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『ショーイング・アップ』(ケリー・ライカート、2022)

巧いがライカートでは下の方かと思っているとラスト5分でしっかり感動させられる。創造の向こう側を見てしまい半ば白痴と化した弟が癒えた鳩を放ち、玄関口で大勢がその行方を見る(ドライヤー『奇跡』とブレッソン『ラルジャン』)。
他方、人が言うほどショットの作家ではないだろうという意識も離れない。むしろ編集のユルさこそが貴重と感じる。たとえば展示会場内の会話シーンに子供が鳩のテーピングを剥がすショットが唐突に2度挟まれる。同一画面ではなく単独の画面であるから編集段階でそのようにしたのは確かだと思う。すると鳩が像を壊しやしないかというサスペンスが当たり前のように生まれるが、見ようによってはこれは荒い編集とも言える。要するにカッティングの動機が不明瞭なのだ。逆言すれば『リバー・オブ・グラス』の作家がこうも呆気ない編集を選んだとも見える。いずれにせよサクッとこんなのもできるというわけで、誉めそやす類の映画ではない。むしろ作品同様ユルく味わいたい。

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