見出し画像

【旅日記】シルクロードの旅、はじまりはいつも晴れ(6) ―敦煌・鳴沙山編―

真昼の沙漠をとぼとぼと……

敦煌にやってきた我々の最大の目的は、沙漠でのラクダ乗りといっても過言ではありません。そう、かつて広漠の沙地をシルクロードのキャラバンが行き交ったという、ロマン溢れる好き勝手なイメージを抱いて。まあ、映画『敦煌』の見過ぎだわな。

鳴沙山(めいさざん)の麓には、ラクダ乗りコースと、車で周遊するコースがあり、こちらはお客さん待ちのラクダたち。1カ所に集められて、なんだかだるそう。

乗客を待つラクダの群れ

ラクダの糞をできるだけ踏まないように近づき、おそるおそる背中に跨がります。潔癖症の方にとっては、かなり厳しい試練かもしれません(汗)

さあ、乗ったぞ! ラクダの背は結構高いし、揺れます。しかしそこから見はるかすと、なんともロマン満ちた風景が広がっているのです。これぞ血湧き肉躍る冒険(笑)

鳴沙山の周りに見える砂丘

人気のない、道なき道をひとりゆく……。

なんていうのは嘘嘘!!

ふと振り返れば、この隊列はみんな、観光客を乗せたラクダたちです。楊さんいわく、観光に来ているのはほとんど、中国南部から来ている金持ち連中なんだそうな。とにかくビンボーな日本人率低~い。

ラクダの頭数もハンパない……鳥取砂丘負けた⁉

おーい、そこの赤い衣をまとったお嬢さん。黄色いお帽子が風で飛ばされないかね?

筆者の前方で乗っていた人

真っ赤なワンピース着て、サンダル履いて、おしゃれなサングラス掛けて、都会の繁華街からそのまま出てきたような格好の若いお嬢さんが、平然とラクダに揺られながら、スマホで自撮り……。そのギャップがウケる!! 「てめぇ沙漠なめてんのかゴルァー!?」と嘆くなかれ。それが、今の鳴沙山の現実なのです。

とはいえ、下の写真のように遠巻きに見てみると、何やら昔の軍勢のように思えてくるから、イマジネーションって本当に大事!!

まるで古代中国の戦闘を描いた映画に出てくる1シーンのよう

ラクダさん、お疲れさまでした! 乗るときに頭キックしてごめんねごめんね~

鳴沙山のラクダはフタコブ(二瘤)だった

レジャー観光地へと化した敦煌の秘境

敦煌を訪れる日本人旅行者は、ひと昔前に流行したN■Hのドキュメンタリー番組の影響からか、たいていシルクロードの歴史が好きでやたらロマンを求めたがるという特徴が共通。一方、中国の人々、ことに中国南部の富裕層は、敦煌をアウトドアで遊ぶレジャー観光地、と捉えている意識の違いがあるそうです(楊さん談)。遊び気分で浮かれてるのは、さしずめお金を持て余したバブル期の日本人と同じか?

月牙泉のほとりにある草原

さて、月牙泉(げつがせん)へと向かいましょう。沙地に足を取られながら、一歩一歩進みます。裸足になって走る猛者も現れたり……。しかし、中国の人たちは凄いバイタリティーがありますね。我々ヘタレの日本人を、どんどん追い越していきます。加油(がんばれ)!

こんなに人が多いと、ここが沙漠の真ん中であることをつい忘れてしまう

月牙泉のほとりで

「月牙泉」と呼ばれる三日月形の湖のほとりに、文化大革命で破壊された道教の寺院(道観)が再建されたそうです。ここも近年、地球温暖化の影響で水が干上がってしまったのだとか。今年は奇跡的に水が戻った姿を見ることができました。

月牙泉はかつて沙漠のオアシスだったという

道教寺院の中にも入れます。少し覗いてみますか。

建物の中には土産物店などが入っているが、実際に道教の祭儀も行われているかどうかは不明

沙漠を背景に、日暮れを浴びて立つ楼閣の姿が美しい……。

文字通り「砂上の楼閣」だが、意味が違う!

中国風の円形の戸口の向こうに、夕陽を背にした砂丘が見える。ああ、これが敦煌だ!

今にもそっとツルピア姫が姿を現しそうな幻想的雰囲気

いざ鳴沙山の頂へ

ラクダ乗りだけで、かなり体力を使い果たした感がありますが、こうなったら最後まで制覇してやる! 頂上まで登ります。

砂の上を歩くための専用の長靴を履く人も

沙地に足を取られながら、一歩一歩。誰もギブアップしない。加油!

中国の人たちは老若男女問わずタフである

ついに山の頂上です。ピクニックかハイキングみたいな感覚で登っちゃうんでしょうね。ゼハーゼハー(滝汗)

嗚呼、鳴沙山…… 汝を如何せん…… 無人のロマンが壊れてゆく……

かつては人がほとんど立ち入ることのなかった牧歌的な月牙泉村でしたが、2010年代に始まった習近平主席の国策により、敦煌の観光地化が急ピッチで進められました。

【!警告!】秘境のロマンに憧れるバックパッカーの皆さん。今の観光地化した鳴沙山の有り様には幻滅するかもしれない。月牙泉も同じく。
でも、我々はそれなりに楽しかったぞ!

〈つづく〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?