河口)
コア項目、これは外せないものをお出しして、それをみなさん分集めると、それなりに集約されるというところでしょうかね。

(芝池)
これは絶対外せない、というところを先にいただく。時間軸の話を入れると論点がずれてややこしくなりそうなので、まずは何が絶対必要なのかをあきらかにし、項目ごとに定義の議論が必要なところは議論する、認識を揃えておく。次の段階で、階段をどうデザインしていくかを第三段階で設計していくという感じでしょうか。

(藤田香)
これは外せないというのは、◯をつけたらいいのか? 数も10個なのか50個なのか。

(瀧田)
そうですね、きちんと整理してメールします。

(芝池)
有意義な時間になりました。もし何もなければ今日はクロージングします。

(井出)
ひとつ質問です。食品の栄養バランスのような観点はこの中のどこに入るのでしょうか?見つけられなかったです。もしくは加えてもいいのですか。例えば、1食で2000キロカロリー以上あるようなカップ麺などは、私はエシカルではないと思っているので、ニュートリションバランスもポイントかなと思いました。

(山本)
なるほど。おそらく無責任なマーケティングのところにも触れていると思うし、製造の部分にも触れていると思います。どうしたらいいかな。考えます。

(河口)
いまの話でいうと、シンガポールで行ったPRIの国際会議に出席したことがあります。パームオイルの話は投資家も関心が高い。インドネシア政府の人やNGOの人が出てきて、そういうのにも取り組んでいますといった話がありました。欧米の企業が、持続可能なパーム油に積極的に取り組んでいることを紹介し、その場は盛り上がった最後に、「すばらしい取り組みしているけど最終的につくっているのはジャンクフードだよね」とコメントがあって会場がシーンとなってしまった。ちゃんとしたパームオイルを使ってジャンクフードをつくる。仰る通り矛盾なんですよね。ジャンクフードは一定量必要とは思いますが、ジャンクフードを正当化するのに利用するならどうでしょうね。井出さんの点は、ゆくゆくでしょうか。

(佐々木)
森永、カルビーが手をあげるか。というところですよね。

(河口)
カルビーは取り組んでいるので手をあげると思います。カルビーが言うには、彼らはジャンクフードではなく野菜や果物をそのままをあげているだけ、余計なものはいれていない。混ぜているわけではないのでジャンクフードの会社というイメージを脱皮したいと思います。

(ペオ)
世界でもっともサステナブルな企業といわれているのはスウエーデンのハンバーガーチェーン。以前はジャンクフードだったけど風力でベジバーガーつくったり、フェアトレードの材料を使ったりとか。だんだん変わっていった事例があります。

(森枝)
パームオイルってポジティブの話ですか、ネガティブな話ですか?

(河口)
パームオイルに関して、よりサスティナブルなパームオイルにシフトしているよとポジティブにとりあげている話。

(ぺオ)
パームオイルの認証システムがある。

(森枝)
なるほど。ボルネオの奥地にいったときは、パーム林がこっちまできて生物多様性が失われているから良くないという、現地の伝統的なところの話では良くないイメージでした。

(河口)
急拡大していることが基本的に環境上悪とされます。もっとも面積あたりの油が多いから、大豆なんかの8倍とれる。狭い面積で油をとるとなるとパームオイルが一番効率が良いとならざるをえない。それが熱帯林を開墾し森林破壊し耕地て広げていくのがまずいでしょとなって。さらに違法にどんどん伐採しているのは森林破壊であり、良くないので。
それを止める方法で油をとる、という風に進んでいっています。

(ぺオ)
あとは、ロゴ。エシカルフードラボのロゴはエシカルではない。鹿がいるから。今のロゴのままなら弊社は使うことができない。アフリカでも活動しているから。鹿は取ってほしい。

(瀧田)
野生動物に関しての考え方も重要な議論点ですよね。認識しています。

(ペオ)
今度議論しましょう。今日は残り30秒。

(瀧田)
この壮大なドラフトを元にどういう対話になるのかイメージがつきませんでしたが、とても前向きで意義のある対話になりました。もともと考えていたステップもより良い方向で進められると思うので、改めて事務局で整理して、ご連絡します。

次回のセッションも楽しみです。引き続きよろしくお願いいたします。ランチの時間ですので、ぴったりに終わります。ありがとうございました。

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