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『夢の涯てまでも』(ヴィム・ヴェンダース、1991)

淀川長治が「この人、変になっちゃったのね」と断罪した歴史的駄作だが思えばWWで胸を打たれたことはあまりないのでむしろ好感触。あまりに西洋中心主義とはいえ世界を旅した果てに見える/見えない支離滅裂なデジタルイメージには感慨さえ覚えた。和室でここぞとばかりに渾身の尺八が流れようとも許してやってもいい。スタジオシステム崩壊後を文字どおりさすらいながら生きてきた彼にとって、作りながら壊していき、生まれながら死んでいく自己矛盾的なこの映画は避けては通れぬ道だったのかもしれない。そもそも齢100を迎える映画というメディアそれ自体が世紀末前後にそうした諸相を見せていた訳だから(『レベル5』や『ロスト・ハイウェイ』)、巧拙を越えて90年代映画代表には入る。ロビー・ミューラーとはこれで絶縁。女に現を抜かす畏友に堪えられなかったのだろう。

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