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「エシカルフード基準」セッション対話録 第1回

エシカルフード・キックオフセッションDay1(2021年3月18日15-17時)

「エシカルフードの定義を検討する」
参加メンバー:五十音順
井出留美さん
蟹江憲史さん
河口眞理子さん
佐々木ひろこさん
須賀智子さん
中西悦子さん
平井巧さん
藤田香さん
藤田友紀子さん
ぺオ・エクベリさん
森枝幹さん
山本謙治さん
「Tカードみんなのエシカルフードラボ」事務局メンバー


A:名前(敬称略)
B:活動内容
C:「あなたが考える持続可能な社会とは?」

1
A
井出留美(株式会社office3.11)
B
食品企業およびフードバンクでの広報責任者としての勤務経験に基づく食品ロス問題の啓発や具体的な食品ロス削減策の提案、書籍・記事の執筆。
C
「食べ物を人と同じように考える社会」
食品はどんどん新製品を生み出され、終売するが、食べ物を人におきかえると、どんどん産んで、どんどん殺すことはできないはず。そもそも食品は命から生まれたもので、ひとつの食べ物にいくつもの命や労働時間が結集している。それを人と同じように考える社会が、持続可能な社会だと思う。

2
A
蟹江憲史(慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科教授)
B 
国際関係論、地球システム・ガバナンスが専門。国連におけるSDGs策定に構想段階から参画。SDGs研究の第一人者であり、研究と実践の両立を図る。国連Global Sustainable Development Report の2023年版執筆の独立科学者15人に選ばれている。
C
「SDGsを実現でき、その先どうするかを考えられる社会」
SDGsの実現は大前提。その先に、個人や組織の目標がある。今はまだSDGsが実現できていないが、SDGsが常識で、その先の何かを考えていける未来であるという状態が、持続可能な社会。そのような未来にするためには、“ひとりひとりの幸せ”が必要。

3
A
河口眞理子(立教大学・不二製油グループ本社株式会社) 
B
証券系シンクタンクにて20年以上にわたり企業と金融のサステナビリティ領域であるCSR、ESG投資についての調査研究、および企業や投資家向けアドバイスを行う。10年前より消費のサステナビリティ、エシカル消費についての調査研究を行う。2020年4月より不二製油グループ本社にて、食の立場からサステナビリティ推進を目指す。
C
「生かされていることを、すべての人が感謝できる社会」
人間が地球で生かされていることを理解し、謙虚に感謝できる社会。

4
A
佐々木ひろこ(一般社団法人Chefs for the Blue) 
B
水産資源の持続的な生産・利用に関する啓発活動や、広く飲食業界を巻き込んだ食のエシカル消費推進活動、国内外のガストロノミーとサステナビリティ分野に関する記事を執筆。
C
「食文化を将来につなげていける社会」
その土地土地の食を文化とともにつなげていくことが最大のミッション。文化とともに生きていくためには、食をヘルシーに整えていく必要がある。

5
A
須賀智子(株式会社料理通信社) 
B
食を活用したカリキュラム・デザインによる、生涯学習としてのESD(Education for Sustainable Development)推進が専門。
C
「明日に希望をもって今日を生きていける社会」
明日に希望をもって今日を生きていける社会が将来にわたって続いていく社会。そういった社会のために、自分が主語になってどう築いていけるか、なにができるかを考える。

6
A
中西悦子(パタゴニア日本支社) 
B
環境社会アクティビズムが専門。気候危機や生物多様性など環境・社会テーマのキャンペーン戦略、ステークホルダーコミュニケーション、エンゲージメント等関係構築、共創の実践を担う。
C
「人と生態系を犠牲にしない社会」
SDGsウエディングケーキ(生物圏のうえに社会圏があり、さらにその上に経済圏があるという縮図)のいちばん下の段(生物圏の目標「安全な水とトイレを世界中に」「気候変動に具体的な対策を」「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさも守ろう」)を、多くの人と共有することが大事。

7
A
平井巧(foodskole) 
B
広告代理店、学校現場での教育経験をもとに、「食、エンタメ、学習」をキーワードとしたコンテンツ創出やクリエイティブ制作、プロジェクトなどを推進。
C
「将来に夢をもてる社会」
ネガティブなニュースを憂うだけでなく、子どもたちと将来に夢をもてる話をしたい。ひとつ課題が解決しても新たな次の課題が出てくるものだが、常に夢のある話題もしていきたい。それが持続可能な社会の土台の一旦になるはず。

8
A
藤田香
B
エディター。SDGsやESGをベースにした企業の生物多様性・自然資本経営、地方創生が専門。
C
「コミュニティが持続可能である社会」
サプライチェーンの中でも、農村や漁村など、生産者のコミュニティが持続可能に成り立っていることは重要。環境や種といったことだけでなく、人間がそのコミュニティで幸せと思える状態にあることが、持続可能な社会である。

9
A
藤田友紀子(株式会社こだわりや)
B
国内産・外国産の自然食・オーガニック食品の専門小売店『こだわりや』にて、27年間バイヤーとして商品開発、地域産品発掘、MDに従事。オーガニック、ナチュラル、サステナブル、健康、環境保全、社会貢献をキーワードに、商品を展開。
C
「やさしさ、思いやり、丁寧な暮らし、生産者、自然、子どもを大切にする社会」
やさしさ、思いやり、丁寧な暮らし、生産者、自然、子どもを大切にする社会だけが、環境や人を守ることにつながる。食を通して、そういった循環をつくれることが持続可能。

10
A
ぺオ・エクベリ(株式会社ワンプラネット・カフェ) 
B
グローバルなサステナビリティ教育者・事業家。スウェーデン出身で、会社はスウェーデン、日本、ザンビアで活動。
C
「原理原則に基づき、環境循環する社会」
スウエーデンはサステナビリティで1位の国。現在、スウェーデンではこういった「持続可能な社会とは?」という質問はない。なぜなら、世界的にはすでに定義がなされ、環境循環が共有されているから。いちごのショートケーキをつくることに例えると、そのレシピはもう科学的に定められている。原理原則、思想、ルールを理解し、環境循環によって、よりよい経済、社会になるということを知れば、それをどう楽しむかを考えることができるようになる。

11
A
森枝幹(CHOMPOO) 
B
料理人。現在はタイ料理店『チョンプー』のプロデュースを行う。フードマガジンの発行や未利用魚を使った商品開発をするなど、持続可能な食のありかたについて、従来の料理人の枠にとらわれない実践及び発信をしている。
C
「おいしさの感覚を拡張する社会」
ひとつのものに価値が集中してしまうと、その資源を枯渇させることにつながるので、おいしいという感覚や価値の拡張ができる社会。

12
A
山本謙治(株式会社グッドテーブルズ)
B
持続的な農畜産物の生産・流通領域でのコンサルティングや、エシカル消費におけるキャンペイナーの役割の研究、全国のエシカルフードに関するWebメディア『エシカルはおいしい‼』を運営。
C
「消費者だけでなく、生産者も流通もハッピーな社会」
今の日本は、他の国にくらべて消費者にいちばん権力がある社会になっているが、消費者だけが恵まれる社会ではなく、生産者、流通もサプライチェーンにかかわる全員がハッピーであることが大事で、これが持続可能な社会といえる。


自己紹介のあと、「持続可能な社会の実現に向けて、あなたが暮らしにおいて大切にしていることは?」という問いで意見交換。
12人の有識者が2グループに分かれ、対話を行った。

(グループ1)
井出
須賀
中西
藤田友紀子
ぺオ 
山本

(問い)
持続可能な社会の実現に向けて、あなたが暮らしにおいて大切にしていることは?

(山本)
商品を購入するときの価格を考慮すること。それは安いものを買うといった意味ではなく、それを購入することによって生産者や流通にどれだけ取り分がいくのかを考えるということ。利益の分配が公正かどうかは、持続可能性にとって非常に重要です。

(井出)
問いに対するアンサーのキーワードが3つ。

1はかる
2すてない
3資源化する

自分が出したゴミの重さを、家庭用の生ゴミ処理機にかける。ビフォーアフターで計っています。その回数、これまでに860回ほど。トータルで214kgほど減らすことに成功しました。日本には、世界のゴミ焼却施設の半分以上があるため、とにかく燃やせばOKと考える人が多いが、生ゴミは80%が水分です。「見える化」するためにも、はかることは大切。次に、捨てないでコンポストにし、資源化することを心がけています。

(ペオ)
はかること、見える化は非常に大事。ヨーロッパでもいわれているのが「はかることをしないサステナビリティは、体重計のないダイエットのようなもの」ということ。SDGsにも、進捗状況をはかることが大切とされています。エシカルは、統計やポイントシステムなどで「見える化」することが大事。

(須賀)
「汚れたパッケージをプラごみにいれて*リサイクルされている?」「ディスポーザーに入れればゴミが消える?」というように、自分の行動の先に何があるのか、想像力をもつことが大切。また、商品を購入するときに一度たちどまって「これって必要か?」を考えます。代替えできるものや、冷蔵庫に残っているものがないかと確認、ひと工夫することは、エシカルの知識レベルに関係なくできることです。

(中西)
環境だけでなく、いろいろなものを再生していくという考えをもち、自分の暮らしのなかで楽しんでいます。修理など、長く使って手直しをしながらものとの関係性を深くするということは、楽しいこと。それによって生活と結びつけて考えることができます。また、作物を育てるなど土にふれることは、小さなことながら環境再生につながる大きなアクションだと知りました。

(山本)
土にふれることは重要ですよね。

(藤田友紀子)
私は小売店に勤めているため、消費者の方々と常に隣り合わせです。レジ袋が無料化になる前は、水物袋を含め「袋を使いすぎ」という方もいれば、逆の方もいました。お客様との小さな会話はすごく大事だということは、販売の現場で日々感じていることです。また、適正価格という考え方は非常に重要。小売店は、適正、公正な価格の考え方を伝えることや、その価格で消費者に買ってもらえるよう努力する必要があると思います。

(ペオ)
日本では、これまでひとりあたり年間約300枚のレジ袋を使用していました。スウェーデンでは年間約70枚。小売業界やお店の人は、エシカルの教育者にならないといけないと思っています。

日本では、安心、安全、おいしい、ということはよく言われています。これは、消費者が口に入れたときのおいしさや安全性に言及したもの。でも、例えばバナナなら、生産者であるアフリカの農家にとっておいしいか、安全かどうかを考えることも大切です。

日本では、身近なものやことで何ができるかを考える「インサイドアウト」が広まっていますが、世界で何が起きているかを考えながら、自分の生活に落とし込む「アウトサイドイン」の目線も大切。

(山本)
ペオさんに伺います。ヨーロッパは、日本に比べてエシカルな購買行動をする消費者は多い。ヨーロッパがそういうふうになったきっかけは? どんなステップを踏んでいったのでしょうか?

(ペオ)
それは教育です。ヨーロッパでは、「何が環境にいいか」ではなく「何が環境に正しいのか」、そのルールとアウトサイドインの考え方を教育されます。というのも、ヨーロッパは国々が陸続きでまわりの国がよく見えるし、隣の国への影響も大きい。例えば、自分が食べている肉が温暖化につながり、別の国の砂漠化の原因になることもある。スウェーデンも、「今日からでもできることは何か」といったインサイドアウトの考え方が多かったのですが、それがどう世界に影響するかという考えをとりいれると、社会的責任から世界的責任になっていきます。いまのSDGsがまさにそう。世界的責任はいい言葉だと思います。

(中西)
パタゴニアの店頭では、オーガニックコットンのウエアを販売するときに「このウエアは皮膚に安全か、子どもにとって安全か」という問い合わせが多くありました。つまり、私にとって安全かどうかですよね。でも、農場にとって安全かといった生産者側に質問が及ぶことはほとんどありませんでした。以前は、少し先を想像するのが難しかったのかもしれませんが、現在はSNSによって世界の様子を簡単に知れるようになっているので、そこを自分の頭で結びつけることをしていないのかも。自分と外を結ぶ、つなげやすくする何かがあるといいのですが。

(ペオ)
自分にとって安全、おいしいを考えられるのは日本の良さ。それが世界一上手な人たちだと思います。それを認めながら、外の世界への影響を考えに加えることができればいいですよね。自分にとって安全なコットンが、農薬で苦しめられる生産者のものでなければいい。両方が揃えば「ビンゴ!」と考えられるようになるとベストです。

(藤田友紀子)
ヨーロッパの人は、自分の安全ももちろんありますが、環境や子ども、社会のためになっているかということを訴えかけます。これを買うことで、自分の体にいいものをつくってくれている生産者、供給してくれている流通を応援するという気持ちでものを購入することができるといいですね。

(グループ2)
蟹江
河口
佐々木
平井
藤田香
森枝

(問い)
持続可能な社会の実現に向けて、あなたが暮らしにおいて大切にしていることは?

(平井)
こういう問題に取り組んでいると病んでしまう人もいるので、ジムに通う、料理を作るなど、できるケアで自分自身の健康も大切にしています。サステナビリティを発信する立場なのに、自分が倒れていてはいけない。

(河口)
私の母が自然食オタクで、小さい頃、オレンジジュースはポンジュースしか飲ませてもらえませんでした。化学調味料や魚肉ソーセージは毒だと言われて育ったので、加工食品は買わず自分で作ります。フライパンをいらない紙で拭くこと、米のとぎ汁は庭にまくといった自分の祖父母がやっていたようなことをしています。また、日々の自然の移ろいを大事にしていて、2年前から俳句をはじめました。俳句を作ろうとすると自然を観察していることに気づきます。

(藤田香)
買い物の際に、環境に配慮しているか確認します。国産のもの、認証マークのついているものを見るということをしています。

(佐々木)
私は、手触りを感じことを大事にするというか、自分の手元に来るまでにどういう経路を通っているかわかる商品が気になります。ただ、それだけを追い求めるとクレイジーになるので寛容の心も持つことや、自分が出来る範囲、心に余裕が持てる範囲で行うのも大事かと。

(森枝)
僕は、毎週土曜日ファーマーズマーケットで知っている生産者のものを買っています。

(蟹江)
マイバックは持っていますが、それ以外は本当に普通の人。プラスチックや使い捨てを減らすというのは、暮らしの中では普段から当たり前と思ってやっているので、無理してこれをやらなきゃというのはあまりないのかもしれません。

(藤田香)
蟹江さんは、子育てに力を入れてらっしゃるのでは?

(蟹江)
子どもは優先して考えていますね。下の子は保育園送り迎え、朝食づくりはいつも自分がやっています。勉強も見ていますね。でも無理してやっているというより、成長していく上で親との接触は大事だと思うからやっているだけの話。どちらかというと好きでやっています。
 
(森枝)
みなさん元の知識が深いから、それを元に行動しているのでは? 行動よりも、「知る」という情報を入れる行為が実はいちばん大事なのかもしれません。

(河口)
たしかに小学生の頃からこれで育っているから知識はありますが、「それは毒だ!」「洗剤は何を使っている?」といったことは、誰にでも言ってしまうと逆効果。知りたい人に対してならいいのですが、その人に合わせた伝え方も必要だと思います。自分の子なら習慣になりますが、それを他人に強制するのは難しい。

(平井)
私も伝え方を意識しています。身近なところでは、妻には「どうやって言えば伝わるかな」など、相手の考えも尊重しながら、相手にどう伝えるかを自然と練習しているところがあります。

続いてメンバーが入れかわり、次の対話へ。

(グループ1)
井出
平井
藤田友紀子
ペオ
森枝
山本

(問い)
持続可能な社会の実現に向けて、みんなが暮らしにおいて大事にするといいことは?

(森枝)(平井)
さきほどの「持続可能な社会の実現に向けて、自分が暮らしにおいて大事にしていることは?」の議題では、グループ2では“無理しない”というのも大切という話が出ました。

(井出)
グループ1のほうでは、価格が適正であるかということ、エシカルな取り組みがどれだけ達成できたか、例えばゴミの量をどれだけ減らせたかなど、はかることの大切さについて話題があがりました。また、その商品が、自分にとって安心安全かというだけでなく、社会へのインパクトがどうあるかを考えることも大切など。

適正価格という話が出ましたが、最近、経済産業省が電子タグの実証実験をしました。一般的には定価があるとそこから下がっていきますが、今回の実験では、野菜や果物、デイリー食品で鮮度の高いものを定価より値上げしました。その実験では、定価より高くても必ず毎回その商品を選ぶ消費者がいるということがわかりました。それは、定価より値上げしたものでも「適正価格」と考える消費者がいるということ。

また、「賞味期限切れ専門店」というのがありますが、日本の場合は賞味期限切れの商品は半額以下や97%引きといった極端な値引きをします。でもデンマーク発祥の賞味期限スーパーでは、20%引きからはじめ25%、30%くらいまでしか下げず、その利益をアフリカなど困っている国に配分するということをやっています。消費者だけがうれしいというより、そのほうが「適正」な価格かなとも思います。

(ペオ)
日本ほど、価格競争をやっている国はありません。本来は店側が教育者にならないといけないけど、それをしていない。例えばこのクッキーを買うとアフリカの子が学校に行くのを助ける、貧困を助けることができるといったことを伝えれば、そこまで価格競争にはならないはず。教育は大事です。

(山本)
日本はスーパーの競争が激しいという側面もあります。チェーンのスーパーは、日本には2000以上あります。チェーンの競争が激しいから、「1円でも安く売らないと」というプレッシャーが大きい。でもそういう状況は、価格において消費者にはハッピーをもたらします。それによって「安くないと買わない」という消費者をつくってしまったのも事実。だからもちろん教育も大事ですが、どこかで、サプライチェーンの中にいる売り手が「これ以上は安くしません、これがサステナブルな価格です」と決めていく仕組みが必要。今回、Tカードのプロジェクトに期待するのはこの部分です。

(ペオ)
「サステナブルな価格」というのはすごくいい。自分、人間、世界、環境にとってもサステナブルな価格を考えていく。表現としてすばらしいと思います。日本人は相手の気持ちを考えられる国民性をもっています。テレビを見て泣くのは心が美しい証拠。「迷惑をかけたくない」「失礼します」「ごめんください」「つまらないものですけど」「よかったら」という言葉からも、相手の気持ちを考えていることが伺えます。だから、そういう国民性をもった日本人が、ひとたび世界とつながる感覚をもてたら、非常におもしろいことになります。すでに日本の若者は消費に対してエシカルかどうか、ビーガンか、サポートになるかというところを配慮しています。

(山本)
若い世代には期待したいですね。SDGsの知名度を年代別に調査したアンケートでは、40代、50代よりも10代のほうが圧倒的に言葉を知っていました。それはSDGsを学校で習っているから。ただ、その若い世代が今後、購買を積極的にできる所得を得られるか? という問題はあります。今は若者ほど、お金がないという状況。

(藤田友紀子)
「サステナブルな価格」という表現、店頭で使いたいと思います。高い安いより「私たちのお店の商品はサステナブルな価格です」のほうが、伝わりやすそうです。

コロナということもあり、購買層の変化はお店でも見られます。これまで「こだわりや」のボリュームゾーンは50〜70代の女性でした。それが、若い人が健康志向ということもあり、20〜30代女性が増えている傾向です。コロナ禍で高齢者が外に出にくいという現状もあります。でも男女を問わず若い人が興味をもって買いに来てくれるのは感じます。

(森枝)
飲食店では、「エシカルフードを活用している」といって集客する方法もあると思いますが、興味のない人は、まだまだ値段やボリュームを求める人が多いと感じます。

こういう話をしていて気になったのは、若い世代に期待というのはわかりますが、日本の人口ピラミッドからいくと、中高年以上の世代も変わらないといけないと思います。そこをどう教育していくか、親世代がどう変われるかを同時に考えていかないと。課題は現在目の前にあるので。

(ペオ)
スウェーデンでこういった議論を50年やってきて、ようやくSDGsという国際ターゲットができましたが、SDGsは子どもではなく大人の宿題。やるべきは大人ですよね。そこにチャンスがあるのではないかとも思います。

続いてメンバーが入れかわり、次の議題へ。

(グループ2)
蟹江
河口
佐々木
須賀
中西
藤田香

(問い)
持続可能な社会の実現に向けて、みんなが暮らしにおいて大事にするといいことは?

(藤田香)
「みんな」というのは難しい。雑誌でエシカルに関する記事も書いていますが、“誰”に向けて“どんなこと”をというのは、読者が経営者なのか消費者なのかで変わる。読者を想定しながら表現や事例、つかみの言葉は変えます。この特集は誰に向けてどんなことを書くのか、記事にするときは編集会議でいちばん最初に説明しないといけない。同じ「持続可能な社会」を想定していても、伝え方は相手によって変えないといけないと思います。

(佐々木)
同じ話題でも、雑誌によって全然違う書き方にしないといけないというのはありますね。どこからつかんでいくのか、アングルも変えていかないと読んでもらえません。イベントや講演をするときも同じですが、読み手や聞き手が大事だと思っていることに、寄せていくことが大切。
 
(蟹江)
私は、ものがどこから来てどこに行くのかを最近よく考えます。どうリサイクルされていくのか、どう捨てられていくのか。みんなにも考えてもらいたいと思うので、自分はそれを大切にしています。これなら、あまり気張らなくてもみんなができる。想像力をふくらませてもらいたいと思います。そのためにも、感動することって実は大事。映画やアート作品、本などで「これすごいな!」と感動することが、プラゴミの動きにもつながったというように、感動することがサステナブルと結びつくと、世界がすごく変わっていくのかもしれません。
 
(河口)
私も、感動することは大事だと思います。やはり、押しつけがましいのはよくないし、「これ、やってるのすごいでしょ!」というより、やっていて楽しいことを見せるほうが興味を持つ人はいると思います。コンポストなら、「生ごみ臭くなくていいのよ!」みたいなことですよね。プラスプーンを減らそうだけでなく、海洋プラの問題とセットで話をすることも大事。

(中西)
日本人は小さな幸せを見つけるのが得意ですよね。自分の肌にいいオーガニックコットンから、その先の課題を知ってもらう。意識が高くなくても、行動変容に持って行けるといいなと思います。それが、今回のエシカルフードラボに期待することでもあります。

(須賀)
日々当たり前にゴミを捨てるといった自分自身の消費行動に対して、そこに何が繋がっているか想像力を持てるかがポイントになってくると思います。意識と行動に大きな隔たりがあって、知るということと行動することの乖離を日々感じています。知識そのものもですが、知り方も大切。知る時に驚きを感じるとか、自分の手で何かできた体感を得るといった、体感をともなった「知る」が、行動変容にもつながるのだと思います。能動的な知り方をどうすれば実現できるか考える必要がありそう。

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