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【読書】「残酷人生論」池田 晶子(著)

タイトルに「人生論」とあるが、世渡り術を述べたものではない。これは「考える書」である。

考えることは、悩むことではない。「多くの人が悩んでしまうのは、きちんと考えられていないからだ」と著者は指摘する。なぜなら、悩むよりも、悩まれている事柄「そのもの」のほうを先に考えられていなければならないからだ。

つまり、そもそも「わからないこと」を人は悩むことができないのである。多くの人が悩んでしまうのは、何かを「わかっている」と思い込んでいるからにほかならない。では、一体何をわかっていると思い込んでいるのか。

それを明らかにするのが、「考える」ことである。考えるためには、その「存在」を疑わねばならない。なぜなら正当な懐疑によってこそ、正当な確信は得られるからだ。

自己を疑うことは、自己を認識することを意味する。
思い込みから離れ、正当な確信を得るには、相当の努力が必要なのだ。善きものに向かって努力すること、それこそ本来の幸福なのだと著者は言う。

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